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dSPACE Japan User Conference 2024特別インタビュー

いすゞ自動車が挑むADAS開発
トラックならではの課題、
独自のHILS活用法とは

乗用車だけでなく、トラックなどの商用車でもADAS(先進運転支援システム)の普及が広がってきた。商用車の主な特徴として、顧客の用途・ニーズに合わせた様々な車型仕様・コンポーネント展開があり、検証すべき仕様の組み合わせが多い。これはADAS・自動運転開発上の大きな課題となる。いすゞ自動車は、ソフトウエア開発の早期段階からHILS(Hardware in the Loop Simulation)を活用することで、開発効率の向上を図っている。トラック向けADASの開発にHILSを採用した理由や活用のメリットを、同社の嶋崎翔氏に聞く。
※資料・画像提供:いすゞ自動車

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いすゞ自動車
車両審査実験第一部
先進安全システム実験課
嶋崎 翔

嶋崎さんのこれまでのご経歴をお聞かせください。

嶋崎私は2010年に入社して以来、車両エレキ関連実験部署や、販売会社でのフィールドエンジニアなどの経験を経て、2017年に新規立ち上げとなった現在の部署に異動しました。

 現在は、中大型トラック向けADAS機能/性能検証・適合担当としてセンシング機能の開発やACC/AEB/BSM(車間距離制御装置/緊急自動ブレーキ/ブラインド・スポット・モニタリング)など幅広く制御システムの開発に携わってきました。

販売会社時代はユーザーの声を直接聞く機会があったとか。

嶋崎販売会社では、直接お客様からのご要望を伺う機会に恵まれました。声として多かったのは、“仕事のための車”として信頼性や安定稼働を強く求められていることです。特にAEBなどは事故防止のための装置である反面、意図しないシーンでの急ブレーキ作動は積荷被害につながる場合もあり、ご迷惑をかけてしまいます。過去にはご指摘を受けて作動場所を実際に何度も走行し、再現調査したりしました。その後、ADAS機能の開発業務の担当となり、同じお客様に開発の面からサポートさせていただいたこともありました。

意図しないシーンでの作動を防ぐにはどのような対応が必要になりますか。

嶋崎難しいのはシステム作動の感度調整です。感度が低いと、必要な場合に作動しなかったり狙いの性能が出せなかったりしますが、逆に高いと不要作動につながってしまうという、トレードオフの関係があるのです。実路環境での十分な走り込みはもちろんのことですが、早期開発段階からいかに実路環境を意識した作りこみができるかが重要であると考えています。

「急」のつく作動は禁物
トラックに求められるADAS性能

トラック向けのADASに求められる性能とはどのようなものでしょうか。

嶋崎トラックは乗用車に比べて車体が大きく、積荷が重いため、ドライバーは余裕を持った運転操作を求められます。このため、ADASを作動させる場合でも、急ブレーキのような“急”のつく作動は避けなければなりません。積荷を含めた車両重量が重いことや、重心が高いことから、運動性能や操作に対する応答性が乗用車より低いといった車両特性を考慮して、ADASの性能を決める必要があります。

 同時に、ドライバーに不安を与えないように、ADASの作動状況を伝えるインジケーターについても考慮が必要です。例えばAEBでは、前方の車両と車間距離が接近すると警報を出すのですが、ドライバーが煩わしく感じないように、かつ確実に認識するようにしなくてはなりません。まずはメーターの警告灯の点灯、次にドライバーに注意を促すための軽い自動減速、それでもドライバーが減速しないときには本制動、といった具合に段階を分けて作動させています。

開発の難しさはどんなところですか。

嶋崎当社のトラックは、小型の「エルフ」、中型の「フォワード」、大型の「ギガ」という3車種のみですが、同じ車種でもバリエーションの幅が広く、重量差も大きいため、制御対象として考慮すべき組み合わせが多岐にわたります。

 さらにADASのソフトウエア開発で難しいのは、エンジンやブレーキ、メーター表示など、車両の各部分を協調して動作させる必要があることです。これまでは、車両システムとの結合環境下におけるADAS機能/性能検証は実車メインで実施してきました。ただし仕様ごとに試験車を製作、試験実施するとコストも試験期間も膨大になってしまいます。開発すべきソフトウエアは複雑化の一途をたどる中、実車主体ではなく、HILSのようなシミュレーション技術活用を主軸に置いた開発へのシフトが必要になってきたわけです。