




アイスランドの地熱発電を取材したことがあります。
火山島アイスランドでは地熱発電で全発電の9割をまかない、地熱で温められた温水が島中に張り巡らされ、島の人々は二酸化炭素を全く排出しない「地球に優しい」エネルギーのおかげで、電力にもお湯にも不自由しない生活を営んでいました。
地熱はある意味で究極のエネルギーである、と思ったものです。
オルカリアを訪れて、その地熱発電の規模にびっくりすると同時に、アイスランドのことを連想しました。
ケニアは、石油や石炭、天然ガスなどエネルギー資源が豊富なアフリカにおいて、エネルギー小国でした。比較的経済発展が進んでいるのにもかかわらず、電力普及率が20%台にとどまっているのも、エネルギー資源を輸入に頼らざるを得ない国情があったからです。
地熱発電は、そんなケニアの電力事情を大幅に改善する力を有しています。安定的で、潜在能力を秘めていて、かつ二酸化炭素を排出しない、環境に優しいエネルギー。ケニアの経済発展、社会発展は、今後の地熱発電の開発と活用とが大きなカギを握っているわけですね。
ケニアでは、オルカリア以外にも地熱による発電がスタートしています。オルカリア近くの湖の湖畔にあるフラワーファーム。そのひとつであるオセリアンでは、地熱を利用して、電力を供給し、温水パイプで温度管理を行うことで、品質の高い花の大量生産に成功しています。ケニアでは花の栽培が盛んで、切り花の輸出量は世界一。そんなケニアにとって、地熱利用で花き栽培の能力が高まるのは願ってもないことです。
さらに、ケニアの地熱発電の開発は、一国にとどまりません。
JICAケニア事務所の話によると、ケニアは既に、地熱開発技術を共有するために隣国からの研修員を受け入れています。また、エチオピア、タンザニア、ウガンダ、そしてケニアの4カ国でお互いに必要な電力を融通し合う、東アフリカ電力パワープール構想が、さらに控えています。国をまたいだ送電線網を配備し、複数国で一気に電力普及率を上げて、ともに経済発展を目指そうというものです。
ケニアのオルカリアで発電された電気の多くは首都ナイロビへと送電されていますが、発電プラントが増設されて、ナイロビの電力を十分賄えるようになったら、隣国にケニアの電力を送る計画があります。オルカリアから、西のレソス、そしてウガンダのトロロまで。その国際送電線の一部を、JICAを通じた日本の円借款による国際協力が支援します。
冒頭にお話ししたアイスランドとの技術協力も始まっています。アイスランドはケニアを技術輸出先の有力候補と見なしており、ケニアの技術者の受け入れを積極的に行っています。
となると日本も負けてはいられませんね。
日本からは、JICAが間に入って、ケニアの地熱開発公社(GDC:Geothermal Development Company)と日本の地熱開発技術を繋げ、他の国の技術協力によく見られる座学ではない、きめ細やかな実地技術指導を進めようとしています。
オルカリアとは、ケニアの地元の言葉で「赤い土」という意味です。かつてマサイ族が化粧に使っていたそうです。ケニアの赤い土の隙間から吹き出す地熱が、キリンが闊歩する大自然の中で、電力を生み、そして明日のケニアの成長の糧となる――――。5年後、10年後、そして2030年のケニアをぜひ再び訪れてみたいものです。
