「クリエイティブが人を見つける」
広告配信の新たな戦略を捉えよ
Hakuhodo DY ONE
常務執行役員
柴山 大氏
マーケティングはAIの影響を最も強く受ける領域の1つとされる。現在も活用事例は増加しており、デジタル広告のAI活用は本格的な普及段階に入った。
Hakuhodo DY ONE
常務執行役員
柴山 大氏
代表例がAI配信制御型広告メニューの拡大だ。ユーザーの行動や閲覧文脈を踏まえ、AIが最適な配信先を選定し、意思決定を担う仕組みが主流になりつつある。
柴山氏は「これまでターゲットは広告会社が決めていましたが、クリエイティブに様々な意図を込め投入し、ユーザーの発見をアルゴリズムに委ねる形に変わっています」と説明。坂下氏も「我々はAI配信制御型広告をディスカバリーエンジンと呼び、この仕組みを強化しています」と語る。
MetaはInstagramやFacebookなどの定番SNSを提供。圧倒的なデータを源泉とし、同社ではAI戦略を加速。先進的なR&Dの継続、海底ケーブルやデータセンターといったAIインフラの構築を通じて、全方位的な積極投資を行っている。
すでにMetaのアプリ内にはAIが組み込まれており、ユーザーは無意識にその恩恵を受けている。事実、Instagramでレコメンドされるコンテンツの50%以上は、AIによるものだ。さらに、Instagramで費やす時間の50%はReels(縦型のショート動画)視聴であり、坂下氏は「広告やマーケティングキャンペーンにおいて縦型動画を無視することは、50%のユーザーへのリーチを損失することになります」と指摘する。
また、利用者の60%以上がInstagramで視聴する広告を楽しんでいる・気にしないとの結果も出ている。そこでMetaでは “Creative is the new targeting”を掲げ、クリエイティブに最もポテンシャルの高いユーザーを発掘してもらうコンセプトで製品群を提供している。
先にターゲットを絞り込むのではなく、クリエイティブが先行してターゲットを発見するアプローチに変化
量と質で顧客層を拡大
AI時代の広告効果を最大化にする
Meta日本法人 Facebook Japan
上級執行役員 営業本部長
坂下 洋孝氏
その中核を成すのが、広告・マーケティング効果を最大化する「Meta Advantage+」である。AIを活用してキャンペーンをリアルタイムで最適化。アクションを実行する可能性が最も高いユーザーと広告をマッチングするのが特徴だ。坂下氏によれば、Advantage+ オーディエンスを用いた継続的な広告ランキングの改善により、セールスキャンペーンでCPA(顧客獲得単価)は20%、アプリキャンペーンで7%低下したという。
Meta日本法人 Facebook Japan
上級執行役員 営業本部長
坂下 洋孝氏
また、博報堂と展開した資生堂の高級化粧品ブランドキャンペーンでは、AIの最適化によってこれまでのキャンペーンでは届かなかった新規ユーザーへのリーチを実現。日本の消費財業界平均との比較で、好意度が2.9倍になるなど「量と質的にも顧客層の拡大に貢献できました」と坂下氏は振り返った。
AIをもってAIを制す
クリエイティブの現場も変容
広告がコンテンツの一部として評価される今、成果の鍵を握るのはクリエイティブの「量」と「多様性」にある。Hakuhodo DY ONEでは制作現場でAIをフル活用。“最適な1本”を磨く従来の発想から、“膨大な仮説を並行させる”運用へと移行している。
柴山氏は「広告会社としても“Creative is the new targeting”を実現するためのAIクリエイティブに注力しています」とし、簡易的なプロンプトで大量のコピー・構成案の生成、撮影不要で縦型動画を量産する最新システムを紹介。さらに予測AIを用いて効果をスコア化し、成果最大化までの期間を短縮する。
AIが配信と最適化を担い、人間は表現と文脈の設計を担う。本講演は、大転換期にある広告・マーケティング業界の“リアル”を知る絶好の機会となった。
広告をコンテンツとして捉え、個々のユーザーに最適化したクリエイティブの需要がさらに高まっている
分科会Discussion Report
分科会では「AIエージェントの活用」をテーマに、業種も規模も異なる4社が参加し、現場での活用事例を共有した。
Hakuhodo DY ONEは、複数のAI連携のオーケストレーションや、法務チェックを支援する独自AIプロダクトにより、作業工程の劇的な圧縮を推進している。FWD生命は、音声応答の自動化や医務査定へのAI活用で、業務効率と顧客利便性を向上させた。アルコット学園は、事務作業のAI化で「残業ゼロ」を実現。浮いた時間を教育の質向上や教材制作に充てる。ライオンは非IT部門の社員が自らエージェントを開発できる人材育成に注力している。
さらに、AIが生成した内容への責任所在や、効率化で生じる余剰人員の高度業務への配置転換など、組織・人事面の課題も深掘りした。単なるツール導入を超え、AIと人間が共創するビジネスプロセスの変革が不可欠との認識を共有し、組織のあり方を再定義する必要性が示された。
参加者は、Hakuhodo DY ONEの柴山大氏、アルコット学園の鈴木雄大氏、FWD生命の森山一宏氏と島田剛氏、ライオンの山岡晋太郎氏。ファシリテーターは日経BPの森重和春が務めた。
2026年3月3日 Partner Session動画
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