パンデミック後のモビリティーの世界
dSPACEグループ
CEO
マーティン・ゲッツェラー氏
—パンデミック後の世界で、モビリティーはどう変わると見ていますか。
ゲッツェラー新型コロナウイルス感染症は、我々の交通手段に大きな影響を与えています。公共交通よりも自家用車での移動が好まれるようになり、自転車での移動が人気を集めている国もあります。ただし、「CASE」と呼ばれているキートレンド、すなわちコネクテッド、自動運転、シェアリングをはじめとする新しいモビリティーサービス、そして電動化といった主要なトレンドの重要性は変わりません。
2020年の世界の自動車市場は20%程度減少するだろうと予想されています。これはもちろん、OEMや大手サプライヤーの研究開発投資にも影響を及ぼしているでしょう。しかし彼らは、電動化やADASといった最も重要なプロジェクトについては、当初のロードマップどおり開発を進めています。新しいプラットフォームや重要技術の開発を遅らせることこそがリスクだと理解しているからです。一方で、自動運転領域においては、当初の計画どおりに進めるメーカーもありますが、開発の一部延期を決断したメーカーもあります。
—OEMや大手サプライヤーは開発テーマの“選択と集中”を進めているというわけですね。こうした動きに、dSPACEはどう対応しているのでしょうか。
ゲッツェラー当社の顧客は、開発プロセスの効率化、開発期間の短縮、コストの最適化などを望んでいます。こうしたニーズに応えるべく、新たに掲げる包括的な戦略が「New dSPACE」です。これまで当社は数十年にわたって、車載ソフトウエアをテストするための様々な機器類、別の言い方をすれば試験ハードウエアのノウハウを蓄積してきました。これに加えて我々はこの2年間、ソフトウエア・シミュレーション、クラウド・コンピューティング、人工知能(AI)への顧客ニーズの高まりに対応して、スタートアップ企業の買収を含め、この分野を強化してきました。これにより、当社は様々なソリューションを組み合わせ、顧客のニーズにエンド・ツー・エンドでシームレスに対応することが可能になり、開発の効率化に最適な提案ができるようになったのです。
—電動化の分野では変化が起きていますか。
ゲッツェラー当社は電動化に関するあらゆるニーズをカバーできる体制を構築していますが、最近の興味深い動きとして、燃料電池技術のテストソリューションの需要が増加している兆候があります。現在、米国、欧州、アジアの自動車・トラック分野の顧客をサポートしています。
—自動運転に関してはどうでしょう。
ゲッツェラー自動運転がモビリティーの世界に革命をもたらすことは間違いありません。ただし重要なのは、どのようなユースケースでビジネスモデルを提示できるのか、またそのタイムラインはどのくらいになるのかということです。私の認識では、パンデミックの影響で一部遅れているとはいえ、多くの企業がロボットタクシーや乗用車の分野で開発を進めています。商用車への応用もビジネス的に発展する可能性があります。例えば、建設現場やその他の限定された場所での自動運転車の使用などです。
自動運転の実現にシミュレーションでのテストは不可欠
—自動運転の主な技術的課題はどこにあるのでしょうか。
ゲッツェラー自動運転ではハードウエアとソフトウエアを統合した堅牢なアーキテクチャーが必要です。そのためには、実車でのテストだけではなく、実車では不可能な距離、実車では危険な状況などを含めたシミュレーションでのテストが不可欠です。当社ではシミュレーションのためのツールとともに、クルマ、標識、人など、異なる様々な環境条件下でシミュレーションするためのテストシナリオを生成するツールも提供しています。幅広いテスト条件をカバーするためには、実際の走行状況を反映した様々なシナリオで繰り返しシミュレーションすることが不可欠です。
—dSPACEにとっての日本市場の重要性について聞かせてください。
ゲッツェラー日本は、当社にとって戦略的に非常に重要な市場です。自動車産業の規模が大きく、ハイブリッド車に代表される電動化、燃料電池、その他自動車へのエレクトロニクスの導入など、多くの分野でイノベーションの先進国であることも理由の一つです。当社の日本での事業展開は30年前に始まり、2005年には現地法人を設立しました。ドイツの技術者と日本の技術者が協力して、dSPACEのソリューションによって課題解決することで、日本の革新的な製品が世界の市場にいち早く投入できるようサポートしています。