DXアクセラレート2024、デジタル活用の勘所 DXアクセラレート2024、デジタル活用の勘所

Vol.18DX

DXに不可欠な「ツール」と「伴走者」とは?
ベトナムIT最大手FPTと独ソフト大手が明かす
成功の条件

ベトナムのIT最大手であるFPTソフトウェアが日本でのビジネス展開を開始してから約20年が経過した。最近は日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援に注力し、専門施設「DXガレージ」の開設や、ソフトウエア大手の独Software AGとのパートナーシップ締結など、様々な取り組みを進めている。日本企業がDXを進めるうえでどんなことが課題となっており、FPTとSoftware AGはその解決をどのように支援するのか。FPTソフトウェアでグローバルのDX責任者を務めるフランク・ビニョン氏と、同社のパートナーであるSoftware AG日本法人の小原洋社長に聞いた。(聞き手は大和田 尚孝=日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ所長)

――FPTが2005年に日本でビジネスを始めてから間もなく20年になります。この間、日本企業のシステム活用はどのように変わり、FPTはどう対応してきましたか。

フランク・ビニョン氏
FPTソフトウェア
デジタルトランスフォーメーション(DX)部門
グローバルディレクター
フランク・ビニョン氏

フランク:FPTジャパンにとって信じられないような素晴らしい期間だったと感じています。

 日本市場への参入当初はITアウトソーシングの提供からスタートしました。少なくない数の日本企業が、IT分野における人材不足という課題を抱えていたためです。日本市場でビジネスを進めるうえでの様々なハードルも感じましたが、当社が抱える豊富なITリソースを武器に、ITアウトソーシング事業に注力することで、それを乗り越えることができました。これまでITアウトソーシング事業が大きな成長エンジンとなっていたため、「FPTはアウトソーシングの会社だ」と捉えられている日本企業の方が多くいらっしゃいます。

 その後、我々は様々な最新のテクノロジーを身に付けると共に、日本市場のビジネストレンドを追い続けました。その結果、日本企業の課題を解決するソリューションを提供する力が身に付いたと自負しています。近年は、DXに取り組む日本企業が急激に増えたため、当社もそれをサポートする事業に力を入れてきました。

 例えばDXソリューションについては、コンサルティングから企画、構築、運用に至るまで、エンドツーエンドで提供しています。業種としては、航空や製造、建設など多様な分野でDXを支援しています。

 ビッグデータやAI(人工知能)などのテクノロジーを活用する機会も増えています。これは日本政府が提唱する、サイバー空間とフィジカル空間を融合させて経済発展などを目指す「Society 5.0」にも通じる流れだと感じています。

 より魅力的なDXソリューションを提供するために、ここ数年はパートナーシップの拡大に取り組んできました。その結果、力強いパートナーシップを得ることができた企業の1つがSoftware AGです。2024年は2社で協力して日本企業のDX支援に取り組んでいきます。

――日本企業がDXを進めるうえで、どのような課題があるとみていますか。

フランク:DXに苦戦している日本企業は少なくないと感じます。その原因の1つとして、オペレーションの「近代化」が進まないことが挙げられます。例えば、ExcelやSharepointを使って様々なデータや業務プロセスを管理していたり、他のシステムと連携できない従来型のアプリケーションを使っていたり、といった具合です。ファイル同士やシステム同士が自動で連携していないため、ヒューマンエラーの発生が避けられません。連携にも時間がかかります。これらの課題を、我々のパートナーシップによって解決したいと考えています 。

小原 洋氏
ソフトウェア・エー・ジー株式会社
日本法人社長
小原 洋氏

小原:多くの日本企業において、ITリソースが不足しています。それを補うために、SIer(システム開発会社)に開発を支援してもらうことは日本の文化であり、良い部分もあります。問題なのは、クライアント企業がSIerにシステム開発を丸投げし、イニシアティブを取ることができていないケースです。それではDXは成功しません。

 Software AGは日本企業のDXを支援するため、グローバルで広く利用されているデジタルプラットフォームを日本で提供しています。しかし、当社の製品が優れていたとしても、製品を導入するだけでDXが実現するわけではありません。クライアント企業が現状の課題を正しく認識してDX後の理想形を明確に設定し、製品を上手に活用できるようリードするパートナーの存在が不可欠です。Software AGのプロダクトやプラットフォームの機能を最大限に引き出すためには、FPTジャパンのように、クライアント企業に寄り添い伴走するSierの存在が重要になります。

図:自社が抱えるデジタル分野における課題について
FPTジャパンホールディングスが2023年12月に、売上高1,000億円以上の日本企業を対象に行ったアンケート調査結果より抜粋

DXガレージは大きな成果を出している

――Software AGが提供している、企業のDX支援のためのツールについて改めて概要を教えてください。

小原:3つの製品群があります。1つ目は、BPM(ビジネスプロセス管理)製品の「ARIS(アリス)」です。ARISはプロセスマイニングとプロセスモデリングを掛け合わせることによって、企業のDXに不可欠な高精度なビジネスプロセス管理を実現します。ログが有る業務、ログが無い業務を含めて現状の業務全体を可視化し、どこにボトルネックがあるかを見つけることができます。日本では、欧州SAPが提供するERP(統合基幹業務システム)を導入している企業が多くありますが、その新版へ移行するタイミングで業務プロセスの抜本的な改善を図るためにARISを活用するケースが多くあります。

