農作業は再犯防止に効果アリ、茨城就業支援センター

刑務所出所者も対象に 広がる農福連携

刑務所出所者などの就業支援として、農業が注目されている。法務省の茨城就業支援センターでは、厚労省や農水省とも連携して、仮釈放者への農業実習の職業訓練を実施。再犯防止に一定の効果を上げている。障がいを持つ人が農業に従事することを後押しする「農福連携」。その対象を障がい者だけでなく、刑務所からの出所者の就労にも広げる動きが進んでいる。
ホウレンソウの収穫作業をする茨城就業支援センターの入所者(写真:新垣宏久)
ホウレンソウの収穫作業をする茨城就業支援センターの入所者(写真:新垣宏久)

 刑務所出所者などが、再び罪を犯してしまうケースが後を絶たない。

 法務省の「平成24年版犯罪白書」によると、刑務所出所時に適当な帰住先がなかった人の52.5%は1年未満で再犯に及んでいる。また、保護観察終了時に無職だった人の再犯率は24.6%、これは仕事のある人の約3倍だ。

 出所者の就労の確保は、再犯防止という点から極めて重要な問題だ。しかし、刑務所出所者には前科や前歴に加え、就労経験に乏しく、社会人としてのマナーや対人関係などに必要な能力が不足していることが多く、就労へのハードルとなっている。

 国は親族や民間の更生保護施設では円滑な社会復帰のために、必要な環境を整えることができない刑務所出所者を支援するため、一時的な宿泊施設を提供するとともに、保護観察官がきめ細やかな指導監督、手厚い就労支援を行う「自立更生促進センター」を設置している。

 茨城就業支援センター(茨城県ひたちなか市)は、全国に4つある自立更生促進センターのひとつ。水戸刑務所に隣接する水戸保護観察所ひたちなか駐在官事務所に2009年に開所、仮釈放者への農業実習の職業訓練を実施している。

 訓練期間は6カ月で、例年5月、8月、11月、2月と3カ月おきに開講する。定員は12名で各期4名程度、常時8人ほどが訓練を受講している、農業による自立を目指す仮釈放者を受け入れてきた。

職業訓練修了生の再犯率は半分以下に

茨城就業支援センターの鈴木勇一郎統括保護観察官(写真:新垣宏久)
茨城就業支援センターの鈴木勇一郎統括保護観察官(写真:新垣宏久)

 「入所者の多くは仮釈放になったの成人男性です。希望者と面接を2、3回行い、集団生活への適性があるかどうか、将来農業に本気で従事しようと思っているかどうかなどを見て、受け入れを決めています」と、茨城就業支援センターの鈴木勇一郎統括保護観察官は話す。

 面接に通った入所者は、農業訓練生として6カ月間、茨城県内の一般農家において、実践的な訓練を受ける。「季節に応じてナスやネギ、ホウレンソウなどさまざまな品目の栽培など、実際の農作業のさわりを経験してもらいます」(鈴木統括保護観察官)。

 雨の日には、テキストを用いた座学や農家の見学などを実施する。半年間の実習時間は約1,000時間になる。

 入所者の年齢は30代~50代が中心。期間中はほかの訓練生とともにセンターの個室に宿泊する。夜間は保護観察官が宿直で寝泊まりし、実践的な農業訓練に加え、退所後の住居や就労支援と生活指導が行われる。

 開所からこれまで、139人が6カ月間の訓練を最後まで受けて満期退所した。そのうち、就農したのは77人。就職先は個人農家から農業法人まで多岐にわたる。

茨城就業支援センター入所者の一日(出所:茨城就業支援センター)
茨城就業支援センター入所者の一日(出所:茨城就業支援センター)
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 特筆すべきは、再犯率の低さだ。

 刑務所出所者の2年以内再入率は約17%。一方、茨城就業支援センターで6か月間の訓練を終了した人の2年以内再入率は7.8%。仮釈放者に対する就農訓練は、再犯防止に効果があることは確かなようだ。

 「親元へ帰る人の場合、就労は自助努力によるところが大きく、良くも悪くも自分次第になります。いろいろな誘惑もある。ここでは6カ月間、毎日、朝から夕方まで農作業などの職業訓練を受けます。そして、毎週、担当の保護観察官が1時間の面接を行います。この6か月間が社会へのソフトランディングの期間になっているのではないでしょうか」(鈴木統括保護観察官)

茨城就業支援センターの外観(左)と居室(右)
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茨城就業支援センターの外観(左)と居室(右)
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茨城就業支援センターの外観(左)と居室(右)

 それにしても、農作業の何がこのような結果を生むのか。

 鈴木統括保護観察官が指摘するのは、農業が自己肯定感を得やすい仕事であるという点だ。

 「土を作り、種を蒔き、苗を育て、除草などの手入れをして、収穫する。コツコツ積み上げれば成果が出せるということを、比較的短い間に実体験することができます。この成功体験が自己肯定感を育むと考えられます。期間が6か月間であるため、品目や季節によっては、訓練期間内に収穫期を迎えることができません。それをとっても残念がって退所していく訓練生も少なくありません」