2019.12.27
文=中城邦子
昼12時台というのに、入り口には「sold out!sorry」の張り紙。『おにぎり 浅草 宿六』だ。世界で初めてミシュランガイドに掲載されたおにぎり専門店、今年で2年連続のビブグルマン(6000円以下で食事ができるお薦めのレストラン)として掲載された。「掲載直後は、開店と同時に予定数に達してしまうこともありました」と三代目主人の三浦洋介さん。昼夜ともに4升の米を炊き、120個のおにぎりを提供している。
店は1954年の創業以来変わらないカウンタースタイルで、20種類近い具から好きなものを選んでもらい、注文が入ってから握る。「具は、年間を通じて良い品質のものが安定して手に入ることが前提に選んでいるので、塩鮭や梅、昆布などほとんどがおにぎりの定番品です」と言う。ただし、どこの産地のものを使うかを吟味。
おにぎりの命ともいうべき米は、毎年変わる。新米が出る季節に取り寄せ20種類ほどを検品して絞り込み、炊き比べ、さらに握って食べ比べて決めると言う。全国各地の米が出揃う11月中旬くらいまでかけて選び、決まったら次の新米が出るまで1年間同じ米を使い続ける。
特に大切なのが、海苔との相性だ。海苔は東京湾産。品質が安定し、三浦さん自身が子どものころから食べて慣れ親しんだ味だ。「海苔の風味が勝ちすぎても、海苔が厚すぎてもだめです。やっぱりおにぎりは、ご飯をおいしく感じることが一番ですよ」。