 日本信号様もそのうちの1社です。当社のプロセスマイニングツールである「ARIS Process Mining」を使い、SAPの受注から請求まで一連の販売管理プロセスログを分析し、プロセスのオペレーションが遅延する原因の20%を、短期間で特定することに成功されました。少人数のITチームが数か月間で業務のボトルネックを可視化し、失っていた販売機会を大きく減らすことができたそうです。伊藤忠商事様では、「ARISプロセスモデリング」を有効に活用されています。グループ全体のDXを推進するために、第一段階として部門や関連会社ごとに異なる多様なビジネスプセロセスの可視化に着手されました。ARISの使いやすさから、2か月ほどで基幹となるプロセスアーキティクチャの15%を可視化されています。今後は総合商社ならではの広範囲にわたるビジネスにガバナンスを利かせたり、RPA(Robotic Process Automation)を用いた業務の効率性を高めたりするために、ARISを活用することを考えられています。

 2つ目はAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)インテグレーション製品の「webMethods(ウェブメソッド)」です。webMethodsはAPIを介したシステムやアプリケーションを連携するインテグレーションハブです。構築したAPIを管理するプラットフォームとしての機能も備えています。webMethodsのユーザーである日本の大手航空会社様は、社内外の50以上のシステムと連携するAPIインテグレーションのハブとして、15年以上にわたって安全運航に関わるミッションクリティカルな分野で利用されています。特に、多種多様なシステムやデータ連携をつかさどるプラットフォームとして、運用保守が容易であり、長期間安定的に稼働していることを高くご評価いただいています。

 3つ目はIoT(インターネット・オブ・シングズ)のプラットフォームである「Cumulocity (キュムロシティ)IoT」です。ユーザーである日本の大手建設機械メーカー様では、フォークリフトやショベルカーなどをリモート監視・制御するために使われています。Cumulocity IoTは、IoTに必要な機能を全て備えているため、自社開発にくらべて圧倒的に短期間で導入することができました。

 Cumulocity IoTは建設機械に関わるIoTだけでなく、工場内やインフラ設備、交通運輸など、多様なIoTを実現できます。PCやスマートフォンといった端末からクラウドまで、一気通貫でデータ連携できるプラットフォームであることも、Cumulocity IoTが世界で広く利用されている理由の一つです。

――FPTも様々なDX支援を提供しています。その1つに、2022年の開設から約1年が経過したDXガレージがありますが、どのような成果が上がっていますか。

 DXガレージは、当社独自のフレームワークを使って顧客企業のDXを支援するための施設です。フレームワークを活用して設計や構築、テスト、実行などを支援し、MVP(Minimum Viable Product)と呼ばれる必要最小限のプロダクトを作ります。MVPを基に、DXによるポジティブな効果があるか、課題は何なのかを検証し、数か月で素早くサイクルを回します。これによって、DXがいかにインパクトがあるものかを顧客企業に提示します。

 同じく簡易的にサービスやプロダクトを開発する手法としてPoC(Proof of Concept)があります。PoCは、最初の段階でMVPよりも洗練されたサービスやプロダクトを作ることができる一方で、市場投入までに多くの時間がかかるという欠点があります。多くの日本企業が市場投入のスピードを高めることを望んでいることからすると、MVPの方がよりニーズに合致していると考えています。

 DXガレージのフレームワークは、どの業界に対しても適応可能です。ある医療・ヘルスケア業界の企業様は、DXガレージを利用して高齢者ケアのための情報をまとめる情報基盤を構築されました。IoTデバイスなどを使い、高齢者の行動を可視化して、介護の作業を指示するなどしています。

 ある建設会社様にも、DXガレージをお使いいただきました。従来は 米マイクロソフトの情報共有ツール「SharePoint」などを使って管理していた大量の社内情報を、新しい基盤に統合し、より活用しやすくしました。

 今後、これらの事例に類似のケースにおいて、プロジェクトを迅速に進め、高い成果を上げるうえで、Software AGのプロダクトやプラットフォームが非常に役立つと考えています。

左から二番目:小原 洋氏、左から三番目:フランク・ビニョン氏

グローバルに協力関係を広げていく

――FPTとSoftware AGがパートナーシップによって目指すことを改めて教えてください。

小原:以前から、DXガレージのような形でお客様を支援するための取り組みが必要だと我々も考えていました。最初から本番運用を想定してシステムを作るのではなく、PoCやMVPなどから始めて効果を検証することが大切です。当社としても、そういった形で利用してもらいやすいようなライセンス体系を設定していますし、素早く導入できるよう、オンプレミスに加えてSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)での提供もしています。

 クライアント企業のDX課題に対して、Software AGのプロダクトやプラットフォームをソリューションとして提供するには、FPTのようなグローバルで多くの知見を持っている優れたパートナーの協力が不可欠です。デリバリーやコンサルティング、運用など、FPTのケイパビリティによってSoftware AGの製品価値が高まります。2社で協力し、お客様のDXプロジェクトを一緒にご支援していけたらと考えています。

フランク:我々2社は、非常に似たDNAを持っていると感じています。ですから、一緒に仕事をすることで成長し、イノベーションを起こすことができると信じています。ただプロジェクトを一緒に進めるだけでなく、エンドツーエンドのコラボレーション、例えば今日のように一緒に情報発信にも取り組んでいきたいと考えています。

 当社がSoftware AGのプロダクトを深く理解することもとても大切になりますので、プロダクトを学習する機会を頻繁に設定していただいています。お客様の最新のニーズを踏まえながら、BPMなどについての知見を深めたいと考えています。

 もう1つ重要なのは、この協力関係はグローバルでの展開を見据えたものであるということです。日本で力強い関係性を構築できていると思いますので、これをどのようにグローバルに広げていくか、一緒に考えていきたいと思っています。

図:FPTソフトウェア 売上高の推移
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