農作業でストレス軽減 アグリヒーリングが新ビジネスを創出

体験農園を福利厚生などに活用する動きも

 ストレスの減少については、ストレスを受けたときに脳内から分泌されるコルチゾールやクロモグラニンを計測した。ともに農作業の後、低下が見られたが、とくに顕著だったのは長期的なストレスを受けたときに分泌されるコルチゾールだ。「農作業はストレスをしっかり下げ、その下がった状態がある程度維持されると言えます」(千葉氏)

 農作業ならではの特徴として挙げられるのは、「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンの変動だという。 たとえば、ヒーリングミュージックを聞いた場合でも、一般的にはコルチゾール値が低下して、ストレスは下がる。しかしながら、オキシトシン値も下がるため、ボーとした状態になるものの、充実感や満足感は得られない。

農作業によって「幸せホルモン」が分泌される(写真:順天堂大学)
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 一方、うれしいことがあると、オキシトシン値は上がるが、これに伴ってコルチゾール値も上がってしまう。つまり、幸福なときは気持ちが高ぶっているため、ストレスも高くなるというわけだ。

「ところが適度な農作業で土や植物に触れると、コルチゾール値が減少すると同時に、幸せホルモン・オキシトシンが分泌される。幸せに包まれながら心穏やか。こんな傾向を示すのは、私たちが調べた中では農作業だけです。おそらく農作業の後は、恋人と手をつないでいるときと同じような状態なのではないでしょうか」(千葉氏)

「農業」ではなく「農作業」に着目

 順天堂大学が企業やJAなどと協働で実施してきたこれらの実験は、各地の体験型農園や市民農園などを会場に行われた。  集まった参加者たちは、草取りや水やり、収穫などの軽農作業を1時間程度体験し、その前後で唾液を採取する。つまり、この実証実験は「農業」そのものにスポットを当てたものではなく、「農作業」―短時間土に触れる体験―に着目したものなのだ。

「市民農園を長期で借りて、日常的に農作業を行っている人は、そもそも初期のストレス値が低いので、1時間の体験で一気にストレスが下がることはありません。一方、初心者や月1、2回程度の利用者の場合は、作業の前後でストレス値が一気に下がります。このように短期的な効果が狙えるということは、たとえば企業が福利厚生の一環として農園と契約するといった利用のされ方が広がる可能性があります」(千葉氏)