新社長トップインタビュー
新社長トップインタビュー
—クルマのSDV化が進むと、車載ソフトウエアも大規模化・複雑化が進みます。車載ソフトウエアの開発現場はどのように変化していますか。
宇野ご指摘の状況に加えて、今後はAIの導入が進んでいきます。特に自動運転システムの開発・検証では、AIを組み込むことが必須になりつつあります。そこで課題になるのは「AIの安全性をどのように担保するか」です。
従来、動作検証は開発段階で行うものでしたが、AI活用する場合、市場投入後にも「正しくAIが機能しているか」を継続的に検証する必要があります。しかし、現在のAIはディープラーニング(深層学習)の技術を基盤にしており、ある意味で演算のプロセスはブラックボックスです。そうした中で、どのように検証を進めるか、完成車メーカーも模索しているところだと思います。
さらに、自動運転技術でAI活用がスタートしたのは、主に物体の“認識”フェーズなどからでしたが、今後は物体の認識だけでなく、そこから周辺の状況を“解釈・判断”し、ステアリングやブレーキ、モーターといったアクチュエーターの“操作”にいたるまで、一連のプロセスを単一のAIで処理する「End-to-End AI(以下、E2E)」が実用化されつつあります。
—E2Eで開発の効率化が期待できる一方で、安全性の担保はますます課題になりそうです。
宇野このE2Eにおいても安全性を確保する手法の一つとして「ガードレール」という手法が注目を集めています。AIの判断が、事前に設定した「安全の範囲=ガードレール」を超えると強制的に別の安全システムが作動するというものです。例えば、車両が周辺の物体に近づきすぎるとブレーキをかける、といった仕組みです。
AD/ADAS ソフトウエアにE2Eの活用
—正しくガードレールが動作するかは、どのように検証するのでしょうか。。
宇野まずはE2Eのシステムを検証し、次にガードレールが正しく動作するかを検証することになります。自動運転システムを検証する手法として当社が提供する2つのソリューションも、ここで活用いただけます。
1つは、路上で人が運転するクルマに搭載したセンサー(レーダー、カメラなど)で収集したデータを「シナリオ」として自動運転システムに入力し、様々な状況に対して正しい判断ができるか検証するというものです。
2つ目の方法は、実際の道路で収集した画像データから、CG(コンピューターグラフィックス)画像を生成し、これをシステムに入力して検証する方法です。この手法では、速度や周囲の車両の位置などのパラメーターに変更を加えることができるので、より様々な条件でテストすることが可能です。
—他にも検証におけるAI活用は進んでいるのでしょうか。
宇野あらゆる検証のプロセスで、AIの活用が試されています。コードの生成から、テストケースの作成・実行、テスト結果の評価など、一連のソフトウエア開発プロセスをAIで自動化しようという動きが活発です。人の仕事は、こうして自動化された開発プロセスが本当に正しいかの検証にシフトしていくことになりそうです。
—最後に、今後の自動車開発の方向性や展望について聞かせてください。
宇野今後、車載ソフトウエアの大規模化・複雑化が進んでいけば、ECUや車両の実物での検証には限界が出てきます。そこで重要になるのが仮想環境での検証です。また、dSPACEだけでは対応しきれない領域については、協力いただける企業とパートナーシップを結び、お客様の実現したいことを共に実現していきます。
実際、欧州Stellantisでは、実際のECUを使ったソフトウエア検証は全体の10%しかなく、残りの90%は仮想環境での検証になっています。実物での検証が減っているわけではなく、検証の絶対量が増えてきているのです。クラウドベンダーやエンジニアリング会社などのパートナー企業と連携し、大規模な検証を実現しています。
今後も、仮想環境での検証と実物による検証の相関性はますます高まり、そのことが一層、仮想化を加速していくでしょう。