日経 xTECH Special
DXアクセラレート2021、デジタル活用の勘所 DXアクセラレート2021、デジタル活用の勘所

Vol.4DX

日本企業は蝶になり、羽ばたけるか
Excelがクラッシュしたその時、DXがスタートする

コロナ禍でDXの機運が非常に高まっている。だが「従来のシステム化と変わらないのではないか」と思えるケースもある。DXとは本来どういった取り組みを指し、どのように進めるべきなのか。フランスの航空機メーカー、エアバスでいち早くDXを成功させ、FPTグループに転じ、現在はFPTソフトウェアのデジタル変革部門でグローバル責任者を務めるフランク・ビニョン氏に、日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 上席研究員の大和田尚孝が聞いた。

新規事業の最初の一歩から伴走する

フランク・ビニョン氏
FPTソフトウェア株式会社
FPTジャパンホールディングス株式会社
最高デジタル責任者(CDTO)
デジタルトランスフォーメーション(DX)部門
グローバルダイレクター
フランク・ビニョン氏

――コロナ禍で日本企業においてもDXの機運が高まっています。改めてDXという言葉の定義を教えてください。

 定義は人によって異なる場合もあると思いますが、大きく3つのことが言えると考えています。「ビジネス戦略の策定」、「データドリブン」、「クラウド活用」です。

――1つ目のビジネス戦略策定については多くの企業が苦労している部分かと思います。具体的にはどのように進めるべきでしょうか。

 ほとんどの企業はビジネスに関して達成したいゴールを持っています。その一方で、ゴールを達成するための方法論と、その過程で使うテクノロジーに関するスキルがないことがあります。FPTは、方法論とスキルの両面からサポートできます。

 方法論については、弊社独自の「FPTデジタルカイゼン」という方法論があります。小さく始めて段階的に進むことができるように後押しします。言い換えると、失敗する可能性があるような、大きな飛躍のようなことは避けるように促します。

 スキルに関しても、FPTはクラウド、アナリティクス、AI等の新しいデジタルテクノロジーを手掛けてきました。我々はお客様に提供できる様々な知見、ノウハウを持っています。これらの方法論、スキルをまとめたサービスとして2021年に「DXガレージ」と呼ぶサービスを始めました。

図:デジタル改善
――DXガレージについて詳しく教えてください。

 アイデアの発想の段階から、MVP(Minimum Viable Product)の納品まで企業のトランスフォーメーションをサポートするためのサービスです。具体的には、課題を解決するためにどのようなソリューションが必要かを企業と一緒に考えます。そして課題を解決するMVPを作り、ビジネスの価値を測り、年間の利益を算出し、その結果を基に製品を改善する、といった取り組みを重ね、問題の解決につなげます。「発想」「デザイン」「構築」「テスト」「運用」「学び」「改善」というサイクルを1〜3カ月で迅速に何度も回すのです。これにより、素早く価値を提供できるようになります。今の時代、スピードは特に重要です。

図:DXガレージ

――新規事業の最初の一歩を踏み出し、それを軌道に乗せる、といった多くの日本企業が苦手とするプロセスに伴走するようなイメージでしょうか。

 その通りです。DXガレージによって、そういった取り組みを企業が高い成功率で組織的に実施できるようお手伝いします。

達成するスコープが明確でないとAIは使えない

――2つ目のデータドリブン、データ活用についてはいかがでしょう。そもそも、DXにどうしてデータが必要なのか、という点から改めてご説明お願いします。

 多くの企業は会社内に大量のデータを既に持っています。ですが、そのデータはバラバラに存在しており、連携していません。DXにおけるデータドリブンとは、社内の全てのデータを連携することであり、その際にデータプラットフォームが非常に重要になります。データを適切に連携できれば、すべてのプロセスやオペレーションを隅々まで把握できるようになり、データを基にした意思決定が可能になります。ただし、データを使った意思決定には、データの使い方を把握するための教育も欠かせません。

――データドリブンを支援するDXのデータプラットフォームについてもう少し詳しく教えてください。フランクさんが以前在籍されていたエアバスでもデータプラットフォームを導入されたと聞いていますが。

 エアバスは5年前にDXを開始し、ビジネスのすべてのデータを統合するためデータプラットフォームを導入しました。プラットフォームの名称は「Skywise」で、成功プロジェクトとして様々なところで紹介されています。どのような企業であっても、トランスフォーメーションをする場合は、どこかの時点でデータプラットフォームを導入する必要が生じます。FPTには「akaminds」と呼ぶデータプラットフォームがあり、データ統合に加えてプラットフォーム上で動作するアナリティクスやAIなどの機能も備えています。

