Vol.12DX
DXのアイデアをカタチに変える
FPTが六本木に開設した
「DXガレージ」の狙いとは
オフショア開発を強みにITアウトソーシング事業で成長を続けるベトナムIT最大手のFPTソフトウェア。日本企業からコスト競争力や技術力、人材動員力などが評価され、最近はデジタルトランスフォーメーション(DX)のパートナーとして選ばれる機会が増えている。
FPTソフトウェアの日本法人FPTジャパンホールディングスは2022年8月、東京・六本木に新施設「DXガレージ」を開設した。新施設は日本企業のDXをどのように支援できるのか。同社のド・ヴァン・カック代表取締役社長と、FPTソフトウェアでグローバルのDX責任者を務めるフランク・ビニョン氏に聞いた。(聞き手は大和田 尚孝=日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ所長)
――新施設の概要と、2022年のこのタイミングで新設した狙いを教えてください。
フランク:DXガレージは日本企業のDXを支援するための施設です。私たちがお客様に寄り添い、お客様と一緒になって、DXを推し進めるための拠点とも言えます。
特別なハードウエアが置いてあるわけではありません。最新の技術やサービスのデモンストレーションを体験する場でもありません。DXガレージは、DXに向けた「アイデア」のデモンストレーションのための施設です。
――アイデアを出すのは簡単ではないと思いますが。
フランク:もちろんです。なので、アイデアを生むための仕掛けを用意しています。具体的にはデザイン思考やオープンシンキング、「デジタル改善®」1といった、アイデア創出のプラットフォームを提供します。FPTソフトウェアが開発したメソドロジーに基づき、様々な方法でお客様に寄り添い、ご支援します。
室内空間についても工夫を凝らしています。様々なアイデアが湧きやすいような、リラックスできる空間を作っています。内装は欧米のスタイルを基本に、アジアのテイストを取り入れるなど、イノベーティブな空間になるようにしています。
カック:DXガレージを六本木に設けたのも、新しいアイデアを出すための工夫のひとつです。イノベーティブな空間を作るには、同じくイノベーティブな街である六本木が最適だと考えました。実際に施設を開設し、今この場所でインタビューを受けてみて、その選択は正しかったと感じています。
タイミングについてのご質問にもお答えします。正直にお話すれば、もっと早く開設するつもりで動いていました。それが新型コロナウイルスの影響で難しくなり、今年になりました。
代表取締役社長
ド・ヴァン・カック氏
ただ、開設時期がずれたことは、結果としてプラスに働いたと感じています。弊社にDXを支援するための十分なリソースが育ちました。米国やシンガポールでDXの成功事例を積み上げることもできました。他国で得たノウハウを日本に横展開する準備ができたと言えます。
当社がDXのアイデアを創出する段階からご支援できることを知ってもらい、「上流からエンド・ツー・エンドでサービスを提供できるパートナー」というイメージを持っていただきたい、という期待もあります。
日本市場に進出して17年になりますが、これまでは我々に対し「オフショアによって開発工程を担うITベンダー」というイメージをお持ちの方が多かったと思います。もちろんオフショア開発の品質やコスト競争力は今でも当社の強みであることに間違いありません。ただ我々は現在、様々な最新技術に投資をしており、上流から幅広くサービスをご提供できる体制を整えています。DXガレージの新設を機に、新たなイメージを醸成できたら、と考えています。
――FPTソフトウェアは全世界にDXガレージを新設する計画を持ち、国外拠点としては日本が第一号だと聞きました。なぜ日本を選んだのですか。
カック:これまで 400社以上の日本企業とお付き合いをし、多くのDXプロジェクトの成功に貢献してきました。一方で、まだお付き合いがない企業も、DXに関する高い関心をお持ちであることが分かっています。そのため日本は、まだまだ非常に大きなポテンシャルがある市場だと考えています。
フランク:日本はFPTソフトウェアにとって、最大の国外市場です。そのためFPTのサービスを幅広く提供していますし、エンド・ツー・エンドのサービスにも注力しています。DXガレージを開設したのは、最も大きな市場をさらに拡大したいとの思いがあります。
日本はベトナムと同じアジアの国で、文化的に近い部分があり、欧州などに負けない成長レベルにあります。そういった点も、FPTソフトウェアが日本に魅力を感じているところです。
実証実験ではなく、「価値」にこだわる
――DXガレージで提供するサービス内容について教えてください。
