池上彰と知る ウクライナと世界の未来と私たち powered by JICA

ロシアによるウクライナ侵攻は、国際社会に突きつけられた新たな課題です。今、私たちには何ができるのでしょうか。

池上彰
池上彰
第2章

ウクライナ復興へ、
動く日本

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欧米は「援助疲れ」? 
日本はどうする?

終わらない戦争が世界の形を変えている
ウクライナ地図

戦争が長く続けば当事国は疲弊します。支援している国もまた同じです。
欧米を中心とした支援諸国では、ウクライナへの支援に終わりが見えず、また、ロシアに対する経済制裁のあおりでエネルギー価格が高騰していることが、国民の不満を大きくしています。いわゆる援助疲れです。

米国では8月、バイデン政権がウクライナ向けの支援予算を含めた追加予算を議会に要請しました。しかし実際に成立した暫定予算では、野党共和党の反対を受け、ウクライナへの追加支援が除かれています。バイデン大統領は支援継続の必要性を訴えていますが、先行きは不透明です。

キーウのドーム前
キーウの聖ミカエル黄金ドーム修道院の前に展示された破壊されたロシア軍車両を見る人々

さらに、2023年10月にはパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム武装勢力ハマスがイスラエルを奇襲攻撃したことを発端とした武力紛争が続いています。世界の関心は、ウクライナから中東へと一気に移りました。

米国では2024年、大統領選挙が行われます。トランプ前大統領は、返り咲いたらウクライナへの支援は凍結すると明言しています。2016年の大統領選挙で「米国は世界の警察官ではない」と言い切った人物が再び大統領になったら、ウクライナへの支援は縮小される可能性が高いのです。

それでも、だからこそ、中長期的な視点に立ったウクライナへの支援の重要性が増します。戦争が長引けば長引くほど、その必要性は増していきます。

主要援助国のODA実績の推移

米国で大統領選挙が行われる2024年、日本はODA(政府開発援助)開始から70年という節目を迎えます。日本経済が大きく成長した1970年代、80年代と援助額を増やし、1989年には世界最大となりました。2021年の援助額は先進国の中で米国、ドイツについで世界3位です。道路や鉄道などの経済インフラや、学校・病院や上下水道設備など人々の生活に欠かせない社会インフラなどそれぞれの課題とニーズに合わせた協力を続けてきました。

日本からウクライナへの支援も、持続可能であるべきでしょう。

ハルキウの郵便施設
ロシアのミサイル攻撃を受けたハルキウ州の郵便施設

実は日本にとって、他国から侵略を受けている国を直接的に支援するという今回のウクライナへの支援は極めて特殊な状況です。
ロシアの侵攻を受けた地域を中心に残された地雷や不発弾、崩壊した建物によるがれきは安心な生活を妨げ、今後の復興の大きな障害となります。地雷や不発弾は土壌を汚染し、主要産業である農業に悪影響を及ぼします。緊急的なニーズに対応し、かつ中長期的な復興にもつながる支援が必要とされています。

そこで、この章では、こうした課題を解決するための日本ならではの経験を生かした活動をお伝えします。まずは、ウクライナの民間防衛や救難・救助を担う行政機関、ウクライナ非常事態庁(SESU)が取り組む地雷・不発弾の除去への支援です。