まごころきっちんがあるのは、校舎の正面に建つ研修施設「三笠高校生レストラン・エソール」内だ。館内には、まごごろきっちんのほか、製菓部が運営する高校生カフェ「Cherie(シェリー)」と、市の第三セクターが運営、三笠高校の地域連携部が販売実習を行う物販スペース「エソールストア」がある。
三笠高校には調理部、製菓部、地域連携部の3つの部活があり、大半の生徒がいずれかに所属する。製菓部は「シェリー」の運営以外にも、道内の様々な企業と新商品を共同開発したり、菓子コンクールに参加して入賞を果たしたりするなど、活発に活動。また地域連携部は、地域の行事やボランティアに積極的に参加するほか、地元農家と交流して学校菜園を管理。さらに三笠市の歴史や特産物を活かした菓子類を開発し、「エソールストア」で販売している。
エソールが建つのは、無償貸付された国有地。約5億円の建築費は地方創生拠点整備交付金と地方創生推進交付金を活用したため、三笠市の負担はゼロだった。
まごころきっちん開業に向け、生徒たちが準備を始めたのは開校4年目の2015年。まず三笠市内にある、日曜定休の食堂を借り、日曜日のみ「高校生食堂まごころきっちん」を開いた。
「メニューは親子丼やうどんなどの軽食。授業で作っている料理にくらべ簡単すぎると、生徒は多少物足りなく感じていたようですが、飲食店運営がどう行われ、どんな業務が発生し、どんなスキルが必要となるのかを肌で学ぶことができた。現在のまごころきっちんは席数が50席で、平常時はランチタイムだけで4~5回転します。この規模の店を運営するのはプロでも難しい。小さな店の「高校生食堂まごころきっちん」で事前にシミュレーションできたからこそ、気持ちが引き締まり、比較的スムーズに、現在のまごころきっちんをスタートできたと思います」と斎田教諭は振り返る。
提供メニューは、松花堂弁当スタイルの「青春御膳」と、北海道のブランド牛・白老(しらおい)牛を使った「みかさ赤ワイン牛丼定食」の和食2品と、パスタランチやローストポークランチのどちらかを不定期に提供する洋食のランチメニューの全3品とした。この3品は、「マーケティング的な側面より、『教育的理由』を優先して選びました」と斎田教諭はいう。
松花堂弁当には、天ぷら、野菜の煮物、焼き魚などが入る。「つまり『揚げる・煮る・焼く』の、和食に必須の調理法が網羅されている。調理の担当者をローテーションすることで、生徒は一通りの和食の調理技術を体得できます。色々なものを少しずつ食べたいというお客さんの要望を満たせる上、食物調理科の生徒の教育にももってこいのメニューなのです」。
赤ワイン牛丼と洋食ランチに期待される教育効果は、ともに生徒のモチベーションアップ。赤ワイン牛丼は生徒たちが考案し、「第1回食の縁結び甲子園」などのコンクールで優勝した思い入れの強いメニュー。白老牛という北海道を代表する食材と、やはり北海道を代表する赤ワインを使い、地元の人に食べて喜んでもらえる。そうしたストーリーがあるメニューなら、当然作る側の気持ちも高まる。
洋食ランチは、自身も「高校生料理人」であった斎田教諭の経験を踏まえて考案された。「私の在学中、相可高校のレストランのメニューは和食だけでした。和食の道を目指していた私は、和食を作ることができて満足でしたが、イタリアンやフレンチのシェフを目指している同級生からは、洋食も作れたらさらに嬉しいとの声も聞かれました。メニューが少ない方が当然、店は効率的に運営できますが、『ここは教育の施設。食材の調達コストが多少増しても、より多くの生徒の気持ちに応えることが重要』と感じ、洋食ランチもメニューに組み込むことにしました」