イノベーターズ・ブレイン
研究開発の現場では、技術はあるものの技術を活用した新規事業の実現まで至らないという課題が根強い。イノベーターズ・ブレインの伊藤氏は技術と市場ニーズをつなぐAI活用の具体像を明らかにする。さらに研究開発を事業創出へと引き上げた実践事例として、阪本薬品工業の取り組みが紹介された。
イノベーターズ・ブレイン
代表取締役社長
伊藤 慎司氏
研究開発部門では、自社保有技術を新たな市場に展開すべきか見極めきれない、技術の延長線上にとどまった検討に陥るといった課題が多い。市場ニーズが多様化し、移り変わりが速いスピードで激変する中、企業だけが持つ経験や勘に依存した進め方では事業機会を捉えきれなくなっている。
伊藤氏は、この“構造的な壁”の要因として「情報の分断」を挙げる。研究・特許・論文といった技術情報に加え、市場ニーズや動向といった情報は別々に管理されており、「情報の点」が結びつかずに孤立しているケースが多い。「結果として技術と市場が結びつかず、事業構想の解像度が上がらない状況に陥ってしまいます」(伊藤氏)
これらの課題に対し、同社ではシーズ、ニーズ、ウォンツといった情報を横断的に整理し、結びつけ、技術と市場を同時に捉える対話型推論AIを用いたサービスである「Liquid Brain」を提供する。単なるデータの集約ではなく、事業視点で意味付けを行いながら活用する点に特徴がある。
阪本薬品工業
研究所 所長
栗山 重平氏
Liquid Brainの具体的活用例として紹介されたのが、グリセリンを中核とする専業化学メーカーの阪本薬品工業だ。同社の栗山氏が実践事例をひもといた。
知財戦略では、独自の技術軸で特許を整理。自社視点で競合動向を分析し、どの領域で差別化できているのかを明確にする。これにより「一面的な比較ではなく、自社の強みを起点とした戦略検討が可能になりました」と栗山氏は話す。また新規研究テーマの創出では、市場動向と内部の自社技術を掛け合わせ、自社の技術視点に立った研究テーマの創出が可能となる。バイオ医薬や脱炭素といった新たな成長領域を具体化した検討が進められている。
さらに、研究ナレッジの活用も進む。過去の実験データやベテランの知見をナレッジとしてデータ化。AIとの対話の中から合成プロセスの最適解を導き出すことで、検討の質とスピードを向上させた。「個人の暗黙知が共有されるため、若手研究者でも高度な研究に関与できる環境が整いつつあります」と栗山氏は手応えを感じている。
こうした取り組みは、研究開発を技術追究から事業創出へと引き上げる試みといえる。技術と市場を横断して捉え、組織として意思を持って進める。そのための基盤整備こそが、これからの競争力を左右する。
データドリブン型で研究を深掘りするLiquid Brain
シーズ、ニーズ、ウォンツ情報を蓄積し、技術の現場と市場を結びつけるのが特徴。技術者や研究者がマーケティング視点を持ちながら取り組めるようになる
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