さらに、練馬区が2015年3月に開校した「練馬区農の学校」では、農業従事者の高齢化を背景に、農家のサポーターを養成することを目指している。市民が農業の基礎から学び、一定の知識や技量が身についたら農家を紹介され、実際に農作業を手伝う。
「従来は、農家の“支え手”育成が主眼だったが、農地の貸借を可能にする法律ができるようになったため、今後は農家の“担い手”を本格的に育成するという視点も持ちたいと思う」(練馬区 都市農業課長の浅井さん)
練馬区では都市農業の活性化のため、ロンドン(英国)、ニューヨーク(米国)、ジャカルタ(インドネシア)、ソウル(韓国)、トロント(カナダ)など海外都市の農家や行政担当者、研究者などを招へいし、来年2019年に「世界都市農業サミット」を開催する。サミット前年にあたる今年の11月23~25日には、プレイベントを実施する計画だ。
「サミットや関連イベントを通じて「都市農業のさらなる発展や、都市農業の価値の再評価を図っていく。例えばニューヨークでは青少年の教育や更生を目的として農作物を育てることが、大きな成果を上げているという。都市農業という“手段”を使うことで、防災や環境保全、青少年の教育…といった多様な社会的課題を解決していけることを訴えたい」と練馬区の世界都市農業サミット担当課長の山本康介さんは意気込む。

前述の都市における農地貸借の制度(「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」)を活用するケースは今後確実に増えてくるだろう。規模を拡大したいという農家が貸借を受けることもあるだろうし、農地の貸借を受けた後、一般の農業愛好家にサポート付き市民農園として貸し出すといった企業も出てくるはず。「企業の参入は今後も進む可能性が高い。JAもそうした企業の発想を学んだり、あるいは連携することで都市農業の活性化にもつなげていきたい」(全国農業協同組合中央会の高塚さん)
また、「農業体験をした人の中から、本格的に農業をやってみたいという人が生まれている」(練馬区 都市農業課長の浅井さん)。生産緑地の貸与ができることになったことから、そうした人々が新規就農者になることもあるのかもしれない。ニッセイ基礎研究所 都市政策シニアリサーチャーの塩澤さんも、「これまでは会社員をしていた人が、貸借の法律を活用して農地を借り、新規就農者となる可能性も出てきた」と、生産緑地の貸借を可能にした新たな制度の効果に期待を寄せている。
都市農地は一度宅地などに転換してしまえば、永遠に失われてしまう。農地消失を食い止め、多くの効用を持つ都市農業の灯を絶やさないためにも、都市生活者は身近な農業の価値を再認識すべきだろう。