Vol.6データドリブン
「全業務をSAPでデジタル化して
データドリブン経営を目指す」
不動産大手のCEOが激白、いまDXに臨む理由
デジタル化で出遅れていた建設業界にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が及びつつある。好例がベトナムの大手不動産会社ファットダットだ。同社は経営トップの大号令の下、設計から施工、管理など全ての業務プロセスをSAP製品によって見える化し、デジタルデータによって意思決定するデータドリブン経営のシステム導入に挑んでいる。その狙いに迫る。
建設業界はたびたびDXの遅れが指摘される。日本建設業連合会(日建連)の「建設業ハンドブック2021」によると、建設業の付加価値労働生産性は全産業平均の6割程度に止まり、製造業と比べると半分ほどだという。こうした状況に陥っている主要因に、デジタル化の遅れがある。
建設業のDXの遅れは日本だけでなく、世界中で問題になっている。このような状況の中、オフショア開発をはじめとしたアウトソーシング事業で急成長を続けるベトナムIT最大手のFPTソフトウェアは、SAP製品による建設業のデジタル化を全面的にサポートしている。
「経営判断に必要な情報を、いつでもどこでも得られる」
ベトナムの大手不動産会社ファットダットは、FPTグループの支援を受けてDXに臨む代表的な企業だ。1994年に設立した同社は、ベトナム最大の都市ホーチミンと周辺の省のみならず、中部に位置するダナンなどを中心に、高級マンションの建築・販売を手掛けてる。日本の大手企業とも協業している。
CEO
ブィ・クァン・アイン・ヴー氏
ファットダットは「過去18年で時価総額を2倍に伸ばした」と、同社のブィ・クァン・アイン・ヴーCEO(最高経営責任者)は話す。「デジタル化によって成長ペースを引き上げ、今後5年間で時価総額をさらに2倍にしたい」と意気込む。
ヴーCEOが目指すのは、不動産業のバリューチェーン全体のデジタル化だ。具体的には土地の購入や建物の設計、建築、図面の作成と保管、原価管理、プロジェクトの進行管理、安全管理、検査、販売、サポートなど。マンションの建設と販売にかかわる全ての業務が対象だ。
「不動産業における全ての仕事をデジタルで管理できるようにしたい。そのような思いでFPTグループにシステム構築を発注した」。ヴーCEOはこのように話す。
特に期待が大きいのは、情報の見える化に関する部分だ。マンション建設などは投資額が大きいため、「情報の精度がわずかでも狂い、判断を誤ると、損失が大きく膨らんでしまう」(ヴーCEO)。デジタル化によって、正しい情報をいち早くつかめれば、経営判断の適正化につながる。
新システムが完成すると「いつでもどこでも、リアルタイムで仕事を見える化できるようになる。経営判断に必要な情報を、欲しい時に得られる」(ヴーCEO)。従来は経営判断に必要なレポートを出力するのに最大で2週間程度かかっていたという。
「会社経営の命運を握るプロジェクトだ。金に糸目を付けずに投資したい」とヴーCEOは意気込む。新システムの構築プロジェクトは2021年の春にスタートし、2023年中の終了を計画している。新システム導入後は、ビジネスパートナーや取引先の企業にも一部機能を提供。新システムの利用を促す考えだ。
成功したら、他企業の導入も支援したい
新システムにはSAP製品を全面採用する。ヴーCEOは「SAP導入は簡単ではない」と明かす。他の国を見ても「不動産業界での実績はそれほど多くないし、ある程度のローカライズも必要になる」からだ。必要な機能の追加開発などもFPTグループに依頼している。
「チャレンジングなプロジェクト」(ヴーCEO)に成功した際には、グループ内の他の会社にも横展開していきたい考えだ。SAP製品のインテグレーターとして実績豊富なFPTグループと共同でコンサルティングやシステム導入を支援し、新たなビジネスに育てる狙いだ。新システムを業界標準とすることで、ベトナムにおける不動産業界のルール整備や法制度対応などをリードしたいとの目論みもありそうだ。
かかった原価を基に将来計画を柔軟に変更する機能や、物件販売後のメンテナンスに関する機能、周辺システムとの連携といった機能も、将来的には追加を考えているという。特にシステム連携については「自社だけでなく、他社や行政機関などの社外システムと接続すれば、様々な業務や手続きを完全にオンライン化できる」(ヴーCEO)。
建設業界におけるDXの成否を握る注目プロジェクトが、ベトナムでいまも進行している。
DXアクセラレート2024、
デジタル活用の勘所





