作った野菜はどのようなルートで売るのですか。
川名:私の場合、もともと消費者の方々の反応が見えるところで売りたいと思ったことが、就農を希望したきっかけでしたので、できる限りJAさんの直売所や、畑の敷地内での直売を中心に売りたいと思っています。また、直売以外でも、生産者と消費者の距離の近さを大切にしている小売店さんなどにも出荷していきたいです。直売所は地元の生産者と消費者をつなぐ場所。新鮮な野菜のおいしさを直接伝えることが可能です。できれば、思わず野菜に手が伸びるような手書きのポップも作り、自分の畑で作った農産物をアピールしていきたいです。

経営の規模は、どのくらいを考えていますか?
川名:今はまだ露地栽培の野菜だけですが、できれば来年からICT(情報通信技術)で数値管理する高機能ハウスを作り始めて、3年目からはトマト生産(養液栽培)に本格的に乗り出すつもりです。10アール(1反)の広さのハウスから採れるトマトで、1000万円以上の売上が立つ可能性はあると予測しています。生産コストが半分とすれば粗利は500万円。まずはそこが直近の目標になります。
地主さんのご厚意により、今では借りた畑の面積が当初計画の倍の20アールになったため、小さめのハウスも追加で作ることを考えているほか、残りのスペースで露地栽培もやりたいと思っています。目標は早く実現したいですね。

新たに農業をするには、おカネもかかりますし、パワーもいりますね。

川名:おかげさまで、支援をしてくれる「応援団」もいます。耕運機は地主さんが貸してくれましたし、そのほかの道具も地主さんや近隣の農家さんがくれたりとか。また、私が畑をやり始めるといったら、友人知人が手伝ってくれたり、思わぬ人が手を貸してくださったりして心から感謝しています。畑仕事がしたいという人は案外多いのだということが分かりました。こうして協力者を得やすいということも、市街地で農業をやる利点かもしれません。また、経済的な面では、東京都や日野市には補助金などの仕組みもあるので、結果はもちろん分かりませんが、ハウス建設にあたっては申請してみるつもりです。
川名さんの畑の契約期間は30年と長いですよね。まだ20代の若さなのによく思い切ったという気がします。
川名:むしろ私としては、安心して長く農業を続けられる基盤が欲しかったのです。畑を短期間で返さなければならないという心配があると、やはり投資もしにくいです。結婚して子供を産むことも考えたいので、長い間ずっと一人きりで農業をするには無理もあると思います。このため、やがては人を雇って回していくような体制にしなければという意識はあります。
「将来、こんなことをしてみたい」という夢はありますか。
川名:敷地内や近くで人が集まったり飲食を提供する場を作ったりしてみたいですね(2017年成立の改正生産緑地法により、農家も畑の敷地内でカフェやレストランを営めるようになった)。畑の敷地内でなく近隣でやる場合は、近所の住宅などを借りてということになるでしょう。
畑の外側を走る多摩モノレールの路線の下に昔の用水路が残っていて、水車や東屋(あずまや)がある素敵な緑地になっています。そこを管理している方々と共同でイベントを開いたり、地域の活性化になるような活動もしていきたいです。

また、かなり先のことになると思いますが、農業塾を開いたりとか、農業体験の機会提供もしたいという思いがあります。もちろん、農業は奥の深い世界で、人に教えるところまで全然いってないです。でも、自分がこれまで、ほかの農家さんで修業させていただいてきたように、新たに農業をやりたいという意欲を持った方々をいずれは支援したいです。
自分が植えた種から芽が出て育っていく様子をみるのは本当にワクワクする体験です。また、土に触れたり汗を流したりする農業には、人を癒す力があるといわれています。農業の魅力を幅広い人たちに伝えていきたいと思っています。