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アフリカの穀物生産が、世界の未来のカギを握る! 窪田 博之 JICA 農村開発部 審議役 に聞く

池上

今回、モザンビークとケニアで、アフリカの農業革命の現場を取材してきました。モザンビークでは、日本とブラジルが共同で指導を行い、トウモロコシと大豆の大穀倉地帯をつくろうという「プロサバンナ事業」を、ケニアではケニア山麓の高原にある水田地帯で、雨期には水稲(インディカ米)を、乾期には陸稲(ネリカ米)を栽培するための技術指導を日本の専門家が行っている現場を見てきました。いずれも主食となる穀類を国内で生産しようという取り組みです。

モザンビーク北部では大豆とゴマの混合栽培が!
窪田

ネリカ米は、天水条件のもとで比較的容易に扱える品種としてアフリカ域内で開発され、その後日本が力を入れて種子の供給体制やその普及を支援してきました。特に、まだ稲作の歴史が浅い地域や、灌漑施設のない地域で稲作を推進するにはよい品種、それがネリカ米です。

池上

2009年には、ウガンダでネリカ米の普及や、その栽培法の開発に尽力している専門家、坪井達史さんの農業試験専門場を取材しました。あのとき取材したネリカ米が、国境を超えてケニアでも植えられる、という話を聞いて、我がことのようにうれしくなりましたね。

窪田

ネリカ米については、ウガンダと近隣諸国における普及の作業と並行して、稲作開発の有力なツールとして育てるため、西アフリカ各国の農業試験場での栽培能力を強化したり、品種として安定して供給できるような地道な協力を続けてきています。日本の農業指導のひとつの典型といえるかと思います。

池上

ケニアでもモザンビークでもウガンダでも、アフリカ各国が主食となる穀物の大量生産を進めようという動きが活発です。一方、多くの日本人にとって、アフリカ=干ばつ、アフリカ=飢饉、というイメージが強く刷り込まれていて、アフリカで大規模農業、と言われても、ピンとこない人が少なくないと思います。

窪田

たしかに、アフリカは今でも地域によっては干ばつが何年かに一度起きる状況が続いています。

池上

そもそも、アフリカは歴史上見ても大規模農業が発展しなかった地域がほとんどです。そこに今さら大規模農業を展開するのは現実的に見て、可能なのでしょうか?

アフリカの農業は植民地時代に持ち込まれた

窪田

たしかに、アフリカの大半の地域では、大規模農業が発達していませんでした。ターニングポイントはヨーロッパのアフリカ支配です。19世紀から20世紀にかけてヨーロッパの支配下に置かれた植民地時代に、宗主国たるヨーロッパ各国から農業技術が移転されました。プランテーションをつくり、その後、カカオやコーヒー、紅茶、パームヤシなど、商業作物の栽培が普及しました。しかし、食用作物については同様の投資は最近までほとんど行われていません。

池上

近代農業の移植はヨーロッパの植民地政策の一環だったんですね。

窪田

ところが、この状況が一変します。1960年代から70年代にかけてのアフリカ諸国の独立です。多くの国が社会主義体制をとり、農業分野のさまざまな活動が国営・公営で行われるようになり、旧宗主国からのアフリカへの農業技術移転は滞りました。アフリカ自身による農業分野への投資も低迷しました。

かくして、アフリカ諸国は、植民地時代の農業技術や、育った人的資源をいわば食いつぶすようなかたちでしのいできたのです。もちろんアフリカ諸国の独立は喜ぶべきことですが、植民地時代にかちとった農業技術の伝搬を止めてしまったのは、アフリカにとっても幸福な結果をもたらしませんでした。

池上

アフリカが近代農業と出会ったのは19世紀の植民地時代で、第二次世界大戦後に次々とヨーッロッパから独立したものの、農業の発展はそこで止まってしまった、ということですね。

窪田

特に、人材の養成という面ではそうなんです。たとえば、当時のアフリカ諸国の大学の農学部の水準は高かったといわれていますが、資金難により人材の育成が滞っしまいました。国営・公営による農業部門の管理がうまく行かず、80年代に始まった構造調整では、農業も狙い撃ちされ、代案もないまま農民へのサービス部門が打ち切られました。かくして現在に至るまで、アフリカの農業の停滞は数十年間にも及んできたのです。

池上

いま、アフリカの耕地面積はどのくらいですか?

窪田

国際機関の資料によれば、2011年で、作物を作付けしている耕地は、約2億5800万ヘクタール、258万㎢程度とされます。アフリカの総面積が3030万㎢ですから8%程度が耕地、という計算になりますね。

池上

日本の国土面積が38万㎢ですから、ざっと日本の7倍の面積が農地、というわけですね。

大規模農業に乗り出したモザンビーク北部
窪田

過去30年を振り返ると、アフリカの耕地面積は32%程度増え続けています。世界平均が同期間で7%程度の増加ですから、アフリカの耕地面積は他の地域より急速に増えているわけです。当然穀類の収穫量も増えています。

池上

耕地面積が非常に増えているわけですね。あ、でもそうすると変ですね。過去30年といえば、ちょうどアフリカ諸国が独立してから現在までの時期と重なります。窪田さんのお話だと、この間、アフリカの農業は停滞していた、という説明でしたが。矛盾しませんか?

窪田

残念ながら、矛盾しないのです。耕地面積はたしかに大幅に増えました。ところが、単位面積当たりの収量が伸びていないのです。つまり、農業そのものが近代化していない。効率化していないんです。

栽培面積拡大による成長は不安定
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