




ケニアの首都ナイロビから北西に100キロ。片道1車線のまっすぐな道路を延々走り続け、山道をぐんぐんのぼっていくと、突然、左手が延々とつらなる崖が。
落差100mはある崖の下には広大な風景が広がっています。
サバンナ。点在するジャングル。カモシカの群れ。遥か向こうには緑なす台地。大地溝帯(グレート・リフト・バレー)です。人類はこの大地溝帯のどこかで進化し、誕生したとも言われています。1000万年ほど前に、ここで地球上のプレートが二つに分かれ始め、遠い未来にここでアフリカはふたつの大陸に二分されるはずです。
大地が割けている、ということは、大地溝帯は地球内部に近い場所でもあります。つまり火山が居並ぶ場所であり、あちこちで地熱が吹き出す場所。つまり地熱発電にはうってつけなのでした。
さらに車を走らせます。緩やかな山道。シマウマの群れが歩いています。イノシシの親子。キリンが樹上の葉を食べています。まさにアフリカの大自然。ここは、ヘルズ・ゲート国立公園。と、林の間を銀色のパイプがはりめぐらされています。地熱で温められた蒸気を発電機に運ぶパイプ。そう、オルカリア地熱発電所は、国立公園の中にあるのでした。
オルカリア地熱発電所を運営するのは、ケニア電力公社(KenGen)です。
KenGenのオルカリア地熱開発責任者ムチェミさんに、お話をうかがいましょう。

オルカリア地熱発電所の概要を教えてください。

オルカリア地熱発電所は、ヘルズ・ゲート国立公園の中にあり、全部で4つの発電所が開発されています。1981年から稼動している「オルカリアⅠ」。2000年から稼動している「オルカリアⅡ」。2003年から稼動している「オルカリアⅢ」。そして現在開発中で2014年に稼動予定の「オルカリアⅣ」です。さらにそれぞれの発電所には、数機の発電設備が配置されています。
現在、どのくらいの発電力があるのですか?
オルカリアⅠが45メガワット、オルカリアⅡが105メガワット、オルカリアⅢが50メガワット。以上200メガワットが現在の発電総量です。こちらに2014年中に稼動予定のオルカリアⅣの140メガワット、そして今回取材いただく日本の国際協力で新たに建設中のオルカリアⅠ内の4号機5号機が140メガワット。つまり280メガワットが新たに増強されます。2013年中には、総計480メガワットの発電が可能になる予定です。

ケニアの発電総量からするとどのくらいの比率を占めているのですか?
ケニア全体の発電総量は約1500メガワット程度です。そのうち水力が60%、火力が18%で、地熱は13.5%です。2014年中に25%が地熱発電になるはずです。
オルカリアの地熱発電の歴史を教えてください。
歴史は古いのです。ケニアがイギリスから独立する以前の1956年に地質調査が行われ、オルカリアの地熱の存在が確認されていました。ケニアの独立後、国連の力を借りて70年代に本格的な調査を行い、世界銀行と欧州開発銀行の援助で1981年に第一号の発電所ができました。それが「オルカリアⅠ」です。その後、開発のネックとなっていた資金を世銀や欧州開発銀行らが提供、地熱開発の機運が一気に進んだのは、2010年。日本からはJICAが参加し、オルカリアIの4・5号機建設と開発を進められることとなった、というわけです。
ケニア政府の目標は?
ケニア政府は2030年までに途上国から中開発国へと発展しようと「Vision2030」という目標を掲げています。地熱発電のさらなる開発はその中でも目玉プロジェクトです。オルカリアのみならず、大地溝帯沿いには20カ所以上の有力な地熱発電候補地があります。これらの開発を行っていき、地熱発電だけで5000メガワット規模に育てていこうというのが目標です。
5000メガワット!2014年末までに地熱発電の総量が480メガワットですから今より10倍以上の規模に育てようというわけですね。そもそも現在のケニアの発電総量が1900メガワットですから、地熱発電だけで現在のケニアの発電総量を2.6倍も上回る規模になりますね。
ケニアの電力普及率はまだ20%台です。発電所はいくらあっても十分ということはありません。全ての家庭に電力が行き渡ること。ケニアの近代化に発電所の増強は絶対に欠かせないのです。地熱だけでなく、水力や火力も含めた発電総量を9000メガワットにする。2030年までに私たちが達成すべき目標です。
ケニアの地熱発電の開発において、日本の国際協力の位置づけについて教えてください
国際協力というかたちで、JICAが参加したのは1999年から。JICA単体による大型の国際協力がスタートしたのは、2010年に締結したオルカリアⅠの4号機5号機の開発からです。こちらには、295.1億円の円借款をつけていただき、2012年には起工式が行われ、2014年中の完成を目指して、現在建設中です。
日本企業は地熱発電開発にどう関与しているのでしょうか?

日本企業抜きに、地熱発電は語れません。1980年代にスタートしたオルカリアⅠ、そしてオルカリアⅡの地熱発電開発ですが、ここで使われている発電タービンに日本の三菱重工製の機械が使われています。実は、世界の地熱発電施設は、日本製が独壇場で、三菱重工、東芝、富士電機の3社で世界シェアの7割を占めているのです。今回のオルカリアⅠの4号機5号機の開発、そして新しい発電所になるオルカリアⅣについては、東芝製機器を使用する豊田通商と韓国現代建設チームが落札しました。
地熱発電の開発で難しいことはありますか?
採掘コストですね。新しい地熱発電の井戸を掘るのには日本円にして3億円から5億円ほどかかります。また、ケニアは人件費が高いため、建造コストに上乗せされる人件費もバカになりません。そのためにも、まだまだ国際協力等の海外からの資金や技術支援を仰いで、より多くの地熱発電プロジェクトを進めていただきたい、と思っています。
今後、オルカリアのみならず、ケニア各地で地熱発電は加速します。圧倒的な技術力を有する日本企業の皆さんには、さらに開発への参加をお願いしたいですね。