池上彰と知る ウクライナと世界の未来と私たち powered by JICA

ロシアによるウクライナ侵攻は、国際社会に突きつけられた新たな課題です。今、私たちには何ができるのでしょうか。

池上彰
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「復旧」では足りない。「復興」の知恵を

「復旧」では足りない。「復興」の知恵を
契約調印
ウクライナ政府に緊急経済復興開発政策借款を貸し付ける契約に調印する田中明彦JICA理事長(左)とウクライナのマルチェンコ財務大臣(右)(写真提供:JICA)

日本はすでに、ウクライナに対して様々な形で支援を行っています。JICAでは2022年9月にウクライナ支援室を設置して、日本ならではの支援を行っています。

その柱は3つ。(1)ウクライナの国家基盤を支える協力、(2)地域安定化に向けた周辺国とウクライナ避難民への支援、そして(3)復旧・復興への支援です。これを私なりに言い換えると、(1)今、ウクライナという国を維持するのに必要な支援、(2)今、国外にいるウクライナ国民と周辺国の人々のために必要な支援、(3)今後、ウクライナがよりよい日常を取り戻すための支援、ということになります。

そしてここには、日本ならではの知見や経験、強みが詰め込まれています。

歴史を振り返ってみましょう。日本は第2次世界大戦後に、世界からの支援を受けて目覚ましい経済成長を遂げる「復興」を経験しています。
復興は、復旧とは違います。元に戻すのではなく、元の状態よりもよい状態にすることです。
対象はハードだけではありません。ウクライナには旧ソ連時代からの汚職体質も残っています。これを払拭し、現在目指しているEU加盟をかなえるためには、密室で行われてきた政治の透明性を高めることも必要です。そのために、様々な記録をデジタルに移行することが求められています。
日本は武器を供与することはできませんが、よりよいハードにつくり替える、デジタル化を進めるといった技術的な支援ができるのです。

福島視察
東日本大震災の影響で困難に直面した福島県郡山市の農業。ウクライナ農業政策食料省の視察団が地元の人でにぎわう同市JA福島さくらの直売場を見学した(写真:窪徳健作)

また日本は、紛争で傷ついた国や地域の復興を支援した経験が豊富です。
国際支援というと、道路を造ったり橋を架けたりという印象が強いかもしれません。そうした交通インフラの整備も、国の成長に欠かせないものです。日本はそうした支援に加え、カンボジアやフィリピンのミンダナオ島などが内戦終結後から日常を取り戻すまでのシステムづくりを支えてきました。


福島視察
東日本大震災の影響で困難に直面した福島県郡山市の農業。ウクライナ農業政策食料省の視察団が地元の人でにぎわう同市JA福島さくらの直売場を見学した(写真:窪徳健作)

戦後とは、戦争が終わった瞬間に訪れるものではありません。戦争によって及んだ悪影響を消し去ることができたときに訪れるものです。それまでの決して短くない時間を、当事者たちと歩んできた経験が日本にはあります。その経験を今、ウクライナで生かそうとしています。

では、具体的に、日本がウクライナに対してどのようなサポートをしているのか。次のページから、具体的な事例を紹介していきます。