dSPACE Japan User Conference 2022 Digital特別インタビュー

ホンダがeVTOLやロケットの
開発に挑む理由
高い目標への挑戦が
若い人材を育てる

川辺氏が考える2050年のホンダの姿は

そもそも、こうした新しい分野への挑戦を始めたのはなぜですか。

川辺2050年までホンダが生き残る方法を議論してきました。変わらなくてはいけないものもあれば、変えてはいけないものもあると思います。このうち創業以来ずっと変わらないことは、モビリティーを通じて世の中の役に立つということです。高い目標をかかげて技術で挑戦し続けるという企業文化も変わりません。

 一方で、モビリティーは今後も進化していきます。その一つがeVTOLだと思います。電動化でより安全・静かで環境にも優しい新しい空のモビリティーを実現して、人々の暮らしをもっと便利に変えてゆくことを目指しています。将来の市場に関しても様々な予測がありますが、将来的には100兆円以上という予測もあります。現在の世界の自動車市場が270〜280兆円と言われていますので、新たな事業としてのポテンシャルはあると考えています。

 宇宙産業も、将来は200兆円を超える市場になるという予測もあります。空へ、宇宙へ、人々の移動が拡大していくのなら、我々が手掛けるモビリティーもそれに合わせて進化させていきたいというのが新領域に挑戦する第一の理由です。

 もう一つの理由は、こうした航空分野や宇宙分野が、我々の強みを発揮できる分野だということです。ロケットエンジンもガスタービンエンジンも、クルマや航空機開発で培ってきた燃焼技術や様々な要素技術を生かせます。今後、クルマは電動化が進み、エンジン技術者が腕を振るえる領域が狭まっていきますが、ロケットやeVTOLで、そうした技術者の経験を生かしてもらいたいと考えています。

アバターロボットはどのような扱いでしょうか。

川辺アバターロボットも、広い意味でのモビリティーだと捉えています。病気で寝たきりの方も海外旅行ができるようになるかもしれない。あるいは、月面で基地の建設など、人間にとって非常に厳しい環境での作業を、人間の分身として任せられれば非常に助かります。

 ここでいうアバターロボットは、単に人間の動作を再現するだけではありません。宇宙では信号の遅延がありますから、アバターロボットは、こちらの意図を理解して半自律的に動作するようにしなければなりません。これは難題なので、2030年以降の実現を目指しています。

 こうした新領域は20~30代を中心とした若手技術者も多く担当していますが、みな目をギラギラ光らせて挑戦していますよ。困難な挑戦を通じて、かつてのホンダがそうだったように、技術者を育てる道場のような場にしたいのです。

eVTOLのような新領域へのチャレンジでは、シミュレーション技術の活用が非常に重要になりますね。

川辺先程説明したように、私はこれまで飛行機やレース、4輪開発を担当してきましたが、いつも横にdSPACEがいました。現在も一緒にeVTOLの開発に取り組んでいます。とにかく今は、製品が複雑化し、ソフトウエアが非常に大規模になっています。特にソフトウエア開発の初期段階から、RCP(Rapid Control Prototyping)やMILS/SILS、シミュレーション技術を活用した検証が非常に大事になってきます。

eVTOLの制御は難しいのでしょうか。

川辺ホンダジェットができたのだからeVTOLもできるだろうという気持ちがあったのですが、多数のローターと舵面をフライバイワイヤで制御して飛行するためのソフトウエアはまさに複雑の極致です。システムとしてもガスタービンエンジンだけでなく電動化によりバッテリー、モーターもある。その他空力、騒音振動、熱、安全性も同時に成立させなければならない。こんな複雑なシステムの開発ではシミュレーション技術やMILS/SILS/HILSを用いた検証技術がますます重要な位置づけになります。またいわゆるモデルベースのシステムズエンジニアリングの考え方に基づいた開発が必要です。単なる一つのシステムではなく複数のシステムを組み合わせたSystem of Systemsという概念も必要でしょう。dSPACEは、シミュレーションと検証領域でのリーディングカンパニーですがこのMBSEについても、以前から提唱されていましたね。

JUCでも、eVTOLの開発について講演されると聞いています。

川辺eVTOLだけでなく、ホンダが2050年に向けて、安全や環境、将来の仕込みについてどう考えているか、ホンダはどう動きだそうとしているかを紹介します。ソフトウエアも含めた複雑なものづくりにどう対応するか、単なるものづくりからサービス企業へどう脱却するか、eVTOLはいい例なので、これからの製造業の目指すべき姿、考えるべきことを共有できればと思っています。

2022年9月28日(水)

  • 基調講演

    未来に向けたHondaのビジョンとチャレンジ

    株式会社本田技術研究所
    先進技術研究所 新モビリティ研究ドメイン統括 フェロー
    川辺 俊氏

  • 講演

    xEV向けRCP&HILソリューション(仮)

    dSPACE Japan株式会社
    技術営業部 West Sales Engineerグループ SE West チーム2
    シニアセールスエンジニア
    チームリーダー
    稲葉 修三氏

  • 講演

    ラージ商品群における
    ハイブリッド検証HILSの構築 ・ 活用事例

    マツダ株式会社
    パワートレイン開発本部 ドライブトレイン開発部
    柳楽 康滋氏

  • 講演

    Virtual ECUを用いた
    eSILシミュレーション

    dSPACE Japan株式会社
    CX技術部 Bussiness Prototypingグループ East Field Engineerチーム
    シニアフィールドアプリケーションエンジニア
    チームリーダー
    鈴木 祐次氏

  • 講演

    パワートレーン制御評価の効率化に向けた
    シミュレーションツールチェーン開発
    ~シミュレーション活用を推進するUXの提供~

    トヨタ自動車株式会社
    計測・デジタル基盤改革部
    長澤 祐也氏

2022年9月29日(木)

  • 基調講演

    スマート物流の実現に向けた開発の取り組み

    株式会社豊田自動織機
    トヨタL&Fカンパニー
    経営役員
    一条 恒 氏

  • 講演

    AURELIONを使用したADAS/AD開発向け
    センサシミュレーション(仮)

    dSPACE Japan株式会社
    CX技術部 Bussiness Prototypingグループ East Field Engineerチーム
    シニアセールスエンジニア
    香月 彰幸氏

  • 特別講演

    ぶつからないクルマ?
    スバルが生んだアイサイトの秘密
    そして、60歳からの挑戦

    株式会社SUBARU
    技術本部
    技監
    樋渡 穣氏

  • 講演

    皆さまから信頼されるパートナーになるために(仮)

    dSPACE Japan株式会社
    アプリケーション技術部
    部長
    松井 茂氏

  • 講演

    自律型自動運転技術への金沢大学の取り組み
    ~LiDARアノテーションサービスを活用した
    AD開発評価の効率化~

    国立大学法人金沢大学
    高度モビリティ研究所
    教授(兼)高度モビリティ研究所副所長
    菅沼 直樹氏

  • 講演

    タイトル未定(近日決定)

    BTC Japan株式会社

協賛パートナー(五十音順)
アンリツ株式会社、株式会社 小野測器、株式会社テクノプロ テクノプロ・デザイン社、東芝デジタルソリューションズ株式会社、日本シールドエンクロージャー株式会社、日本テラデータ株式会社、BTC Japan株式会社、プログレス・テクノロジーズ株式会社、ヘラージャパン株式会社、株式会社マクニカ、三菱プレシジョン株式会社