石井 昌彦
博報堂DYメディアパートナーズ 執行役員 新聞・雑誌総括担当
「日経BP広告賞」から進化して4年目の「日経BP Marketing Awards」の審査に初参加。広告人としてのキャリアをクリエーティブからスタートさせた身としては、刺激的な体験であった。「広告賞」から「Marketing Awards」へのアップデートは、広告が「表現のクリエーティビティ」だけではなく、「仕組みのクリエーティビティ」を必要とするようになった結果であろう。テクノロジーの革新によるマーケティングの精緻化は現在進行形であり、仕組みとしての挑戦と、表現としての定着は互いに影響を与えながら常に動き続けている。その評価基準も審査委員それぞれのマーケティング観とクリエーティブ観によって多様であり、揺れているのだと思った。特に今年はクリエーティブとストラテジックの2部門になったことにより、そのボーダー領域がことさら顕在化した気がする。表現の裏にある戦略性、戦略を実現する手段としての表現、どちらの観点で見るのかで同じ仕事なのに両部門それぞれで点を集めているものが目立った。ある審査委員の「ストラテジーのないクリエーティブなんてある訳がない!」という発言が心に残る。そういう意味でパナソニック「Creative ! 」キャンペーンは、どちらの部門でも圧倒的存在感を示していて、まさにグランプリ。個人的にはストラテジック部門最優秀賞のリンナイ「ECO ONE」GXEプロジェクトのクリエーティブが、クラスタ分析による読者ニーズによりきめ細やかに対応できればグランプリ対抗馬だったかも。逆にクリエーティブ部門最優秀賞のパーソルキャリア「歴史に学ぶ仕事の極意」の「年収査定」というアイデアの面白さは、もっと戦略的広がりを生めたと思う。