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感銘と感動のカンボジアでの体験
カンボジア南東部・コンポンチュナン州。私は2018年に、同州のカンボジア地雷対策センター(CMAC)の地雷対策技術研修所を訪れました。乾いた土のあちこちには、地雷の存在を知らせる警告板が立てられています。といっても、実際にはどこを踏んでも爆発は起きません。ここはあくまで研修施設だからです。
カンボジアは、1960年代後半から約30年間、内戦状態にありました。その間に埋められ残留している地雷は400万から600万、不発弾は240万以上といわれています。雨期になり冠水すると、地雷が浮いて流れてくる。そんな話も聞いたことがあります。
地雷・不発弾の対策が始まったのは1991年でした。カンボジア内戦の終結に伴って活動を開始した国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)によって地雷対策の訓練所が設置され、1993年からはカンボジアの政府機関として活動を続けてきました。この訓練所がCMACです。日本は、このCMACに対して機材供与や技術支援、組織強化などを通じて長年協力を展開してきました。
2023年1月、このCMACの研修施設でSESUの職員8人が日本で開発された地雷探知機ALIS(エイリス)の使い方について研修を受けました。参加者のひとりであるSESUの首席専門官アルセニ・ディアドチェンコさんは、有意義な経験だったと振り返ります。
池上:カンボジアでの研修はいかがでしたか。
ディアドチェンコ首席専門官:佐藤教授から直接、ALISの機能について講義を受けた後、実験場で実際に地表をスキャンする練習をし、発見されたものが地雷なのか、単なる金属片なのかを判断する機能の使いこなし方などを教わりました。とても実践的な研修でした。
佐藤教授やカンボジアのインストラクターたちがALISを使いこなして熱心に教えてくれることに感銘を受けましたし、個人的にはCMACの施設内にある平和博物館にも感動しました。
池上:地雷と金属片を見分けるのは難しいのでしょうか。
ディアドチェンコ首席専門官:はい、最初はとても難しかったです。しかし練習を重ねると精度が上がり、最終的にはカンボジアのインストラクターからも上達を認めてもらえました。カンボジアから帰国してすぐ、SESUの同僚を指導する担当官のためのマニュアルを作りました。
私たちは欧米からも地雷探知機の供与を受けていますが、欧米には除去の経験がほとんどないため、使い方までは教わることができていませんでした。日本の支援はSESUのニーズを満たすという点で最も効率的なもののひとつです。
池上:カンボジアでの研修の半年後にはポーランドでも、ポーランド国家警察にオブザーバーとして参加してもらいながらフォローアップ研修を受けたそうですね。そこではどのようなことを学びましたか。
ディアドチェンコ首席専門官:高度な使用や解析の方法について学びました。また、ポーランドとウクライナは土壌が似ているので、それを踏まえた意見交換を行いました。
日本が過去に支援した国へ、その経験を紹介するために他の国を招いて行う研修を第三国研修と呼びます。今回のカンボジアとのウクライナへの支援はまさにその代表です。緊急時にこうした第三国研修をすぐに行えるのも、約30年という長い時間をかけて磨いてきた技術、築いてきた信頼関係があるからです。
このインタビューの約3週間後の10月4日、SESUはX(旧Twitter)のアカウント(@SESU_UA)で、これまでに43万8610個の爆発物を無力化したと発表しました。約3週間で、処理できたのは8610個ということになります。
ディアドチェンコさんたちがカンボジアで研修を受けた直後の2023年2月、カンボジア国防省はコンポンチャム州での対人地雷全ての除去が完了したと公表しました。カンボジアは2025年、地雷の敷設が始まってから約55年をめどに、国土から全ての対人地雷を除去することを目標にしています。
不発弾や対戦車地雷はまた別の話なのですが、長い内戦の後の長い戦後がようやく、ひとつの節目を迎えようとしています。
今も戦いの最中にあるウクライナが安全を取り戻すには、まだまだ時間がかかるでしょう。しかし、その道のりの先には必ずゴールがあることをカンボジアは示しています。