池上彰と知る ウクライナと世界の未来と私たち powered by JICA

ロシアによるウクライナ侵攻は、国際社会に突きつけられた新たな課題です。今、私たちには何ができるのでしょうか。

池上彰
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ウクライナの国土の3割が「汚染」されている

ウクライナの国土の3割が「汚染」されている
地雷や不発弾
ウクライナの国土の3割が地雷や不発弾で汚染されている。500万人が危険物の近くに居住しているといわれる(写真提供:JICA)

ウクライナの人々の安全な生活のため、電気や水の確保と同様に重要な課題が、ロシア軍によってばらまかれた地雷や不発弾の除去です。ウクライナ国家地雷対策局(NMAA)によると、国土全体の30%が地雷や不発弾に汚染され、立ち入りができない状況です。

地雷は地面に埋まっているものに加えて、雪解けによって地表に露出してきたもの、草木が茂ったことで見えづらくなったものもあります。
明らかに民間人を狙ったものもあります。農地の水路に仕掛けられたもの、家の中のぬいぐるみに仕掛けられたものまであります。地雷や不発弾のある土地に500万人が暮らし、全ての撤去には少なくとも10年以上がかかるといわれています。

一般住民の安全な生活のために、ウクライナの復興のために、こうした危険な爆発物を安全にかつ迅速に取り除かなければなりません。地雷や不発弾の除去活動を中心となって行っているのが、ウクライナ非常事態庁(SESU)という組織です。JICAはその活動を支援しています。

現状をSESU副長官のローマン・プリムシュさんをはじめ、危険な撤去作業にあたる職員の方たちに聞きました。このインタビューは2023年9月に行いました。


地雷・不発弾による汚染状況

池上:現在の被害状況を教えてください。

プリムシュ副長官:約60万km2のウクライナ領土のうち、約17万4000km2が地雷・不発弾によって汚染されています。このうち約4万7000km2が農地です。地域は、北部のキーウ州やハルキウ州、東部のドネツク州やルハンスク州、部のミコライウ州など、ロシアとの国境近くに集中しています。
私たちはこれまでに43万発の爆発物を処理しています。ただ、ロシア軍から解放された地域に戻った住民が、爆発物での事故に遭うケースが多発しており、242人が亡くなっています。

池上:ロシアによる侵攻が始まったのは2022年2月でした。地雷や不発弾の除去を始めたのはいつからですか。

SESUのお二人
SESUのローマン・プリムシュ副長官(右)と非常事態省火工・特殊工事部のデニー・コーニー課長補佐(左)(写真提供:SESU)

コーニー課長補佐:2022年4月、キーウ州の占領解除直後です(注:SESUではロシア侵攻以前から、第2次世界大戦の不発弾や2014年の戦争時の地雷・不発弾対策に取り組んでいた)。まずは住宅や重要なインフラ施設、続いて農地、それから森林や河川というように段階を踏んで検索と除去を進めています。同時に、地雷の危険性を住民に知らせる活動も行っています。

池上:地雷や不発弾を除去するために、今、何が必要ですか。人手は足りていますか。

プリムシュ副長官:爆発物を撤去するエンジニアは600人から約1500人に増員できました。しかし彼らが安全にかつ迅速に作業できるための特殊装備や重機が足りていません。例えば、専門の重機があれば、農地での処理速度は10倍近くに上がります。重機は職員たちの命を守るものでもあります。ロシアの侵攻以来、私たちは地雷・不発弾の除去で、20人の職員を失い、74人が負傷しました。


クレーン付きトラックと引き渡し式
日本から供与されたクレーン付きのトラック。ウクライナを公式訪問した林芳正外務大臣(当時が引き渡し式に参加した(写真提供:SESU

日本は、爆発物を撤去するためのクレーン付きトラック計30台を供与しています。プリムシュ副長官は「ウクライナを公式訪問した日本の外務大臣が引き渡し式に参加したことは、私たちにとって名誉なことでした」と話してくれました。
現在これらのトラックは、ロシアとの境にあるハルキウ州や、一時はロシアが併合を宣言したヘルソン州で爆発物の除去をより簡単にかつ安全に行うために活用されています。
爆発物にそれほど近づかずに処理できる地雷除去機も、日本の支援で供与される予定です。

安全性、効率性ともに高いハンディータイプの地雷探知機も供与しています。ALIS(エイリス)という名の付いたこの地雷探知機は、東北大学の佐藤源之名誉教授が開発しました。

従来の地雷探知機が備えていた金属探知機能に加え、埋蔵物を可視化できる地中レーダーも備えているため、地中に埋まっている金属の形状を画像で確認でき、精度が高いことが特徴です。
しかし、往々にして、多機能な機材は扱いが難しいもの。そこで日本は、機材を供与するだけでなく研修も実施しました。場所はカンボジアとポーランドです。

ポーランドはウクライナの隣国ですから分かりますが、なぜ、ウクライナから7800km離れたカンボジアが研修の場となったのでしょうか。SESUの職員たちも「なぜわざわざカンボジアまで行くのか」と当初は思ったそうです。
実はカンボジアには、日本の20年以上にわたる支援によって蓄積されたノウハウがあるのです。