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dSPACE Japan User Conference 2025講演レビュー

SDV開発の
最前線を支える
ECUの開発環境とは

創立20周年の節目を迎えたdSPACE Japanは、2025年9月26日に「dSPACE Japan User Conference 2025」を開催した。会場には400人以上の来場者が訪れ、全13講演に加え40件の展示が行われて盛況のうちに幕を閉じた。ますます複雑化する車載ソフトウエア開発において、最前線の現場では何が起きているのか。多様な講演セッションやパートナー展示の中から、講演の一部を抜粋して紹介する。

 オープニングスピーチには、dSPACEドイツ本社CEOのCarsten Hoff氏、そして2025年1月にdSPACE Japanの代表取締役社長に就任した宇野重雄氏が登壇した。

 現在、自動車業界は開発速度の加速や国際的なコスト競争の激化などで厳しい環境下にある。さらにクルマのSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)化に伴い、根本的なビジネスモデルも大きく変わりつつある。こうした中で「最重要課題となるのはソフトウエア開発の効率化である」とHoff氏は語る。

 また、宇野氏は「とくに日本市場においては、AD/ADAS、インフォテインメント分野を中心にソフトウエア市場は拡大傾向にあり、AI活用も急激に増加している」と説明した。

 その上で、dSPACEが重点的に担う役割は、①SILとHILの連携強化による、仮想環境での高効率な開発、②市場投入後のソフトウエア・アップデートへの対応、さらには③AIを活用したテストの効率化、の3点だ。その上で、「今回のイベントはこれからの開発現場を共に切り開く仲間との出会いの場として活用してもらいたい」と両氏は語った。

 続いて、基調講演で登壇したのは欧州StellantisのSangeeta Theru氏である。

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Stellantis
Director, XIL Architecture and Framework
Sangeeta Theru

 Theru氏が最前線の取り組みとして紹介したのが、クラウド型プラットフォーム「Virtual Engineering Workbench(VEW)」だ。SIL(Software in the Loop)とHIL(Hardware in the Loop)の試験を、クラウド環境で結合して検証できるというソリューションである。

 Stellantisは2021年に仏PSA Groupと欧州FiatChrysler Automobilesの合併により生まれた多国籍企業であり、傘下に14のブランドを擁している。現在、開発効率の向上のために、社内に数ある存在する車両プラットフォームを統合し、「STLA Small」「STLA Medium」「STLA Large」「STLA Frame」の4つに集約することを目指している。

 そこで大きな課題となっていたのが、これらの車両プラットフォームに横断的に搭載する「STLA AUTODRIVE」(AD/ADAS)、「STLA Brain」(E/E〈電気/電子〉アーキテクチャー)、「STLA SMARTCOCKPIT」(クラウドや対話型AIを活用したデジタルコックピット)という、3つのテクノロジープラットフォームの開発である。

Stellantis:
ソフトウエア開発の
「シフトレフト」を図る

 これらのテクノロジープラットフォーム向けソフトウエアの開発では、いかに開発効率を向上させるかが課題となる。HILはStellantis社内で既に20年ほど活用してきたが、さらなるソフトウエア開発の加速に向けて構築したのが「VEW」である。

 構築の目的は3つある。1つ目は、世界に散らばる開発者が共同で作業できるクラウド上の開発プラットフォームを構築すること。2つ目は、ソフトウエア開発のV字プロセスにおいて、可能な限り上流(V字の左側)での検証の比重を上げる「シフトレフト」によってコスト削減や開発期間の短縮を図ること。そして3つ目が、サプライヤーや開発パートナーとの協働を促進する場を設けることだ。

 VEWの活用によって、現在の車載ソフトウエア開発における検証プロセスでは、最終的に見つかった問題点のうち半分以上をSILの段階で抽出できたという。dSPACEのバーチャルECU(V-ECU)接続ツール「VEOS」をクラウド上で使用することで、ゾーンV-ECUやエッジV-ECUを構築した。加えて、VEW上ではプラントモデルやレストバス(ネットワーク上に存在しないデバイスのバス信号を発生する仮想デバイス)、さらにはHILに搭載したECUの実機とも結合することで、開発中のソフトウエアを評価できる環境を整えた。

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Stellantisが構築したVEWの構成(資料:Stellantis)

 実際に、SILとHILで評価した結果を比較すると、SILのテスト環境では、HILで検出されたソフトウエアの不具合の86%を再現できたという。大幅に効率の向上に貢献しており、「従来HILでは、1台で1000のテストケースを実行するのに57時間かかっていたのに対して、SILでは4500のテストケースを8時間で実行できた」とTheru氏は話す。現在は、半数以上のソフトウエアの不具合はSILの段階で検出可能であるという。