グリーンツーリズムが日本の観光を変える

大田原ツーリズム・藤井大介社長に聞く

 飯塚邸も観光客の方々に地域内の飲食店や物販店などを巡ってもらうという考え方で、ホテルは食事を提供せず、朝食は近くの飲食店にケータリングをお願いすることにしています。ディナーも近くのレストランに、ホテル客のための特別メニューを用意していただきます。もちろんお客様が地元の食材を買ってきて自室で作っていただくのでもオーケーです。

ホテル『飯塚邸』本館の内観。古民家のしつらいを生かしつつ快適な居住性を配慮したつくり。長期滞在客を想定し、キッチンや洗濯機も備えている(写真:山下裕之)
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ホテル『飯塚邸』本館の内観。古民家のしつらいを生かしつつ快適な居住性を配慮したつくり。長期滞在客を想定し、キッチンや洗濯機も備えている(写真:山下裕之)
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ホテル『飯塚邸』本館の内観。古民家のしつらいを生かしつつ快適な居住性を配慮したつくり。長期滞在客を想定し、キッチンや洗濯機も備えている(写真:山下裕之)

『農村で「リッツ」を超える』を合言葉に

飯塚邸は最寄駅から25㎞離れた場所にありますが、送迎バスは用意していないそうですね

藤井:車で来ていただくことを想定しています。外国人観光客も空港などでレンタカーを借りてもらうことになります。もともとヨーロッパの人たちは、バカンスに行った先でゆっくり過ごすために車が必要になることから、1000kmも車に乗って移動すると言われていますが、その感覚ですね。車で来ていただき、ここを拠点にいろいろな場所に観光に行っていただくという旅のスタイルです。

 飯塚邸の近くには「日本で最も美しい村」連合に加盟している小砂地区の棚田や、芭蕉が訪れたことで名高い雲厳寺もあります。1時間も走れば日光にも行けますし、那須にも近い。車で移動することを考えれば、観光資源が実に豊富なエリアです。

飯塚邸近くの小砂地区の田園風景。「日本で一番美しい村」に認定されている(写真:大田原ツーリズム)
飯塚邸近くの小砂地区の田園風景。「日本で一番美しい村」に認定されている(写真:大田原ツーリズム)
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これまでの日本の観光のスタイルとは大きく違っていますね

藤井:こうした新しい形のグリーンツーリズムは、これまでの観光の常識を大きく変えることになるのは間違いありません。これまでの観光は鉄道などの公共交通機関を利用して観光地を巡るルート型でしたが、これからは1つの場所に長期間滞在し、そこを拠点に各地を巡るエリア型に移っていくでしょう。都市部で長期滞在して、地方は日帰りというインバウンドの人たちの過ごし方も、田舎で長期滞在するスタイルに変わっていくことになります。

藤井さんはこの事業を通じて何を実現しようとしているのでしょうか

藤井:農村観光は本来、個人旅行が主流になるべきものです。ですから私たちがその市場を新たに作っていきたいと思っていますが、まずはこのホテルを核に、江戸時代は交通の要衝として栄えた馬頭(ばとう)の商店街にかつての活気を取り戻し、シャッターを失くしていきたいです。

 今私たちが掲げているのが『農村で「リッツ」を超える』という目標です。リッツとはもちろんリッツカールトンです。あの豪華でサービスの行き届いたリッツに泊まるより、豊かな自然に囲まれた静かな農村で、絵や陶芸など趣味に没頭したり、その土地にしかない旬の料理を味わったり、地元の人たちと心の交流をすることによってより楽しく、満足度の高い旅ができたと満足してもらえるようになることを確信しています。

 私は地元の農家の方々にも、自ら古民家ホテルを手掛けてもらいたいと思っています。そういう動きがあちこちで出てくれば、エリア滞在型の農村観光が本格的なものになります。『飯塚邸』がその第一歩であり、この地区のエリア滞在型の農家ホテルのモデルになればと思っています。

 そうして地元の人たちが力を合わせて故郷の田園地帯を、世界から人を呼べる観光地にしていくことができれば、地方創生の新たなモデルになると思っています。