カマキリとテントウムシで無農薬レモンを作る!?

日本農業賞・大賞に輝いた「地域特産物の作り方」とは

「初恋レモンプロジェクト」で地域振興

 主な受賞理由となったのは河合さんが作った「初恋レモンプロジェクト」だ。河合さんは自らの果樹園を舵取りしながら、リーダーとして10年以上にわたってプロジェクトを運営し、地域の食ビジネスを盛り立ててきた。さらに、このプロジェクトから少し遅れて立ち上げた農業者の集まり「豊橋百儂人」(とよはしひゃくのうじん)の活動も評価された。

 「初恋レモンプロジェクト」のメンバーは河合さんが生産する無農薬レモンを使って、洋菓子や和菓子、パン、餃子などの商品を作って販売する食品店・食品会社の経営者や、無農薬レモンを料理の食材に使うホテルの総料理長などから構成される。プロジェクトのリーダーである河合さん自身も、無農薬レモンのストレート果汁やレモネード、マーマレードなどの加工品を販売する。

 河合さんが初恋レモンプロジェクトを作るきっかけは、無農薬レモンの生産が安定してきた2006年の秋ごろのこと。河合果樹園のレモンを皮ごと使ってメロンパン風のパンを作りたい、という申し出があったところからスタートした。

「初恋レモンプロジェクト」の会議では商品の魅力や知識を徹底的に深掘りしていく。現在のメンバーは12人。(写真提供:河合浩樹さん)

 その後、地縁・人縁のつながりで、様々な人が河合さんのレモンを使った商品開発に取り組むことになる。プロジェクトの設立は2007年。たまたま酒席で出会った人からの縁をはじめ、「不思議な出会いに恵まれた」と河合さんは回想する。こうした出会いと、河合さんの無農薬レモンには高い市場価値があるという確信、そして、地域でもっと普及させたいという強い思いがつながった。この後も別のメンバーを巻き込みながら、プロジェクトは育っていく。その後も様々な魅力的な商品が生まれ、「初恋レモン」という名前は、今では地域ブランドとしてしっかりと定着するまでになった。

「初恋レモン」ブランドの商品。1リットルのストレート果汁を始め、様々な加工商品がある。(写真提供:河合浩樹さん)

次代の農業者を育成する試み

 もう一つの組織、「豊橋百儂人」の方は、「初恋レモンプロジェクト」から少し遅れて2009年に河合さんが中心となって立ち上げたもの。今年で設立10周年になる。この集まりは、参加メンバーが農業生産者として個々のレベルアップを図りながら、豊橋を中心とする東三河地域の農産物のブランド力や競争力を高めることを目指している。この地域に受け継がれてきた農業の先達たちの知恵と技術を生かし、食と農に関する文化を次世代に手渡していくという志を掲げている。

 豊橋百儂人では、定例会で様々な議論を繰り返し、切磋琢磨していく。ただ、それだけなら、普通の情報共有をしながら技術を学ぶ農業者のグループと変わらない。百儂人のユニークなところは、参加メンバーを160を超える評価・認定基準に基づいてランク付けしているところだ。

「豊橋百儂人」のホームページ(http://agri.aichi.jp/)では、参加メンバーのランキングがわかるようになっている。

 この評価は、自分の評価だけでなく、公認サポーターからの客観的な評価などからなり、ネットに掲載される。百儂人に参加する農業者の中には、こうした評価付けに耐えられずやめていく人もいた。今も参加し続ける農業者は競争の中に自らを置き、客観的な評価の中で自分の立ち位置を知る。絶えず自己革新を迫られることで、さらに次のステップに進めるという考えだ。

 農業者として自分を律しながら、栽培・生産・経営の技術を磨いていくプロ農家集団とでも言えばいいだろうか。河合さんはこの集まりの中から、高い技術力を持ち、自らの農産物や市場に対する深い理解と先を読む洞察力や情報発信力を備えた若い農業者が出てくることを期待している。