Oceanic Constellations事例
Oceanic Constellations事例
—貴社が開発を進めているUSV(水上ドローン船)とはどのようなものなのでしょうか。
小島現在開発・テストを進めている「β機」は、全長が約3m、幅が約0.9mの完全電動船です。船体上部に搭載した大容量の太陽光パネルで発電し、バッテリーに蓄電した電力で航行します。
スクリューの向きを自在に変えられる「アジマススラスター」を用いることで、海流に逆らって一定の位置に留まる「定点保持」や、指定された範囲の巡回を自律的に行うことができます。台風などの極端な荒天時を除いて、1年中運用する「長期洋上滞留」をコンセプトとしています。自律的な衝突回避を実現するため、地上局で個々の機体を逐一管理する必要もなく、100機以上の大規模なネットワークを少人数で監視・運用できます。
現在、実験航行に使用しているβ機。次世代のγ機は量産に近い試作機となる予定
—なぜ船体のサイズが約3mと小型なのでしょうか。
小島日本の現行の法規制では、全長3m、機関出力1.5kW(2馬力)未満の船は「ミニボート」規格に該当するため、船舶登録が不要です。現在はUSVに関する明確な法律が存在しないため、まずはこのサイズの機体で確実な実績を作り、そのデータを元にルールづくりを進めようとしている段階です。
ただし、外洋では波の高さが3m以上に達することもあり、約3mのUSVが絶対に転覆しないように制御するのは物理的に不可能です。そこで我々は「波が高ければ転覆はするもの」という前提に立ち、転覆しても波の力で自然に元の姿勢へ回復する「自己復原性」を持たせました。平常時に水に浸かる喫水線より下部は左右対称にして直進性は保ちつつ、上部の形状を左右非対称型にすることで、浮力と重心のバランスを意図的にずらし、起き上がりやすくする工夫をしています。
—USVでは具体的にどのようなデータを集め、どういった用途を想定しているのでしょうか。
小島プラットフォーム部分は共通化し、目的に応じて最適なペイロード(センサー部分)に付け替えることで多様なニーズに応えることが可能です。例えば需要の高い安全保障分野では、船底のソナーで水中の地形や潜水艦を監視し、マスト上のカメラやLiDAR(Light Detection and Ranging)で水上を監視します。
従来こうした業務は、何十人も乗組員を乗せた大型船で行っており、1日数百万円近くコストがかかってしまうこともあります。これをUSVに代替することで、大幅なコスト削減と省人化を実現します。その他、海上の水蒸気量を計測や「洋上での再使用型ロケット回収」における着艦船周辺の安全監視役としての活用などを検討しています。こうして得たデータの販売を当社のビジネスモデルとして想定しています。
—海上での自律航行を実現するために、どのような検証をしているのでしょうか。
小島海の上は通信帯域が極めて狭く、荒天時には通信が数分間途切れることも日常茶飯事です。このため地上からの遠隔操縦に依存せず、USVに搭載したコンピューターによりカメラ画像やLiDARの点群データから物体を認識して、自律的に他の船や漂流物を回避する必要があります。
この自律的な衝突回避アルゴリズムの検証のために、dSPACEのHILS(Hardware-in-the-Loop Simulation)を導入することで、仮想環境でシミュレーションを行っています。現実の海で、無限に存在する天候、波の高さ、太陽の角度、他船の接近角度や速度の組み合わせをすべてテストし、安全性を保証することは不可能だからです。
—前職の自動車メーカーでも、dSPACEのHILSを活用されていたと伺いました。自動車メーカーでの活用と異なる点はありますか。
小島衝突回避機能という目的や、モデルベース開発とHILSによる検証という開発手法は自動車業界と変わりませんが、開発環境の成熟度が大きく異なります。海洋業界では、3Dシミュレーションツールなどの標準化が進んでおらず、HILSで使用するためのデータを生成する専用のリアルタイム・シミュレーターをゼロから自社開発する必要がありました。
また、USVには前後左右の複数台のカメラ、IR(赤外線)カメラ、LiDARなどが搭載されています。本来の要件としては、これら複数のセンサーに入力するデータを同時に、かつレンズの歪み(ディストーション)なども含めてリアルタイムに完全同期させて生成する処理ができることなのですが、汎用の物理エンジンでは満たすことができませんでした。
