AIに最適化したハード開発
修理工程もAI支援で迅速化
「AIの価値を最大限に引き出すため、この数年間、かなりのチューニングを繰り返してきました」と元嶋氏は話す。レノボ・ジャパンはAI活用に最適化されたハードウエア開発を進め、異なるAI技術を組み合わせる「ハイブリッドAI」の時代に適した高度なコンピューティングパワーを提供している。
レノボ・ジャパン
エバンジェリスト
製品企画本部 プロダクトマーケティング部 部長
元嶋 亮太氏
例えば、同社のビジネスノートPC「ThinkPad T14sシリーズ」では、低消費電力とハイパフォーマンスを両立するため、プロセッサーを「インテル® Core™ Ultra プロセッサー (シリーズ 2)」へ刷新するとともにバッテリー駆動時間を最大で約1.4倍へと大幅に伸ばした。
レノボ・ジャパン
エバンジェリスト
製品企画本部 プロダクトマーケティング部 部長
元嶋 亮太氏
同社は業務にもAIプラットフォームを積極的に活用しており、その代表例が「故障対応」だ。修理センターでは、熟練エンジニアがこれまでに解決してきた膨大な修理履歴を学習させたAIを導入している。ユーザーから寄せられる「動かない」「起動しない」「熱くなる」といった申告内容に加え、修理エンジニアが目視で確認した結果を入力すると、AIが「まずこの部品を交換しましょう」という形で、修理作業の優先順位を提示する。
この結果、新人エンジニア1人当たりの修理対応台数が5倍に向上した。元嶋氏は「エンジニアのスキル要件が緩和されたことで、人員の採用が容易になり、ニーズに応じた修理ラインの柔軟性も高まっています」とその効果を強調する。
パーソナルAI基盤「Lenovo Qira」
デバイス横断で最適化される体験
新たなAIプラットフォーム「Lenovo Qira」は、「ユーザーを理解して活用シーン横断で伴走する、あなただけのパーソナルなAI」をコンセプトに開発されている。英語圏の市場から提供を始める。
ユーザーのファイルをAIに学習させて自分専用のデータベースを構築し、それをスマートフォンやタブレット、PCなどの複数デバイス間で横断的に活用できるようになる。「Lenovo Qiraは、常にユーザーの次の行動を予測し、先回りしてアシストします」と元嶋氏は説明する。
例えば、ユーザーが地図を参照している状況を踏まえ、関連する情報の検索や移動手段の手配といった次のアクションを先回りして提示する。Lenovo Qiraはユーザーの許可を得た上で、こうした一連の操作を横断的に支援し、複数ステップにまたがるタスクを統合的に実行する。これにより、1段階、2段階の操作を省略しながら意思決定までのプロセスを短縮し、ユーザーは作業のストレスを軽減しつつ、やりたいことをより速く快適に実現できるようになる。
Lenovo Qiraは、エージェント機能を進化させる。リモートワークが普及する中、ユーザーは目的の作業に応じて利用環境を選択し、クラウド上のAIとデバイス上のAIを切り替えながら、最適なAIモデルやエージェントを使い分けていく必要がある。
さらにLenovo Qiraでは、その判断をユーザーに委ねるのではなく、「Agent Core(エージェントコア)」と呼ばれるレイヤーが自動的に行う。状況を判断し、最適なモデルやエージェントを切り替えて活用できる仕組みだ。「Agent Coreは、『エージェントのエージェント』と呼べるようなアーキテクチャーを備えています」と元嶋氏は語る。
状況に応じて最適な基盤モデルやエージェントを動的に自動選択して活用する
ローカルにある情報を利活用
パーソナルな体験を支える
「AI活用がますます広がり、私たちは様々なデバイスに囲まれて生活するようになります」と元嶋氏は指摘する。そこで問われるのは、特定のアプリケーションやOSを超え、どのように統合された体験を提供できるのかという点だ。さらに、ユーザーが見たものや聞いたことをAIが代わりに理解し、人のためにどうアシストできるのかも重要なテーマになる。
元嶋氏は続けて、次のように語る。「クラウド上のAIによるイノベーションが今後も大きな進化を遂げていく一方で、ローカルにしかない情報や固有の知識を使ってAIがユーザーをどう支援できるかという課題があります。その取り組みは、まだ始まったばかりです」
レノボは「アプリやOSを超えて統合された体験」「ユーザーが見たもの・聴いたことを理解する」「ユーザー固有の知識に基づいて情報を引き出す」という3つの価値を備えたAIプラットフォームをLenovo Qiraで実現していく。
Q&Aセッションでは、Lenovo QiraとクラウドAIの関係性に議論が及んだ。日経BPの森重和春の問いに対し、元嶋氏は「置き換えるものではなく、併存するもの」と述べ、両者の補完関係を強調した。
今後、AI活用が進むにつれて、業務の用途や場面ごとに複数のAIを使い分ける時代になる。組織の中でコラボレーションしながら業務を進める場面では、クラウドに存在する様々なAIプラットフォームが重要になっていく。その一方で、元嶋氏は「Lenovo Qiraは、より個人的なアクションを支援するAIとして進化していきます。個人しか持ち得ない情報を活用し、パーソナルな体験を支える“補助輪”の1つと捉えてもらうとよいでしょう」と語る。
Lenovo Qiraはハードウエアと密接に連携し、画面上の要素を解釈しながらユーザーを支援する処理を得意としている。元嶋氏は「用途に応じたAIの選択は、PoCフェーズから実用フェーズへとAI活用の段階が変わっていく中で、今後ますます重要になっていきます」と締めくくった。クラウドとローカルを使い分ける時代において、パーソナルなAIの在り方が問われ始めている。
デバイスや環境をまたいでユーザーを支援する、Lenovo Qiraの3つの中核価値








