工数の60%削除も可能に

車両の電動化で
ニーズ高まる「パワーHIL」
EVの心臓部「インバーター」の
開発を効率化

世界の自動車業界で急速に進む電動化。完成車メーカー各社は、向こう10年の間に、多くの開発の必要に迫られている。限られたリソースで電動車のバリエーションを拡大するには、開発効率の向上が不可欠である。そこで注目されるのが、シミュレーション技術の活用で、電動車の「インバーター」の開発を効率化するdSPACEの「パワーHIL」という手法だ。dSPACE Japan中部支店長で技術営業部部長の山本光氏に、詳細やメリットを聞いた。

インバーターとはどのようなシステムなのでしょうか。

山本氏インバーターとは、直訳すれば「変換するもの」という意味になります。その名の通りインバーターはバッテリーの持つ電力を、モーターで利用できるように「変換」する役割を担っています。EV(電気自動車)に搭載されているバッテリーは直流電源のため、電流は1方向に流れる「直流」と呼ばれるタイプなのですが、そのままではモーターを駆動できません。

 そこで、直流電源から周期的に電圧、電流が変化する交流電源に変換することが必要になります。インバーターは、この直流から交流に周波数等を変換して、モーターの出力や回転数を制御します。アクセルを踏んだときの自然な加速感や、ここぞというときのアクセル操作に対する素早い応答などを実現するには、インバーターでモーターを精密に制御する必要があります。ドライバーの意のままにクルマを操る上で、インバーターはまさにEVの“心臓部”と言っていいでしょう。

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BEV(バッテリーEV)の駆動方式。車種が多様化すれば、駆動方式の多様化も進む。完成車メーカーは多くの駆動方式のEVを開発する必要に迫られる。

エンジンよりもはるかに高回転

これまでのエンジン車でも、エンジンは電子制御していたと思いますが、モーターの制御では何が違うのでしょうか。

山本氏EVは、バッテリーとモーターを積めば走るシンプルなシステムなので、制御も簡単なように思われがちですが、固有の難しさもあります。それは、非常に高速で制御する必要があるためです。エンジンの回転数は、通常の乗用車であればせいぜい6000rpm(回転/分)程度までですが、現在のEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)に積まれているモーターでは2万rpmという高速回転が要求されるものもあります。しかも将来はさらに高速化が進みそうです。

なぜ高速化が進むのでしょうか。

山本氏EVやPHEVの駆動システムに小型化が要求されているからです。モーターの出力は、トルクと回転数の掛け算で決まります。電動駆動システムを小型化しようとすれば、モーターを小型化しなければなりませんが、そうするとバッテリー電圧をさらに高電圧化しない限りは大きなトルクは出せなくなります。そこで、小型のモーターを高速で回転させ、それを減速機で減速することで必要な出力・トルクを得ようというのが現在の電動車の開発のトレンドになっています。インバーターには、ますます制御の高度化が求められているのです。