では、7名で始まったサークルが180名の大所帯になったのは、どこに魅力があるからなのか。
朝9時から夕方4時まで農家で活動したあとは、学生たちは活動の拠点となっているまちづくり協議会の施設「みなみ・ほっと・サロン」に集まり、近くの銭湯に行き、夕食をつくり、集会所に泊まって、翌日また農作業をする。毎週の活動が合宿のような楽しさは魅力の1つだ。

サークル活動への参加は自由で、個人のスケジュールに合わせ、行きたいと思ったとき、参加したいときにいつでも参加できる。また篠山での農作業にはあまり参加できなくても、大学近くや都市部での活動を中心に参加しているメンバーもいる。そのあたりの懐の深さも人気の理由だ。
「高校1年の時に、高校の先輩からこのサークルのことを聞き、神戸大学に入って『にしき恋』に入ろうと決めました」という熱望型(あかりんごさん・農学部3年生)もいれば、「地域の人と作業をして、話を聞いたり体験したりすること自体が楽しい。環境生物学専攻ですが、普段の生活では知ることができないことを学んでいます」(副代表の藤田真帆さん・農学部2年生)という人も。
「農業はしんどいもの、孤独なものだと思っていましたが、西紀で農業をやってみて孤独じゃないし、むしろ地域とつながりがないとできないものだと知りました。一番楽しいのは、農作業を通して、農家の方からいろいろな話を聞けることです。雨の日や冬の農閑期など軽作業のときはおしゃべりしながらできるから楽しいし、大変な作業のときは終わったときの達成感や一緒にやった団結力を味わえるから嬉しい」(田口さん)など、参加理由はさまざまだ。
現役大学生だけではない。サークルのOB、OGが参加することもしばしば。この日、参加していた社会人1年生の西島貴徳さんは、「4年生のときは卒論で忙しくて、来られなかったので就職してから4・5月はほぼ毎週来ていました」。

学生はほぼ全員が農業未経験で、このサークルに入ってくる。1年生の三井陸豊さんは、「農家さんは、作物ができなかったら収益がなくなるわけですから、素人にいじられたくない思いもあるかもしれませんが、西紀の農家さんはそうじゃない。学生を受入れ、上手に指導してくださるので、初心者なりに少しはお手伝いができているのかなと思えます」という。

実際、サークルの創設時から農業ボランティアを受け入れてきた北川二郎さんは、「今日は力仕事なので、男の子のほうがいいかな、と思っているときに女の子だけというときもありますが、それはなんとでもなるものです。想定以上に進むこともありますし、だんだん農家の仕事を覚えて行ってくれる大学生の姿を見るのもうれしい。夫婦 2人では今の耕作面積をやり切れません。学生さんたちが大きな戦力になってくれています」と目を細める。
妻の恵さんも「その日のメンバーを見て昼の献立を考えるのですが、お昼を出したときの学生さんたちのワーッと言う声がうれしくて。いつの間にかみんな自分の子どもみたいな気持ちです」と話してくれた。