DXアクセラレート2024、デジタル活用の勘所 DXアクセラレート2024、デジタル活用の勘所

Vol.14DX

DXコンサル1000人体制へ
ベトナムIT最大手FPTが
日本企業のDX支援を加速

 オフショア開発を強みにITアウトソーシング事業で成長を続けるベトナムIT最大手のFPTソフトウェア。同社の日本法人であるFPTジャパンホールディングス(FPTジャパン)は2025年をめどに、DXコンサル1000人体制確立を目指す。具体的には、日本のコンサルティング会社エル・ティー・エス(LTS)との合弁で2019年7月に新設したFPTコンサルティングジャパン(FCJ)での育成と採用を加速させる。

 FCJがこれまでに挙げた成果や、ここにきて両社が関係を強化する理由、今後の展望などについて、FPTソフトウェアの親会社であるFPTコーポレーションのチュオン・ザー・ビン会長と、LTSの樺島弘明代表取締役社長に聞いた。(聞き手は大和田 尚孝=日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ所長)

――FPTとLTSのパートナーシップの概要を改めて教えてください。

ビン:2019年7月にFPTジャパンとLTSで合弁会社FCJを設立しました。狙いは、コンサルティング機能をグループ内に持ち、上流からシステム開発・運用までエンド・ツー・エンドでサービスを提供できるようにすることでした。設立からの3年間で、双方のケイパビリティを融合させながら、着実に成果を収めることができたため、協業をより強固なものにする目的で、2022年10月にFPTジャパンを介してLTSに直接出資しました。

樺島:日本では、IT人材の不足に加えて、企業からみるとDX(デジタルトランスフォーメーション)のパートナーとして頼れるIT企業が非常に少ないという課題がありました。既存の国内IT企業、外資系コンサル会社、インドなど国外のオフショアを見渡しても、企業の要望に的確かつ広範囲に応えられるところはそれほどありません。FPTやLTS単体でもそれは難しい面があったのですが、我々が組んで互いの強みを持ち寄れば可能だろうと考えました。そこで、まずはコンサルティング会社を作り、次にエンド・ツー・エンドのサービスを提供するパートナーとして役割を果たせるようになることを目指しました。

――FPTジャパンによるLTSへの出資比率はどれくらいなのでしょうか。

ビン:約5パーセントです。これまでは合弁という形で進めてきましたが、より密接な協業を図るためにLTSと資本業務提携をしました。

――互いをパートナーに選んだ理由を教えてください。

チュオン・ザー・ビン氏
FPTコーポレーション
取締役会長
チュオン・ザー・ビン氏

ビン:コンサル機能をグループ内に持ちたいと考えた際、いろいろな企業にご相談しました。その中でもLTSが最も建設的な議論をすることができたことに加え、経営陣と社員が若いという共通点があり、当社の企業文化と似ているところがありました。合弁を作ってからも、非常に積極的に経営に参画していただけました。LTSをパートナーとして選択したことは非常に良かったと考えています。

樺島:協業したり合弁会社を作ったりする場合、相性のいい相手と同じ夢を追いかけられるかが重要だと考えています。FPTは日本企業のパートナーになること、LTSはグローバルでブランド力を持つことが提携の主な理由であり、「IT業界でブランド力を高めたい」と望んでいるという点で夢が共通していました。

 ビン会長と会食をした時にも、同じ考えを持っていると強く感じました。ビン会長は「FPTの強みは私がいることであり、優れた役員、社員がいること。個人個人がアセットである」とお話されていて、それはLTSも全く同じです。その上で、優れたチームを作って即断即決で仕事をすることが重要だ、という点でも共通していました。

 そういったやり取りを重ね、「10年くらいのスパンで協業しましょう。まずは合弁会社を作りましょう」という流れになりました。

――FPTのITビジネスはとてもスピードが早いので、日本のIT企業の仕事は遅く見えるのではないかと思います。LTSのように、FPTのスピードに付いていくことができる企業は、なかなか無かったのではないでしょうか。

ビン:そうですね。FPTは激しく変化する社会への迅速な対応を強みに、年2桁以上の成長を目指しています。LTSにはそういったスピード感も共感していただけたため、協業がスムーズに進んだと感じます。

樺島:LTSは売上高が100億円程度の成長途上にある会社なので、年20~30%の成長を目指すのは当然です。しかしFPTは、我々よりはるかに大きな規模で同様のことを目指しているので、とても驚きました。このスピード感を日本にも持ち込めたことが、コロナ禍で採用が困難な時期だったにも関わらず、FCJが3年という短期間で230人の規模まで成長できた要因でした。

