高校生レストランがまちを元気にする!

北海道三笠高校のキセキ

食に特化した学科への転換で、生徒を全道から集めよう

 三笠市はかつて炭鉱業で栄えた町だ。だが1989年に市内最後の炭鉱が閉鉱すると、人口流出と少子高齢化が顕著になった。1945年に道立高校として開校、最盛期には1,300人の生徒がいた三笠高校も年々入学者が減り、ついに2010年に募集を停止。2012年3月の廃校が決まった。

 このまま高校がなくなれば、町の活気がさらに失われてしまう。何とか学校を存続させる方法はないか。市や教育委員会、卒業生や市民たちも模索していた。そんな中で、当時の西城賢策副市長(現三笠市長)が偶然新聞で見つけ、「これにかけよう」とひらめいたのが、三重県立相可(おうか)高校の取り組みだった。

 相可高校は、調理師養成を行う食物調理科を持つ高校。同科で学ぶ調理クラブの生徒が、教諭の指導のもと、地元食材を使ったメニューを提供するレストランを経営している。

 「三笠市も米、野菜など良質な農作物の特産地。同様の取り組みを行えば生徒が集まり、学校を存続させることができて、町を活性化する起爆剤にもなると考えたそうです」と三笠高校の畑恵成教頭は説明する。

 2011年、三笠市議会は市立学校化を可決した。なんとか三笠に高校を残してほしいという声がある一方、「廃校になった高校を今さらどうする」との反対もあり、僅差での可決だった。そして三笠高校は道内唯一の食物調理科の単科高校として再出発することになった。

 2012年3月に道立高校としての三笠高校は閉校。翌4月、市立三笠高校が開校し、道内各地から集まった生徒40人が調理師コースと製菓コースに入学した。

 現在、同校には3学年・約120名が在籍している。調理師コースの生徒は卒業と同時に国家試験の調理師免許を取得でき、製菓コースの生徒は授業外に設定される専門学校の通信課程を受講することで、製菓衛生師国家試験の受験資格を得ることができる。製菓コースは在学中に国家試験を受験し、免許も取得する。合格率は開校以来常に100%を達成している。

 普通科高校を卒業してから専門学校に進むより時間も費用も抑えられること、開校初年度から三笠高校が全国レベルの調理・製菓コンクールで実績を残したことなどもあり、三笠高校の認知度は年々アップ。入学試験の倍率は近年、道内の公立高校の中でもトップクラスで、「学力も意識も高い生徒が集まるようになっている」(畑教頭)という。

 食物調理科で生徒を指導し、調理部の顧問を務めるのは同校の斎田雄司教諭だ。高校が調理師養成施設としての認定を受けるには、「調理師免許取得から6年後の技術試験に合格した、専門調理師資格の取得者」と「高校の教員免許取得者」が在籍していることが要件となる。

 その両方の資格を持つ斎田教諭は前出の相可高校出身。卒業後は、大学で食の流通、商品開発、マーケティングなどを学び、中高の家庭科教員の免許を取得。日本料理店で板前として働いていた24歳のとき、食物調理科の教員を探していた三笠高校に、相可高校の関係者が推薦した人物だ。「いつかは子供たちを教える道に進みたいと思っていたので、高校時代の恩師に『やってみないか』と声をかけられ、迷うことなく応じました」

開校以来、食物調理科で生徒を指導し、調理部の顧問を務める斎田雄司教諭
開校以来、食物調理科で生徒を指導し、調理部の顧問を務める斎田雄司教諭