日経 xTECH Special
DXアクセラレート2021、デジタル活用の勘所 DXアクセラレート2021、デジタル活用の勘所

Vol.5Salesforce

DXに欠かせないデータ統合
顧客接点の一元化はSalesforceで

DXを成功に導く上で、欠かせないのがデータ活用に関する取り組みだ。多くの企業では組織や部署ごとの部分最適が進み、データの形式がバラバラで、統合的に見ることができない。FPTはそのようなデータの問題を解決するため、SalesforceやMuleSoftのツールを積極的に活用している。FPTコンサルティングジャパンのコンサルティング・サービス・グループ マネージングディレクターである石原寛之氏に話を聞いた。

効率化ではなく、新たな収益源を作る

遠藤 章浩氏
FPTコンサルティングジャパン株式会社
コンサルティング・サービス・グループ
マネージングディレクター
石原 寛之氏

――緊急事態宣言が全面解除されたこのタイミングで、企業はDXにどのように向き合っていくべきでしょうか。

 緊急事態宣言が終わっても、企業がやるべきことは大きくは変わらないと考えています。やるべきこととは「コスト最適化」、「BCPおよびニューノーマル対応」、「DX」の3つです。コスト最適化はこれからも必要ですし、以前の働き方に戻ることはもうないでしょうからBCPやニューノーマル対応も続くはずです。こういった「守り」といえる取り組みに加え、コロナが終息すれば「攻め」にシフトする企業は増えるはずです。「攻め」に当たるDXは今後更に加速するでしょう。

――「守り」、「攻め」のいずれの例もデジタルを使った取り組みだと思います。その2つの違いはどこにあるのでしょうか。

 デジタイゼーションやデジタライゼーションと呼ばれる取り組みは、特定業務のIT化や、業務プロセスをITを使って最適化することを指します。いずれも効率化が目的であり、これを「守り」と呼んでいます。

 一方「攻め」に当たるのがDXで、これは新たな収益を上げる、トップラインをいかに伸ばしていくかの試みとなります。方法としては新規のビジネスを作ったり、既存ビジネス少しずらして新たな収益源にするといった色々な方法が考えられます。ただ現状では、「DXに取り組んでいる」という企業でも、効率化に止まっているケースがまだまだ多くあります。

――何故効率化に止まってしまうのでしょうか。

 要因はいくつもありますが、大きなものとしては、DXに対する理解が足りていないことと、深く取り組めていないことが挙げられます。

 理解という点でいうと、ある記事で見たのですが、7割くらいの企業がデジタル化とDXの違いを理解できていないと回答していました。理解できていないものを実行するのは難しいと思いますので、「既存業務を効率化できればいい」とお考えの企業が、まだかなりいらっしゃる印象です。

 取り組みの深さという点では、DXを進めている企業の多くが、目標としている最後のところまで取り組みを進められていないのでは、と感じています。その理由の一つとしてデータがあります。データドリブンという考え方自体は浸透してきましたが、実際にDXを進めてみると「部署ごとにデータのフォーマットが大きく異なっており、AIで分析できない」、「データが社内でサイロ化されていて統合して見ることができない」といった課題についてよくご相談を受けます。

 企業によっては、サイロ化したデータを人手によってスプレッドシートで加工・統合しているケースもあります。しかし、その方法では統合したデータを確認できるのがデータを抽出してから約1カ月後になってしまいます。またリアルタイムに近い形でデータを統合している企業であっても、それで満足してしまい、データから知見を得ることができる人材を配置できていないケースもあります。

肝は顧客接点に関わるデータ

――データに関する課題を解消すると、どういったメリットがあるのでしょうか。

 CRMのデータであれば、様々な顧客接点でのデータを統合することで、顧客満足度やロイヤリティの向上に繋げることができるようになります。販売した製品のメンテナンスにIoTのデータを使っているような場合は、CRMと組み合わせることで、営業や訪問の適切なタイミングが分かるようになるでしょう。効果的なデータ活用ができるかどうかは、しっかり仮説を持って取り組めるかにかかっていますが、様々な可能性があるのは確かです。

