都市農業に追い風、練馬区は「世界都市農業サミット」開催へ

懸案の生産緑地「2022年問題」は回避できるか?

 しかし、前述のように都市農業を取り巻く環境は高度成長期やバブル期とは一変し、政府や自治体も、近年は都市農業が持つ機能と価値を重視する姿勢を見せている。環境や防災への意識が高まってきたことや、人口の減少によって都市に空き家・空き地が増えているといったことが背景にある。「2022年問題」を回避する施策として、まず政府は2015年に「都市農業振興基本法」を制定し、都市農業の多様な機能を発揮していくという理念を掲げた。政府は都市農業を守り、農地を街づくりに生かす方向へと舵を切ったのだ。

2015年制定の「都市農業振興基本法」骨子
【目的】 都市農業の安定的な継続を図るとともに、多様な機能の適切かつ十分な発揮を通じて、良好な都市の環境の形成に資すること
【都市農業の役割や機能】 新鮮な農産物の供給/農業体験・学習、交流の場/良好な景観の形成/都市住民の農業への理解の醸成/国土・環境の保全/災害時の防災空間──などとしての役割・機能
パンフレット「都市農業振興基本法のあらまし」(農林水産省・国道交通省)から
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パンフレット「都市農業振興基本法のあらまし」(農林水産省・国道交通省)から

「都市農業」を守る施策が次々に、「農家レストラン」設置も可能

 さらに、都市農業を守る施策の一つとして、2017年には、生産緑地法を活用しやすくするための改正も行われた。従来は、生産緑地に指定されるには500平方メートル(5アール)以上の規模が必要だったが、自治体が条例で定めれば生産緑地の面積要件を従来の500平方メートルから300平方メートル(3アール)へと引き下げられるようになった。これにより、面積要件を引き下げる条例を制定する自治体が相次いだ。

 また、農産物を原材料とする加工施設や直売所、農家レストラン(料理の提供の用に供する施設)などを、市区町村長の許可を得て設置することが可能となった。従来は、農産物の生産・集荷・貯蔵・保管などに必要な施設のみが設置可能だったことを考えると、レストラン経営といったビジネスも可能となり農家の活動範囲の幅が広がった。

2017年成立の改正生産緑地法の主なポイント
①生産緑地地区の指定要件(面積)の緩和
 面積が500平方メートル(5アール)以上
 →300平方メートル(3アール)以上に緩和
 ※ただし、市区町村の条例で規定することが必要 
②農産物の加工場や直売所、「農家レストラン」などを、市区町村長の許可を受けて設置が可能になった
 従来は、生産・集荷・貯蔵などに必要な施設のみ設置可能であったが、「農家レストラン」などの設置が可能になったことにより農家の経済活動の幅が広がった。
③「特定生産緑地指定制度」の新設
 生産緑地の所有者は、「特定生産緑地」にするかどうかを選択でき、10年ごとに延長できるようになった。

 さらに、従来は生産緑地指定の恩恵にあずかるには、30年間農業を続けることが義務とされてきたが、これは農家にとってはとても厳しい条件だった。今後の更新は10年単位と短期間ですむようになった。これにより生産緑地の所有者が農業を継続するためのハードルは下がったと言える。

2022年に営農を諦めるのは、2~4%か

 都市農業を守ろうとするこれらの施策の影響もあり、「2022年を機に、生産緑地の買い取り申し入れを行う農家の割合は、同年に指定30年を迎える生産緑地全体の2~4%程度にとどまるのではないか」と、ニッセイ基礎研究所 社会研究部 都市政策シニアリサーチャーの塩澤誠一郎さんは推計している。「住宅地の地価が大暴落するなどということはないだろう」

 全国農業協同組合中央会 JA支援部の高塚明宏さんは、「これまで厳しい環境の中で覚悟を決めて営農してきた方々は、これからも営農を続けたいという気持ちが強く、離農する方々の割合は高くないと考えている。我々としても、自治体への買い取り申し入れが少数にとどまるよう、昨今準備された新制度についての情報提供や活用相談などを通じ農家の方々をきめこまかく支援していきたい」と語る。