接点はWeb検索からAI経由にシフト
コンテンツ生成は経営戦略の1つに
アドビ
クリエイティブ&プロダクティビティ 法人マーケティング本部 執行役員
竹嶋 拓也氏
ここ数年、コンテンツのAI生成に注力してきたアドビが、エージェンティックAIを活用した企業ブランディング戦略を体現するコンテンツ開発プラットフォームの提供に大きくかじを切っている。アドビの竹嶋氏は、「AIツールの利用を部分最適にとどめることなく、Webマーケティングにおける顧客理解から、顧客体験の設計、コンテンツ供給までのワークフローを一気通貫で運用・管理できる基盤と捉え、経営戦略の1つとして取り組むかどうかがAI導入による成果創出の分かれ道になります」と力説する。
アドビ
クリエイティブ&プロダクティビティ 法人マーケティング本部 執行役員
竹嶋 拓也氏
こうしたソリューションが求められる背景には、企業と消費者の接点がここ1~2年でWeb検索からAI経由へと大きくシフトしたことにある。購入したい製品を比較検討する場合、従来はWeb検索で表示された複数のサイトを見比べるのが一般的だった。しかし最近では、Web検索の前にAIで下調べを済ませてから、Webサイトで確認する消費者が増えている。竹嶋氏は「消費者の50%以上がサイト訪問前にAIで初期検討を行うという調査もあります」と話す。
人とAIをペルソナに設定
ブランド誤認を未然に防ぐ
このAIを介した最初の接点は、顧客が製品に抱く第一印象や信頼形成に大きなインパクトを与える。そこでアドビは、「人」(消費者自身)と消費者が使う「AI」といった2つのペルソナを念頭に置き、Webサイトなどで提供するコンテンツを通じた顧客体験を設計する必要があるとしている。人との接点は製品購入やサービス利用などの最終決定につながり、AIとの接点は企業ブランドの“認識のされ方”や情報の正確性に影響を与える。竹嶋氏は「両方のマーケティングで勝たないとブランディングの成功は難しい状況です」と話す。
実際、多くの企業ではAIに正しい認識を与えるためのWebコンテンツが不十分であり、AIが収集した非構造化データや古い情報が原因となって、消費者がブランドを誤認するケースが多いという。これを防ぐには、ブランディング戦略に最適化された最新コンテンツを、機動的かつ継続的に提供する体制を整える必要がある。それぞれ関心が異なる消費者からより多くの共感を得るには、パーソナライズされたコンテンツを大規模展開することも求められる。
AI時代では「人」に加えて「AI」の調査結果も意識すべきペルソナになる
戦略に沿ったコンテンツ量産
DIY大手はハウツー動画を3倍に
こうした企業による「コンテンツ需要の爆発」への対応策として、アドビはブランディング戦略に対応した大量のコンテンツ作成を自動生成・管理するソリューションを提供している。その基盤では、テキスト、音声、映像といった複数のフォーマットを横断しながら、コンテンツの自動生成工程を設計する。制作現場における反復作業や無駄なプロセスを削減することで、コンテンツの品質とスピーディーな制作体制を実現できる。顧客の導入効果が単なる業務改善ではなく、ROIを生み出すレベルまで高まることを目指している。
アドビのAIソリューションを効果的に活用しているのが、米国のDIY大手であるThe Home Depotだ。顧客のスキルや検討段階に合わせたDIYのハウツー動画を自動生成する仕組みを構築し、1年間でコンテンツ量を約3倍に増やした。生成した動画をWebサイトや店舗で顧客ニーズに応じて出し分けることで、顧客が安心して道具などを購入できる体制を整えている。竹嶋氏は「AIエージェントは顧客体験を進化させ、企業ブランドの可視性と信頼性を左右する存在になっています」と結び、その意義を強調した。
米国のDIY大手であるThe Home Depotは、大量生成したハウツー動画を顧客ニーズに応じて出し分ける
分科会Discussion Report
分科会では、リテール業界の第一線で活躍するマーケティング・デジタル担当者が集結し、「顧客体験を差別化せよ、新しい購買体験をどうつくるか。」をテーマに活発な意見交換が行われた。
議論の核心となったのは、「リアル接客の暗黙知をいかにデータ化し、顧客体験に活かすか」という問いだ。熟練スタッフが顧客の言葉や表情から潜在ニーズを読み取る技術をAIで構造化することで、ECや海外展開にも応用できるという期待が各社に共通していた。
「買わなかった理由」を記録・蓄積することで商品開発に還元できるのではないかという着想や、店頭で蓄積した接客データをEC体験の改善に活用する事例など、接客を起点にした顧客体験の深化に向けた議論が広がった。
一方で、AIによる最適化が進むほど「買い物の偶然性や感動が失われる」という懸念も浮上。ショッピングが「効率的な調達」と「エンターテインメント」に二極化していくなかで、ブランドの個性を守りながらいかに顧客の感情を動かす体験を設計するかが、今後の競争優位を左右する。
AIと人の接客、そして店舗体験を掛け合わせることこそが、新しい購買体験を生み出す鍵だという共通認識が参加者の間で醸成された。
2026年3月4日 Partner Session動画
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