図:によるデータ収集のイメージ

――データを統合・連携するためには、どのような手段があるのでしょうか。

 データを連続的に扱うにはデータプラットフォームを作ることが重要になります。データの中でも、顧客接点に関わるデータは肝になるので、一元的に管理することが欠かせません。我々は、顧客データを容易に一元管理できるツールとしてSalesforceを積極的に活用しています。

――Salesforceで具体的にはどのようなデータを集め、活用していくのでしょうか。

 営業やコールセンター、ホームページ、ECサイト、店舗、MA(マーケティング・オートメーション)ツールなどのデータを一元的に集め部門を跨いで共有を行います。これによって例えば、同じお客に違う部署の営業が何度も訪問してしまう、といった初歩的なミスは防げるようになります。

 もう少し進んで、チャネル横断のデータを活用すれば、コールセンターに電話がかかってきた際に、その顧客が「ECサイトで買い物カゴに商品を入れたが、結局買わなかった」といったデータを把握した上で対応し、新たなチャネルに送客して商品購入の確度を上げる、といったようなことも可能になります。

図:データ統合の重要性

APIを3階層に分ける

――CRMだけでなく、基幹システムなどのデータも含めて全体を統合する場合にはどのようなアーキテクチャが適切なのでしょうか。

 既にデータソースは大量にあると思いますし、今後更に増えるでしょう。新しいデータが出た時に、全てのシステムと1対1で繋いでいたら開発コストもメンテナンスも大変ですし、何よりもスピード感に欠けます。スピード感を持ってデータを統合していくための手段として、マイクロサービス化したAPIを利用することは一つの有力な手段であると考えています。

 これを実現する上で効果的なソリューションをMuleSoftが提供しています。MuleSoftは2018年にSalesforceが買収した企業で、iPaaSと言われる分野のAPIマネジメントツールを提供しています。MuleSoftはAPIをバックエンドと繋ぐ「システム層」、ビジネスロジックを考える「プロセス層」、フロントシステムと繋がる「エクスペリエンス層」の3階層に分けるべき、と提唱しています。また各層を開発する人材を分けるべきとも言っていて、システム層はシステム部門が、プロセス層は事業部門が、エクスペリエンス層はサービスの開発者が担当すべき、としています。そうすることで、APIのシステム拡張性を高め、サービス追加や機能拡張においても、スピード感をもって対応することが可能になります。また、部門を跨いでイノベーションを起こしやすい文化の醸成にも役立ちます。

図:データ統合に必要なアーキテクチャイメージ

――SalesforceやMuleSoftを活用する際、FPTのベトナムのリソースは利用できるのでしょうか。

 ベトナムにSalesforceの技術者は約100人、MuleSoftの技術者も約100人、さらに日本側にも、上流とオフショアのブリッジを担当する人材がSalesforce、MuleSoftにそれぞれ約20人います。FPTとして、ベトナムのリソースを十分に活用できる環境を整えています。

図:FPRの強み(1)
図:FPRの強み(2)

――Salesforce、MuleSoftの事例はありますか。

 ある金融大手様は、コロナ禍で在宅勤務を実現するためにSalesforceを活用しました。以前は紙の申請が多く、出社しないと業務ができませんでしたが、これをすべて電子化し、プロセスを標準化しました。この事例ではSalesforceのPaaSを使い、アプリケーションをFPTがオフショアのリソースも活用して開発しました。

 MuleSoftについてはベトナムでは多くの事例はありますが、国内においても既に幾つかのお客様から引き合いはいただいており、具体的なご提案もさせていただいております。非常に可能性があるソリューションであると思っており、今後3年間で日本を代表するパートナーになれれば、と考えています。

図:FPTのMuleSoftへの取り組み
遠藤 章浩氏

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デジタル活用の勘所

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