 プラットフォームについても、データ活用と同様にそれを使いこなす人材が重要になります。FPTにはプラットフォーム活用のためのデータサイエンス、データアナリティクスの人材が豊富におりますし、顧客企業のための教育訓練プログラム「セルフディレクティッドサービス」もあります。我々の適切なコーチングを借り、お客様自身がプラットフォームを使ってアナリティクスができるようになる、という意味からこの名前を付けています。

――データ活用によって将来を予測するような場合、AIのようなテクノロジーはどのように活用するのでしょうか。

 AIに限らずアナリティクス全般に言えるのですが、それらを使って何を達成したいのかというスコープを明確にすることが重要です。FPTの場合は、顧客企業のスコープを明確にするために、データサイエンティストやデータエンジニアがデータモデルを作り、実際のビジネスのデータを取り込みながら精度を高めていきます。この過程で必要になるのは、ITに関するテクニカルな知識だけでなく、顧客のビジネスやビジネス上のチャレンジを理解することです。その能力がないと、どんなAIを使っても顧客の課題は解決できません。我々にはテクニカルとビジネスの両方に強い人材がおりますので、顧客企業のスコープを明確にし、効果的にAIを活用することができます。FPTでは、研究所の中で運用されるAIではない、製品として使えるAIという意味の「productized AI」に力を注いでいます。

青虫がいくら早く動いても、それはチョウではない

――3つ目のポイントであるクラウド活用について教えてください。クラウドとDXはどのように関連するのでしょうか。

 クラウドへの移行は、いくつかの理由でDXにおける重要なステップとなります。まず、レガシーをクラウドに移行することで運用費を減らせます。そしてクラウドへの移行によりスケールアップがしやすくなります。スケールアップによって、ビッグデータのアナリティクスも可能になります。

 AIやマシンラーニング、ビッグデータのアナリティクスなどを実行したいと場合、Excelではできません。私は以前、DXについて教わりたいという人に対して「DXがスタートするのはExcelがクラッシュした時だ」とよく伝えていました(笑)。AIやビッグデータを扱うためには大きな処理能力が必要になるので、クラウドに移行する必要が出てきます。FPTではDXの過程におけるデータへのクラウドへの移行と、それに関する様々な業務についてサポートしています。

――DXに欠かせない3つのポイントを示してもらいましたが、恐らく実際には順番に1つずつ取り組むのではなく、並行して進めることが必要なのかと思います。その点についてはいかがでしょうか。

 その通りです。少し前に英国でセミナーを聞いた際に使われていた表現が、非常に上手く状況を言い表したものだったのでご紹介します。「DXは、青虫がチョウになるのと同じようなことだ」というものです。例えば、古いテクノロジーを上手く活用してプロセスを早めた場合、それは青虫のまま早く動けるようになっただけであって、チョウになった訳ではありません。チョウになるためには、つまりビジネスオペレーションと人の両方を変革する必要があります。人材を訓練して、訓練した人材と協働し、デジタルテクノロジーを活用する。その際に、先ほどご紹介した3つのポイントを取り入れることが非常に大切です。これが全て達成できないと、ただ単に青虫が早く動けるようになっているだけで、羽化することはできていないのです。

――興味深い例えですね。エアバスのお話をうかがいましたが、他の業界で顧客企業のDXを支援した事例があれば教えてください。

 数か月前にある金融系のテクノロジーに取り組むスタートアップ企業をサポートしました。彼らはとても良いアイデアを持っているのですが、それをどうやって実行するか分からないということでした。我々はDXガレージの方法論を使ってend to endで彼らの新しいビジネスをサポートしました。具体的にはデザインシンキング、実装、ソリューションの設計、構築、テスト、運用、ビジネスの評価などを支援しました。

――日本企業の場合、既存のビジネスを前提とした改善、先ほどの例で言えば青虫としての動きを加速することは得意だと思うのですが、変化、変態については得意でないように思います。

 先ほどご紹介した我々の方法論の名前がFPTデジタルカイゼンであることからも、我々が日本企業に学んでいることはお分かりいただけるかと思いますし、我々と日本企業の相性の良さも感じていただけるかと思います。日本企業の強みと、FPTの強みが融合すれば、DXが進みやすく、日本企業の変容に助力できるのではと思います。

 我々は改善に加えて、テクノロジーやデータのサポート、ビジネスプロセスのトランスフォーメーション、消費者とどう接触していくべきかといった点についてもサポートできます。コロナ禍で急速に消費者の行動が変化してきていますし、これからもすごいスピードで変わり続けるでしょう。我々はそれに対応するためのトランスフォーメーションについても、サポートが可能です。共に変革の道を歩む機会を楽しみにしています。

フランク・ビニョン氏

DXアクセラレート2021、
デジタル活用の勘所

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