ニッポンの「酒」を支える東京農業大学のチカラ

蔵元の5割以上に卒業生が活躍

テロワールを語れる日本酒にするための挑戦が始まっている

 海外市場をみると、現在の輸入上位国は数量ベースでアメリカ、韓国、中国、台湾、香港の順だが、ヨーロッパはいずれ主要ターゲットになっていく。

 「ワイン文化のヨーロッパで、日本酒を広めていくために今後課題となるのが、テロワールです。ワインと同じように土壌や気候の違いなど土地に根差す味わいが求められていくでしょう」(穂坂さん)。

 日本酒は土壌よりも仕込みの違いで差別化してきた。特に輸出用の高級ラインは、その多くが山田錦を使い、米を高度精白した吟醸酒。地域的違いは語りにくい。

 そこで、世界的に保護に合意しているGI(地理的表示)を取得し表示することで、地酒の地域性を明確にしていく動きもある。現在GIを取得している日本酒は、石川県白山市の「白山」や、都道府県単位で初の取得をした「山形」、そして「灘五郷」だ。

 「山形」のGI取得に奔走した仲野さんは、「ワインが、「ボルドー」や「ブルゴーニュ」などの産地で語られるように、日本酒も「山形」という産地を語ってもらえるようにしたい」という。

 テロワールにこだわる酒づくりは、県産米や県産酵母の研究・開発、地元を活性化することにもなり、海外にも発信しやすくなる。

 一方でGIを取得するためには、地元の水を使って地元で生産・貯蔵するなどの条件をクリアし、指定産地内で足並みを揃える難しさはあるだろう。そうした中でも東京農業大学のネットワークと、革新を続けて伝統を作り上げていくスタイルが力を発揮するのではないだろうか。

 日本酒は飲み比べができるという点で、他のアルコールとは違う特性がある。造りの違い、蔵元の違いで飲み比べる、さまざまな温度帯で飲み比べる、あるいは料理や器の違いで飲み比べる。「海外に向けてそういった日本酒の特性も含めて発信していこうと思ったら、食品や農学など多分野でそれぞれが産官学の連携事業をさまざまに展開している東京農業大学のネットワークが生きてくるのではないかと思っています」(仲野さん)

 東京農業大学の産官学連携数は、2019年3月現在100件にも上る。生命、食料、環境、健康、エネルギー、地域創生などの分野で、ひと・もの・ことをつなげていく力が、ますます期待されるところだ。