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ソーシャルビジネスを育てる、時間と忍耐
(下)ミスミ時代に仲間と(左から2番目)
(写真提供:田口さん)
池上:ボーダレス・ジャパンは会社の形もユニークですね。
田口さん:社会課題をビジネスで解決したいと考える社会起業家が集まって、経営に必要なノウハウや資金を提供し、サポートし合っています。上下関係ではなく、起業家同士が助け合う相互扶助のシステムをつくり、ボーダレス・カンパニオと呼んでいます。
池上:カンパニオとは、カンパニーの語源ですね。現在、田口さんご自身は事業経営は行わず、起業支援に専念されています。なぜですか。
田口さん:25歳でボーダレス・ジャパンを立ち上げましたが、課題解決を目標にビジネスを成立させていくのはやはり相当大変でした。おこがましいようですが同じ苦労をしてほしくなくて、社会課題に取り組む人たちをサポートする仕組みが必要だと実感したのです。あと、社会課題って本当にたくさんあるから、社会起業家はたくさんいたほうがいい。
池上:新たな事業を立ち上げる資金はどのように調達するのですか。
田口さん:僕らは自分が直接は関わっていない他の社会課題も解決したい。だからボーダレス・カンパニオではどの事業体も売り上げの1%を拠出し、それを新たな起業家の創業資金にします。出資を受けた人が次は出資をする人になる。出資でリターンを得るのではなくて、課題を解決するためのお金の循環をつくろうとしています。
池上:目指すのはリターンではなくお金の循環とはいい言葉です。しかし他のメンバーの出資を受けて始めた事業がうまくいないこともありますよね。どういう場合に撤退を決めるのですか。
田口さん:その人が「やめたい」と言ったらです。
池上:赤字続きでも「やりたい」のであればやらせるのですか。
田口さん:そうです。ボーダレス・ジャパンの唯一最大の目的は、社会のために立ち上がる人が増えることであって、もうかる事業だけを残すことではないので。それに、10年もやり続けていれば成功します。問題は、大抵の場合、出資をする側にその10年間を支える忍耐強さがないことです。
ボーダレス・ジャパンは設立時から今まで、投資家からの出資は受けていません。先ほど小木曽さんが言われた通り、以前は出資といえばお金もうけのための投資がほとんどだったので、受けていたら今やっているようなことはできていなかったと思います。最近は変わってきたと思いますし、投資家から預かったお金を増やして返すVCの役割もよく分かるのです。
小木曽さん:投資家としては本当に耳の痛い話です。VCによるベンチャーへの初期投資は、いかに早くユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)になってもらうかを基本に考えているところがあります。また、金融機関にはフィデューシャリー・デューティー(Fiduciary duty=受託者責任)というものがあり、VCは、お金を預けた側の利益を最優先に考えなくてはならないとされてきました。一方で、社会課題の解決に取り組む経営者の多くは企業規模を大きくすることより、社会課題の解決と企業の成長を両立させることを優先する傾向があります。
池上:田口さんが指摘したように、投資する側と、ソーシャルビジネスの経営者の間にギャップがあるわけですね。