
まさに、濱さんが思い描いていたような“地域のつながり”が生まれている。「お客さんも、地域を応援したいからという動機で買い物をしている人が多いんです。『配達を通じて知ったお店に食事に行ってみたよ』という声も。これまで見えていなかった地域の風景と出会うきっかけをつくっていけたら」(濱さん)。配達員の中で地域通貨「mi+α(ミタ)」の試行実験も始まった。
さらに、サービス開始から3カ月ほど経った頃から生まれてきたのは、地域の飲食店と農家を結ぶルートだ。評判を聞いた新規の飲食店から「三鷹の野菜を買って、うちの料理で使いたい」という問い合わせが増えてきたという。
市内で蕎麦店「みたか 鷹場そば」を営む渡辺常喜さんはこれまでも近隣の農家に直接交渉し、地元野菜を料理に使ってきたが、仕入れ先が限られてしまうのがネックだった。「チリンチリン三鷹を通じて根岸さんや森屋さんとも知り合えた」と言い、旬の地野菜を使ったメニューも好評だ。「今後は、漬物など副菜も含めてオール三鷹産にこだわった弁当も開発してみたい」と意欲を見せる。
今や食材宅配は全国網で張り巡らされ、各地の食材が数日後には届く時代。でも、あえてローカルにこだわることに意味があると農家の根岸さんは期待を寄せる。
「食を通じて地域の魅力を地域に向けて発信する。それが私たち農家の役割です。三鷹市内だけでも農家は約200軒。今後は、チリンチリン三鷹の仕組みを市内全域に広げて、この地域の価値として都市農家の新たなスタイルを発展させていきたい」
根岸さんは、一連の取り組みを通じて“農協の原点”も振り返ったのだと語る。「農協はもともと戦後の生産量増加、食糧確保のために地域の農家が力を合わせる目的で生まれたのだと、祖父から聞いて育ちました。時代によって直面する困難は変わり、今を生きる私たちはコロナという困難を皆で乗り越えようとしている。新たな困難に対し、農家が手を取り合って助け合う経験は、きっと地域の結束を強めていく。オール三鷹のチャレンジに、これからも積極的に参加していきたいと思います」