




ここでアジアとアフリカの農業を比較してみましょう。アジアの農業は、耕地面積を増やすよりもむしろ、品種改良や栽培方法の改善で、単位面積あたりの収量を増やし、トータルの生産量を増やす、という科学的なアプローチをとって、成長しました。
ところが、アフリカでは、結果的にただひたすら耕地面積を増やすことで物理的に生産量を増やしてきました。
農地の開墾だけを続けてきたのですね。ちなみに、アフリカでは土地は誰のものでしょうか。
多くのアフリカ諸国では、国または地方自治体が保有しています。企業や個人は、その土地の使用権を持つことができます。地方によっては、その集落のリーダーが「お前はここを使っていい」なとど差配する伝統的な制度も根強く残っています。
土地の使用権は個人に渡されるが所有権は国家、というのは中国と同じ仕組みですね。その制度の下で農地を拡大してきたわけですか。
アフリカ諸国も、単位面積当たりの収量を増やそうという努力は払ってきました。ですが、人材育成がうまくいかなかったり、新しい技術が入ってこなかったり、ビジネスとして農業が成り立たなかったせいもあったのでしょう、結果として農民が作付面積を広げることでしか生産が伸びませんでした。
品種改良や栽培方法の改善という手法が伴わないと、単位面積あたりの生産性はほとんど向上しません。成長率も不安定になります。たとえば、米の生産を見てみましょう。アフリカの米はつい最近まで過去40年間で生産性がたった1.4倍、平均して1年で1%しか向上していないのです。
今のお話を聞いて、合点が行きました。今回取材したモザンビークのとある農村で大豆とキャッサバ、ゴマなどを育てている農地を見学したのですが、いまだにトラクターが1台もないので、土地の開墾が全部手作業でした。そのため、実質的には荒地にタネをまいているような状況でした。
アフリカの農業の典型ですね。機械化が本当に遅れています。
さらに農家の人に話を聞くと、いま使っている畑も2、3年ほどで使えなくなってしまうため、放棄して次の土地を開墾しなければならないそうです。化学肥料を買うお金がないので、2、3回作物を植えるともう土地の栄養分を全部使い切ってしまい、何も育たない畑になってしまうとか。
こちらもアフリカの農業の悪しき典型です。もちろん、農地を使い捨てにしていくだけでなく、ある程度計画的に土地を休ませながら耕作しているところもあります。が、アフリカでは、人口が増え続けています。そうなると、今度は、土地に余裕がなくなります。結局、単位面積当たりの生産性を伸ばさない限り、アフリカの増え続ける食料重要を満たすことはできないのです。
一見、農業の態をなしていますが、農地そのものを「狩猟採集」しているようなやり方で、ひとつの畑を「育てる」という発想も、資金も、技術もないのか、ということを思い知りました。
池上さんがご覧になったモザンビークの農業の実態は、アフリカの農業のたちおくれの象徴といえます。
生産性が低い、というのもこの眼で見ると実感できますね。