フランク:FPTソフトウェアが確立した様々なメソドロジーを使い、ワークショップを通して、お客様と戦略や実行のプランを一緒に考えます。
具体的な手順としては、まずDXに臨む上で、お客様が抱える課題をヒアリングします。次に、ワークショップを行い、ヒアリングした課題が本当に最大の課題なのかを確認し、問題点を明確にします。その後もう一度ワークショップを行い、明確化した問題の解決方法を探り、DXの全体の図を描きます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)部門
グローバルディレクター
兼FPTジャパンホールディングス
副社長
最高デジタル・テクノロジー責任者(CDTO)
フランク・ビニョン氏
全体の図が出来上がったら、MVP(Minimum Viable Product)を作ります。MPVとは、お客様に価値を提供する最小限のプロダクト(ソフトウエア群)のことです。
よくPoC(Proof of Concept)と何が違うのか質問されるのですが、PoCはあくまで検証のためのもので、実際のビジネスで使うものではありません。そのため「PoCは上手く行ったが、実際のビジネスには応用できなかった」といったケースが多くあります。
MVPは、最小限のプロダクトでありながら、実際のビジネスで使うためのものです。MVPで成功すれば、それを拡張して様々な場面に適応していくことが容易です。最初の段階からビジネスにバリューをもたらすのがMVPなのです。
カック:ワークショップによって現状のデータ連携における課題や、さらなる連携の必要性が見えてくるケースも多くあります。
DXを進める上で一番重要なのがデータです。当社はデータ分析やデータ管理のプラットフォーム、ローコード開発、インテリジェントオートメーションなど、データの面からDXを支援する様々なソリューションをご用意しています。それらを効果的に活用するためには、データを「データレイク」と呼ぶ場所にまとめ、クレンジングなどの処理をして連携できる状態にしておく必要があります。
様々な調査結果を見ると、多くの日本企業は部署ごとにデータをばらばらに持っているケースが多いようです。これではDXが進められません。このあたりの課題についても、解決策を一緒に考え、お客様に寄り添って課題解決をサポートしていきたいと思います。
――DXガレージで手応えをつかんだ顧客企業が本格的なサービス提供やシステム開発への拡大を望んだ場合、どのような流れで移行するのでしょうか。
フランク:プロジェクトにおける全てのプロセスについて、全体像を描いた上でMVPを作り、「本当にDXが進められそうだ」と感じていただいた段階で、実際の開発に移っていきます。ここはスムーズに移行できます。なぜなら、DXガレージでの取り組みは実証実験ではなく、実際にビジネスに活用できるものだからです。
――DXガレージの料金体系について教えてください。
カック:最初のミーティングは無料です。このミーティングでお互いを知り、課題に関してヒアリングして分析します。2回目以降のミーティングは、時間単位や日単位、稼働する人数に応じた人日単位など、様々な形で設定しています。これくらいの規模になりそうなので、この程度の費用がかかります、といった具合に、明示して合意を得ながら、一歩ずつ進めていきます。
顧客を理解するには空間の共有が必要
――在宅勤務が浸透し、今やオンラインでかなりの仕事がこなせるようになっています。そうしたなかで、あえてリアルの拠点を設け、顧客と対面で作業する理由はどこにありますか。
フランク:不確実なことや課題について話し合うには、やはりオンラインよりもオフラインの方が議論が進みやすいからです。同じ場所に集まって互いに顔を見ながら意見を交わし、ホワイトボードを使って分かりやすく図示して説明する、といったコミュニケーションには、多くのメリットがあります。将来的にメタバースの技術が発展すれば同様のことがオンラインで可能になるかもしれませんが、今はまだ差があります。
カック:同じ空間にいると、お客様のことがより深く理解できるようになります。我々はサプライヤーではなく、パートナーとしてお客様に寄り添い、お客様のビジネスを支援していきたいと考えています。お客様からもパートナーとして認識していただきたいと思っています。そのためには空間の共有が一番の近道なのです。
[1] 「デジタル改善(Digital Kaizen)」は、FPTジャパンホールディングスの登録商標(第6237883号)です
FPT DX Garage™
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DXアクセラレート2024、
デジタル活用の勘所

