もちろん、こうして政府や自治体、JAなどが都市農地の維持や活用を後押ししても、実際に営農を続ける担い手がいなければ中長期的に継続することは難しい。新制度では10年単位の更新となり、営農の継続へのプレッシャーは少なくなったものの、何らかの理由で農業の継続が難しくなれば、農地をどうするかは一転して農家の悩みの種になる。生産緑地の維持(営農の継続)による相続税の支払い猶予をすでに受けていると、なおさら悩みは深い。仮に営農をあきらめて宅地転用すれば、これまで猶予を受けていた相続税に猶予を受けていた期間の利子を加えた金額を納税しなければならなくなる。
こうした状況を背景に、農家の選択肢を増やすため、今年の6月には「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」が制定され、9月に施行された。この法律により、農家が自分で農業を継続できなくなった時に、生産緑地を他者や企業に貸しても指定を維持でき、固定資産税や相続税の優遇を受けられることとなった。農地の借り手は生産緑地で育てた農作物の一定割合を周辺地域に売ることなどを条件として、賃借契約を結べる。
「この制度は、終身で農業を続けるのは難しいと考える農家に対する“セーフティネット”になる。都市の農地の保全・有効活用や活性化につなげたい」(全国農業協同組合中央会の高塚さん)。


こうした制度面の充実と並行して、東京都や練馬区などの自治体は、都市農業の活性化や担い手の育成のために、かねてから市民と農業の接点を増やす努力を重ねてきた。例えば、練馬区の住宅街を歩くと、体験型農園を多く見ることができる。「練馬区では、約20年前から農家の暮らしを体験する取り組みを始めて、同様の取り組みが全国に広がった実績がある」(練馬区 都市農業課長の浅井葉子さん)。こうした体験農園は今後、都市における農業経営のモデルとして有望だ。
練馬区には17カ所の体験農園があり、農具や種苗、肥料などを農園側が用意するほか、農家が指導者となり作物の収穫までの手ほどきをするため、初心者でも失敗が少ない。利用者は子育て世代から高齢者、学校や企業にも広がっている。農業への理解を深め、多様な農業の担い手を育てるきっかけともなる。

練馬区 都市農業課長の浅井さんは、「都市における農地の役割には、農作物の生産や、防災空間・緑の景観の提供などがあるが、そのほかにも農業体験を通じた周辺住民のコミュニティ構築の機能も大きい」と語る。
