Vol.7先端技術開発
最先端の自動運転ソフトを開発する
ベトナム最大手IT企業
FPTの最新動向を現地取材
ソフトウエア開発で急成長を続けるベトナム最大手IT企業のFPTソフトウェア(関連記事)。同社は、今後の更なる成長を見据え、主力であるアウトソーシングビジネスに加え、様々な先進技術を取り入れたソフトウエアや高度ITサービスの開発に力を注いでいる。
FPTで新IT製品群「akaSuite(アカスイート)」の責任者を務めるチャン・ダン・ホア氏はこの理由について次のように語る。「当社のアウトソーシングビジネスは好調だが、ビジネスの遂行には多くの人材が必要だ。今はビジネス規模の拡大に合わせて人員を増やすことができているが、将来的にはどこかで限界を迎える可能性がある」。
ホア氏は「アウトソーシングビジネスは当社の主力ビジネスであり、今後も注力し続ける」と話した。同時に、新ビジネスとして「企業のDXを支援するソフトやサービスの開発を進めている」と説明する。FPTにとっては、将来を見据えた事業変革の一環と位置付けられる。
新ビジネスと書いたが、その取り組みは既に始まっている。最たる例が2021年1月に設立した新組織「NextG」での取り組みだ。GはGenerationの略。NextGはその名の通り、次世代を切り拓くソフトウエアやサービスの開発に特化している。
NextGでは90人を超えるメンバーがベトナム最大の都市ホーチミン市近郊に拠点を構え、AIに関連した4分野で研究を進めている。4分野とは「1.CrystalSound(ノイズ除去のAIソリューション)」、「2.NextDrive DMS(ドライバーモニタリングシステム)」、「3.AMR(自律走行搬送ロボット)」、「4.AISight(店頭DX技術)」だ。NextGの責任者を務めるグエン・タン・ラム氏は「研究対象はいずれもDX(デジタル変革)支援で力を発揮する技術だ」と説明する。
AIで様々な業種を支援
4分野のうち1.CrystalSoundは音声データから雑音を除去するソフトだ。リアルタイムの処理が可能なため、サードパーティーのウェブ会議ソフトと併用ができる。PCにインストールするほか、スマートフォンでも利用可能だ。
ウェブ会議の際の雑音や背景音などを取り除き、必要な発言だけを届け合うことができる。CrystalSoundはベトナムのITアワード「Sao Khue賞」を受賞するなど、非常に高い評価を得ているという。
2.NextDrive DMSは、自動車の速度や位置、ブレーキの踏み込みといった情報と、カメラで撮影した車内・外の情報を組み合わせて、運転の安全性や効率性を高めるためのシステムだ。居眠りを検知したり、最適なルートや運転速度を提示することができる。オプションで、専用の装置を使ったアルコールテストも可能だ。
人件費や保険料、メンテナンスなどトータルコストの大幅な削減が期待できるため、物流会社やタクシー会社、自動車会社などをはじめ、事故削減といった社会的メリットにもつながる。
2021年にソフトの提供を開始し、2022年4月からはソフト、ハード、クラウドを組み合わせたソリューションとしての提供も始めた。
3.AMRは物流倉庫や製造ラインなどで、物資を自動で搬送するロボットだ。従来はAGV(無人搬送車)と呼ばれるタイプのものが広く使われてきたが、AGVはロボットの動作を誘導するための導線などの仕組みが必要であるのに対し、AMRはそれらが必要なく、より手軽に利用できるため「ここ5年ほどで広く普及している」(ラム氏)。
FPTが開発したAMRの特徴は、「正確な移動」、「最大秒速2メートルの移動速度」、「1トンまでを搬送できる耐荷重」の3点だという。FPTが開発しているのはAMRのソフト部分であるため、「ロボットについてはパートナーとの協業を模索している。日本のメーカーは技術力が高いので、ぜひ提携をしたい」(ラム氏)とラブコールを送る。
4.AISightは小売り向けのサービスだ。店舗に多くのメーカーの商品がある場合に、それぞれが正しい売り場に正しい量で配置されているかを効率的に検証できる。利用する際は、陳列棚にある商品をカメラでスキャンするだけで利用することが可能だ。小売店と、メーカーの営業担当者の両方が販売のターゲットだ。デジタル化が遅れ気味の「店頭」におけるDXを支える技術といえる。
約30の製品があるakaSuite
NextGとは別の取り組みとして、先に述べたように、FPTはakaSuiteと呼ぶ新IT製品群にも注力している。
akaSuiteはFPTが2015年から提供をはじめた新IT製品群であり、現在までラインナップの強化・拡充を続けている。責任者を務めるホア氏は「現在、akaSuiteには大小合わせて30の製品がある。ソフトビジネスを拡大したいという思いや、過去に30年間の活動で蓄積したノウハウを活かせるプラットフォームを作りたいという思いから、akaSuiteを作った」と話す。
akaSuiteは大きく、①特定の業界に特化したサービス、②多くの業界で共通して利用できるサービス、③名称にakaが付いていない新たな分野でのサービス、の3種類に分けられる。
業界特化型のサービスとしては、「akaMES(アカメス)」がある。akaMESは工場向けの生産管理システムだ。運用プロセスなどを標準化し、サプライヤーとの取引など全てのプロセスをデータによって確認・追跡できるようにすることで、生産品質の大幅な向上やコスト削減、意思決定の迅速化などが可能になるという。
幅広い業界で利用できるサービスとしては「akaBot(アカボット)」、「akaChain(アカチェイン)」がある。akaBotは手順が決まったパソコン作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)サービスだ。akaBotは世界中で利用が進んでおり、現在は約20か国、約1000社が利用しているという。
akaChainは、ブロックチェーンを活用するためのサービスで、オンラインで身元を確認する「eKYC(electronic Know Your Customer)」や、金融などで用いられる個人の信用スコアなどのデータ管理に適しているという。
akaSuiteのユニークな点は、それぞれのサービスの開発が社内ベンチャーのような体制で独立して進められていることだ。ビジネスが軌道に乗った後は、マネジメント・バイアウト(MBO)も視野に入れているという。ホア氏は「将来的な独立を勧めることで、社員はモチベーションを高く保って迅速に製品を開発する。ビジネスが成功し、MBOの際にFPTも株式を持てば両者が利益を得られる」と狙いを説明する。
先端技術をソフトやサービスの形で実装し、日本企業や社会のデジタル化とDXに貢献する――。このようなビジョンに基づき、FPTは、技術者の採用や育成といった人的リソースへの投資を加速させている。
現在、FPTソフトウェアの日本法人FPTジャパンホールディングスでは、東京本社をはじめ、北海道から沖縄に至る日本各地に事業所網を整備し、ベトナム本国に在籍する約9,000人の高度IT人財リソースを活用しながら、日本企業の最先端のソフトウエア開発を支えています。
DXアクセラレート2024、
デジタル活用の勘所

