進む「農福連携」 農業の担い手不足を解決し、障がい者の働く場所を確保

障害を持った人が農業生産に従事する「農福連携」がここへ来て広がりをみせている。これは、高齢化や後継者不足に悩む農家にとっては担い手の確保ができ、障がい者にとっては新たな就労の場の開拓になるなど、双方の課題を解決する取り組み。2018年、全国的な推進団体「日本農福連携協会」(2017年設立の全国農福連携推進協議会より継承)が発足。農林水産省や厚生労働省も後押しをしており、今年の5月には、内閣府がリーダーシップを取って関係省庁で構成する「農福連携等推進会議」も設置された。
「ユニバーサル農業」に取り組み、早くから農福連携を実践してきた京丸園の鈴木厚志社長(写真:廣瀬貴礼)

「障がい者だからできない」という決めつけが可能性をつぶす

 この「農福連携」の必要性にいち早く着目し、この分野の研究を長らく先導してきたのが、JA共済総合研究所の濱田健司主任研究員・日本農福連携協会顧問だ。きっかけは、15年程前、障がい者に就労機会を提供している「障害福祉サービス事業所」の賃金を調べたことにさかのぼるという。

 「障がい者の1カ月の賃金がわずか1万2000円(当時)と聞いて耳を疑いました。仕事内容は、企業の下請けが多く、自動車部品や菓子箱の組み立てなど1個何銭の仕事。もっとお金になる仕事を探す必要があると思いました」

 一方で、農業の現場では、高齢化が進み担い手が不足していた。繁忙期になると手が足りず、月給5~10万円でアルバイトやシルバー人材センターから臨時で人を雇っていた。「人手が足りない農業サイドと、働く場がほしい障がい者の福祉サイドを結びつければ、双方の課題が解決できるはずだ」と考えた濱田氏はそのために動き出した。

早くから農福連携に取り組んできたJA共済総合研究所の濱田健司主任研究員(写真:市川史樹)

 だが、当初は反対する声ばかりだったそうだ。福祉関係者からは、「農業は技術的に難しい」「天候に左右される」「障がい者には危険だ」「ただでさえ忙しいのに、そんなことやっていられない」などの声があがった。農業サイドからは「障がい者に、農業ができるのか?」と疑問符がつき、「障がい者は労働力にはならない」と言いきる研究者も少なくなかった。