そこで、当社のゲーム業界出身のエンジニアが、波の物理演算から空気中の光の散乱、海面のキラキラとした反射に至るまで、実写と見まがうほど精巧なリアルタイム・シミュレーター「MARDS」を構築しました。
「MARDS」でリアルタイムに生成したカメラ画像。これらの画像データをdSPACEのHILSに入力して、USVに搭載するコンピューターが正確に動作するか検証する
—今後の事業化に向けたロードマップを教えてください。
小島2027年度からのサービス提供開始を目指し、今後は工場を立ち上げ、量産試作モデルである「γ機」の開発を進めます。それと並行して、現在のβ機による実証エリアを由比ケ浜周辺の漁業権エリアの外側などへ広げ、これまで実機では検証していない群制御の確認を進めながら、徐々に運用海域を拡大していく計画です。その上で、将来的には「海の衛星群Ⓡ」のネットワークを拡大し、海洋監視・観測から防災・安全保障まで、日本発のサービスとして展開していきたいと考えています。
2026年9月17日に行われるdSPACE Japan User Conference(JUC)では、海洋という新しい領域におけるHILS活用について、より詳細をお伝えできればと思います。
SDV時代におけるMBSEの拡張:
車両試験からシステムシミュレーションへ
トヨタ自動車株式会社
車両デジタル開発部 XILS開発推進室
主査
菅井 貴夫氏
dSPACE HILSを活用したパワーユニットテストベンチの標準化と開発プロセス進化への取り組み
株式会社本田技術研究所
四輪研究開発センター PU・エネルギー性能開発室 エネルギーシステム性能開発ブロック
アシスタントチーフエンジニア
山中 健太郎氏
海の見える化に向けた「自律航行水上ドローン」の安全検証へのHILシミュレーション適用
株式会社Oceanic Constellations
シミュレーション部門
執行役員 モデルベース開発・シミュレーション担当
小島 修一郎氏
燃料電池システム開発におけるMILS/HILS/ベンチ自動テストプラットフォーム
ー運用への挑戦ー
株式会社本田技術研究所
統合研究センター 水素パワーユニット研究開発室
Staff Engineer
間庭 秀人氏
バーチャルECU Lv.3活用トライで発生したリアルな課題と対応事例の展開(仮)
アイシン・ソフトウェア株式会社
知能化システム開発部 第4開発室
室長
内山 創太氏
知能化システム開発部 第4開発室 第4G
グループ長
林 春菜氏
車載ソフト開発をクラウドネイティブに
dSPACE × AWSで加速する次世代クルマづくり
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
AWS Automotive & Manufacturing
Leader Solutions Architecture
白石 真一氏
dSPACE HIL/VEOS によるシステムテストの完全自動化
BTC Japan株式会社
代表取締役社長
安藤 太一氏
AI駆動型SDVライフサイクルマネジメントが加速する、SDV価値の継続的進化
~富士通×dSPACEの共創によるテスト自動化と開発高速化~
富士通株式会社
クロスインダストリーソリューション事業本部 Trusted Society事業部 SDVグループ
Manager, New Mobility
山口 真幸氏
Cypremos Engineering Suite、dSPACE Test Automation SDKによるテストケース自動生成、実行
Astemo Cypremos株式会社
ソリューション&サービス本部
部長
澁谷 浩氏
自動車シミュレーター向けシナリオ生成技術のご紹介:
AI・画像処理による次世代ソリューション
株式会社モルフォ
ソリューション事業部
マネージャー
佐藤 夕介氏
実世界を起点とした自動運転AI開発
~AURELION×HDマップ×3DGSデータによるデジタルツイン活用~
ダイナミックマッププラットフォーム株式会社
ソフトウェア技術部
部長
間下 健介氏
Building an Expandable HIL Farm-Based Continuous Testing Environment and SYNECT-Integrated Validation Framework for SDV
Hyundai Mobis社
Electronic Brake Test Team
Senior Research Engineer
Namwoo Kwon氏
講演情報は変更になる可能性があります