こうした中で、篠山に移住して地域おこし協力隊としての活動をしながら、大学に通う人も現れた。
農村の町づくりに興味があって、「にしき恋」に入った岩﨑智彦さんだ。大学4年生になるタイミングで篠山に移住、地域おこし協力隊として、学生をしながら地域活動をしている。「毎週通っているうちに、農家の課題をリアルに肌で感じることができました。篠山で農業と福祉の連携についての取り組みができたらと思っています」と言う。
さらにサークル設立メンバーの中には、篠山に移住して就農した若者もいる。大坂宇津実さんだ。学生時代は⾷品業界に興味があり神戸大学農学部では微生物資源化学を専攻。実家も農業とは無縁だったが、「実践農学入門」の授業で、農家さんと話しをしたり、⼀緒に農作業をしたりする中で農業に興味を持ち。「農作業のことをもっと知りたい」と、農業ボランティアに毎週末通い、土曜日は同じ農家に、日曜日は毎回行き先を変えて、1年を通じて農作業の手順ややり方の違いなどを学んでいった。

「農作業は“脳と体のスポーツ”のように感じていました。体を思いきり動かせるし、草刈り機をどう使えばもっと効率よくできるだろうとか、この作業はどういう意味があるのだろうと考え、改善しながらの作業も楽しい。その上、成果物があって⼈と交われる。動いたあとに農家さんと食べるごはんが最高においしかった」
農業という仕事に興味を持った大坂さんは、他の農業も見てみたいと行動に移す。大学3年時の夏休みにドイツ・シュトゥットガルトのワイナリーに住み込みで働いた。家族経営だが、ブドウ栽培から収穫、自社工場でのワインの醸造、加工品も作って販売する。レストランを経営しウエディングパーティなどワインを楽しむシーンの創出も行っていた。
「栽培だけでなく、さまざまな分野とつながり新たな価値を生み出していける農業」に可能性を感じ、学んできたことを自分なりにアレンジして農業経営したいという思いを募らせ、ついに大学院在学中の2016年に、中退して篠山で本格的に農業をやっていくことを決意。篠山で畑を借り受け、面積6反で就農の第一歩を踏み出した。
初年度は早朝の新聞配達のアルバイトで生活費を補いながら、日中は農作業に取り組む日々だった。何がこの土地に合うのか、どんなものが作れるか、売れるかを⾃分で確認し品目選びをしようという考えのもとで地元の農家さんに相談したり、どんな野菜が飲食店やマーケットで求められているのかを自分で調べたりしながら、約30品目に挑戦。2年目からは屋号も変え、SNSで情報発信をしながら販売にも着手した。
就農から3年。「学卒での新規就農は特に資金がないので、機械投資できなかったり生活するのがやっとだったり、その結果ただただ農作業に追われてしまいがち。自分もそうでした。経営の視点がおろそかになり、ただこなすだけの悪循環な時期もありましたが、サークル時代からお世話になっている北山さんを始め、さまざまな篠山の農業法人の諸先輩方から経営的なアドバイスを頂き、自分に今足りないものを補うように努めてきた。まだまだ未熟ですが、⼀緒に働くマネージャーと経営計画を⽴てていく中で、⾃分たちなりのビジョンを持ち、合理的な行動がとれるようになってきました」
農作業をする姿や農作物が実績として見えるようになるにつれ、休耕地や耕作放棄地についての声かけもしてもらえるようになったことも大きい。現在は2.6haを耕作している。

体験やサークルなどで農業の魅力に触れる人が増えているなか、大坂さんは、「農業に限らず、食や農の分野で新たなことに挑戦したい人たちがアクションを起こせる場を作っていきたいと考えています。自分が苦しかった時に北山さんやたぶち農場さんにしてもらったように、次の人たちのサポートをできたらなと。。篠山に住んだり相談できたりするコミュニティをつくるなど、篠山が若い人を惹き付ける地域にしていきたいですね。そのためにもSNSなどでもどんどん発信していきます」と語ってくれた。