農作業でストレス軽減 アグリヒーリングが新ビジネスを創出

体験農園を福利厚生などに活用する動きも

NTTコムの参画で 実証実験は新たな段階へ

 そして、2018年、NTTコムが参画したことで、この実証実験は新たな段階へと入った。 すでにこれまでの実証実験を通して、園芸療法によるストレス軽減効果は実証され、可視化されていたものの、実は大きな問題が残っていたのだ。それは唾液を採取するという実験方法そのものの問題だった。

「まず、唾液採取キットが非常に高価であったこと。次に、そのキットを使ってストレスを測定できるのは医療従事者だけという制約があったこと。さらに、ある程度の量の唾液を採取しなくてはならず、人によってはそれに抵抗を感じる場合もあったこと。そして、唾液の出にくい高齢者から十分な量の唾液を採取することが難しい場合も多かったこと。医科学的な効果を証明することはできましたが、このままでは学校や会社などで活用されにくいと考えられました」(千葉氏)

 一方、NTTコムは、同社の専門領域であるICTを通して農業分野でなにか社会貢献ができないかとかねてから模索していたという。 「昨今のようなストレス社会において、ストレスを自分でコントロールする手法や軽減する環境の創出は大切な課題です。当社の、着るだけで心拍変動や心電位などの生体情報を継続的にモニタリングできるウェアラブル生体センサー「hitoe(R) 以下hitoe」を、なんとかそのために生かせないかと探る中で千葉先生に出会いました」と、NTTコミュニケーションズ ソリューションサービス部の赤堀英明担当部長は説明する。

NTTcomウェアラブル生体センサー「hitoe」(写真:順天堂大学)
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 この出会いが、順天堂大学とNTTコムを結びつけた。そして、唾液でストレスを図るのではなく、hitoeとデータ流通プラットフォームを活用して、アグリヒーリングのストレス軽減効果を可視化するシステムの開発へとつながったのである。

唾液のデータとhitoeの計測データを紐付ける

 2018年11月から19年3月にかけて、東京都国立市の農園などで、hitoeを使った実証実験が行われた。

 唾液採取によるこれまでの実験で、すでに農作業がストレスを下げるところまでは実証済みである。今回の実験は、唾液採取によって得られたストレス値のデータとhitoeで計測した心拍数等のデータを紐付けることが目的だ。

「最終的には、このストレス計測技術を、企業や学校などで役立つサービスとして実用化することが目標。そのためには、唾液を採取することなく、簡単にhitoeでストレスを計測できるようにしなくてはなりません」(千葉氏)

 農園に集まった実験参加者たちは、まずhitoeを貼り付けた肌着を着用。次に唾液を採取して、作業前のストレス状況のチェックを受けた。

「hitoe」を取り付けた肌着を身につけて農作業を体験(写真:順天堂大学)
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 その後は、hitoeを付けたまま草取りやくわ入れなどの農作業へ。所要時間は1時間程度で、この間、参加者はhitoeを貼り付けた肌着を着たままである。hitoeはその間の生体情報を継続的にモニタリングすることができ、測ったデータは小型のトランスミッターを通してスマホに飛ばし、グラフなどの見やすい形に加工されるという。