農作業は再犯防止に効果アリ、茨城就業支援センター

刑務所出所者も対象に 広がる農福連携

孤立する社会的弱者を農業を通じて社会に戻す

 農福連携は、障がい者の就労機会の創出だけでなく、受刑者の立ち直り支援や生活困窮者の就労訓練など広がりのある取り組みとなってきている。この背景には何があり、どこへ向かおうとしているのだろうか。

JA共済総合研究所の濱田健司主席研究員
JA共済総合研究所の濱田健司主席研究員

 「農福連携」の必要性にいち早く着目し、この分野の研究を先導してきたJA共済総合研究所の濱田健司主席研究員は、「以前からヨーロッパを中心に広がっているソーシャルファームという考え方がここ数年日本でも注目されている」と説明する。

 ソーシャルファームとは、障がい者など一般企業での就労に困難を抱える人が、必要なサポートを受けながら雇用され、ほかの従業員とともに働いている「社会的企業」のこと。昨年、東京都は、ソーシャルファームの創設を促進するため、一定の基準を満たした企業をソーシャルファームとして認証し、財政的な支援などを行う「ソーシャルファーム事業」を開始した。

 ここでいう「就労に困難を抱える人」とは、障がい者や引きこもりの人、病気のためいったん職場を離れた人、そして、刑務所から社会に戻ってきた人などを指す。

 「就労困難な人を、社会から切り離して支援するのではなく、社会に取り込んで一緒に働いてもらいそれを支援していく。東京都は、運営費の補助などの支援をしていくようです」

 一方、濱田氏が大きな期待を寄せているのが「労働者協同組合」である。2020年12月には、「労働者協同組合法」が成立した。

 労働者協同組合は、組合員が出資・運営し、自ら働く組織で、これまでワーカーズコープなどの名前で、介護や障害福祉サービス、子育て支援、清掃などの事業が既に行われている。「労働者協同組合法」は、要件を満たす組合に法人格を与えるのが柱。これにより、社会的信用や労働者の法的保護が向上することになる。

 「刑務所から出てきた人、障がいのある人、生活困窮者、高齢者などが、自分たちで組織をつくり、自分たちで運営して、自分たちで働き、地域に貢献していく。先行するスウェーデンなどを視察してきましたが、この形には可能性があると思います。なぜなら、これにより既存の制度では難しい、あるいは新しい中間支援団体の活動がしやすくなるからです」

 濱田氏は、受刑者を更生し就労につなげるためのプログラムが現状では必ずしも十分ではないと見ている。

 「農福連携の流れのなかで、心ある農家が協力事業者として、受刑者を受け入れるケースはもちろんあります。でも、仮に私たちの職場に受刑者を受け入れるとなったらどうか。再犯率の高さは知られている、性犯罪を働いてきたひとかもしれない。これは誰だって怖いですよね。やはり罪を犯した人を社会が受容するのは難しく、肝を据えて受け入れる協力事業者の数はまだまだ多くないのです。だから現行のように刑期を終えたあと、直接一般的な職業につなぐだけではなく、その準備として中間的な就労をする場が必要だと思います。その中間的就労を実現する団体として、労働者協同組合に期待しています。そしてさらに一般就労の場としても、元受験者が経営者となり得る労働者協働組合の可能性は大きいと考えています」

 農福連携は、働く場を求める障がい者と担い手不足に悩む農家を結びつけ急速に拡大してきた。社会的に最も弱者である障がい者が働きやすい職場を作ることを通して、作業の平準化や効率化が進み、農業経営の改善をも推し進めた。

 「障がい者が社会の役に立ち、農業や地域を支えている。社会で一番弱い立場にいる人にそれができるのだから受刑者だってできるのではないか。受刑者にとって、それは社会復帰でしょう。受刑者が社会のなかでみんなと一緒になって地域をつくっていく。そのなかで彼らは自分が社会に役立っているという喜びを感じるでしょう。農福連携で体現したいのはまさにこれです」

 社会的な弱者といわれる人々――受刑者も障がい者も要介護の高齢者も生活困窮者も――は、社会のなかでみな孤立していますと、濱田氏は続けた。

 「『農』を通じてそんな人たちをつなぎ、社会や地域の中に彼らを戻すことができたらいいなあと思うんですよ」と新たな農福連携の在り方に濱田氏は大きな期待を寄せる。