獣害対策で新たな担い手ネットワークを構築

くまもと☆農家ハンター イノ・コミで「地域と畑は自分たちで守る!」

 「システムや機器はメーカーに要望を出して、1つ1つ改良していきました。現場だからこそ出せる意見もあります。例えば、箱わなにつける発信機をメーカーに依頼したら、最初に提案してくれたのはソーラー発電がついている発信機でした。初めは気づかなかったのですが、ソーラーで充電できるような日当たりのいいところに箱わなを置いてもイノシシは来ないのです。そんな失敗を繰り返しながら、改良していきました」

イノシシが箱わなに入ると、位置や写真をスマートフォンなどに通知するIoT発信機。電波状況の悪い山間地で、外部電源なして通知が可能なシンプルで低コストな発信器の開発中だ(写真:竹内さくら)
イノシシが箱わなに入ると、位置や写真をスマートフォンなどに通知するIoT発信機。電波状況の悪い山間地で、外部電源なして通知が可能なシンプルで低コストな発信器の開発中だ(写真:竹内さくら)
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捕獲情報はスマートフォンに通知され、いつ、どこのワナに何頭のイノシシが入ったかが分かる(提供:くまもと☆農家ハンター)
捕獲情報はスマートフォンに通知され、いつ、どこのワナに何頭のイノシシが入ったかが分かる(提供:くまもと☆農家ハンター)
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捕獲したイノシシは3歳のメス。4頭の子を産んでいたようだ。証拠に写真を撮影、軽トラックで処理場のジビエファーム(後述)に運ぶ(写真:竹内さくら)
捕獲したイノシシは3歳のメス。4頭の子を産んでいたようだ。証拠に写真を撮影、軽トラックで処理場のジビエファーム(後述)に運ぶ(写真:竹内さくら)
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 こうした箱わなやシステム開発などの費用は、メンバーが育てた農産物セットを返礼品にクラウドファンディングで集めたものだ。公式ホームページやSNSなどで生の情報を発信、ファンや理解者、同じ地域課題を抱える多くの人とつながりを広げていった。

 そして、イノシシの捕獲数も爆増。昨年度は、車で20分圏内の三角地区の箱わなは220基以上、捕獲頭数は年間900頭まで増えた。

イノ・コミで横のつながりと若手のモチベーションを生みたい

 くまもと☆農家ハンターは、会費なしの有志の仲間で、活動は4つのステージがある。

 第1ステージがイノシシの生態や対策を基本から勉強すること。そして、勉強したことを地域に広める。第2ステージは、藪の刈り払いや草刈りをしてイノシシが寄ってきにくい環境をつくる。第3ステージが、畑や田を侵入防止策で囲って防御する。さらに第4ステージが捕獲だ。

 「第1ステージまでの人も仲間ですし、第4ステージまで関わる人も仲間。離農で耕作放棄されている畑の農作物残滓を片付けるのもボランティアでやっています。メンバーは20~40代の若手農家です。実は鳥獣対策を通じてやりたいのは地域の担い手づくりなんです」。

 若手農家に限っているのは、若手農家こそ地元で働いているものの、地域でのつながりや役割を作りにくいからだ。家族経営の農業では、栽培に関して若手はベテランの経験値にはかなわない。親の指示で働き、若手にはあまり裁量権がない。給与という概念もなく、必要に応じて「小遣い」をもらうという農家も少なくない。

 しかし、親世代ができなかった鳥獣被害の対策を若手が学び、地域に貢献することによって、地域社会や周囲の見る目が変わってくる。頼りにされることで、成功体験を積み、自分たちの自信にもなる。

 さらに、行政からの捕獲報奨金を彼らが得られるようにすることで、所得の向上にもなる。それは新しい農業をチャレンジするときの軍資金にもなるはずだ。「そういう仕組みを作ることで、彼ら彼女らが新しいやりがいを感じて、地域の中で子育てをして、地域が元気になっていくなら、すごく価値があると思う」

 もう1つのプラス材料は共通言語が生まれることだ。

 同じ地域にある農家といっても、生産する品目や事業規模が違うと、なかなか共通の話題が生まれにくいものだ。新たな関係を作りにくいが、イノシシについてなら規模の大小や世代に関係なく、畜産農家も果樹農家も野菜農家も、一緒に盛り上がれる。イノシシが若手農家のコミュニケーションの活性化の起爆剤になっているのだ。

 宮川さんたちは、これを名付けてイノ・コミと呼んでいる。

 「すでに50人、100人規模のミーティングをこれまでに10回ぐらいほどやっていますが、それができるのはイノシシというキーワードがあるから。実はそれがこの活動の一番大きな価値だと思っています」

 会員数は増え現在では130人、イノ・コミの力で行政やJA、大学、企業と連携し、活動も広がっていった。しかし、三角町内でのイノシシの捕獲数が、年間1,000頭規模になったときに、サステナブル(持続可能)でない状態になっていた。