10億円規模の案件獲得にも成功している

樺島 弘明氏
株式会社エル・ティー・エス
代表取締役社長CEO
樺島 弘明氏

――FCJにおけるビジネス面での具体的な成果を教えてください。

樺島: SAP関連ビジネスやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)など主要なサービスラインのトップに、大手コンサル出身者を採用することができました。売上高はこの3年間で3倍に増加しています。エンド・ツー・エンドのサービスを提供した案件も複数ありますし、小売企業や製造業とは10億円規模の案件をスタートしています。

――FPTグループとしてはFCJを設立したことによる成果をどのように感じていますか。

ビン:本当の意味でのエンド・ツー・エンドのサービスを提供できるようになり、多くのメリットを享受することができました。例えば、良いお客様が付いてくれたことです。樺島さんからもお話があったように、小売企業や製造業などで一定の規模の案件を受注できています。

 コンサルフェーズからプロジェクトに参画できるようになったことで、ERP(統合基幹業務システム)向けテンプレート開発や周辺システムの高速開発、アジアなど海外へのロールアウト支援も同時に受注できるようになったことは大きな変化です。

樺島:「本当の意味」という部分がキーワードだと思っています。特定のソリューションやテクノロジーを提供しているIT企業は多いですが、本当に成果を出すためには業務改革や海外拠点へのシステム導入などもサポートする必要があります。それをできる企業がほとんどいない中で、我々は本当の意味でのエンド・ツー・エンドのサービスを提供できているという自負があります。

ビン:私は3月にベトナムから来日し、主要顧客を中心に20数社を訪問させていただきました。コロナ前に伺った時は、DXについて具体的な計画が存在していないか、それほど具体化していない企業もありましたが、今は各社とも計画がかなり具体化しています。

 一方で、それを実行するための人材が足りないという共通の悩みを抱えていることも分かりました。SAPのERPや、SalesforceのCRM(顧客関係管理)のような業界標準のソフトウェアを導入するニーズは非常に大きいのですが、それらのグローバル展開に向けた人材不足に多くの企業が悩んでいらっしゃいます。そういった案件についてご相談いただく機会が多くありました。

樺島:我々が手を挙げなければ、人的リソースが足りずにプロジェクトそのものが実行できなかった、という案件があったのは事実です。ですから動員力と、案件を成功させるスキルについてはそれなりにご評価いただけるようになってきたと感じます。

ビン:DXは顧客企業の社運を賭けるといっても過言ではないほど、重要な事業だと思います。そうしたプロジェクトに関わることができるようになって、とても光栄に思うのと同時に、大きな責任を感じています。

エンジニア5万人を見越し、FCJも増員する

――コンサルティング機能のさらなる強化に向けた今後の計画を教えてください。

ビン:2025年までの3年間で、FCJのコンサルタントを1000人規模に増やすことを目指しています。DXやERP、CRM導入案件などが増えており、それらの導入が終わると、次は蓄積されたデータの分析が必要になります。そういった状況に備えるために、我々はより多くのコンサルタントリソースを確保し、データの分析を通じてお客様の経営課題の解決に貢献していきたいと考えています。それによって顧客企業の海外拠点やグループ会社などの新たなビジネス機会の拡大につながるはずです。ERPやCRMの導入で終わりではなく、サプライチェーン全体や上流のエコシステム構築といった領域にも貢献していきたいと考えています。

樺島:FCJの拡大と同時に、LTSも大きくしていくことが大切だと考えています。LTSは現在500人で、3年後には1000人にする計画です。FPTも規模の拡大を続けています。FPT、LTS、FCJが成長することで、お客様により優れたサービスをご提供できるはずです。

――FCJを1000人にするためにはかなりの増員が必要ですね。

樺島:FPTからの異動、キャリア採用、新卒採用の3つを考えています。1000という数字は、FPTが掲げているエンジニアを5万人に増員する計画と関係しています。その数のエンジニアを生かすには1000人くらいのコンサルタントが必要であろうということで設定されています。

――FPTが技術者を増やすペースに合わせて、コンサルタントも増やしていく必要があるということですね。

ビン:その通りです。ベトナムではFPT大学などを中心に、さまざまな方法でエンジニアの育成に力を入れています。要員についても急ピッチで増加させています。

――コンサルティングについて、今後どんな領域や分野を強化していきますか。

ビン:3つあります。1つ目は基幹システムのモダナイゼーションの需要に応えることです。多くの企業がレガシーシステムをクラウドに移行したいとお考えですが、大規模で難易度が高いことに加え、ドキュメントが存在しない、システムを理解した社員が既に定年退職してしまい組織にナレッジが継承されていないなどの問題を抱えています。そういったプロジェクトにおいては、我々が開発したAI(人工知能)による自動移行サービスをご提案していきたいと考えています。

 2つ目は、SAP導入のグローバル展開の支援です。多くの日本企業が日本国内でのSAP導入を終えていますが、今後はアジアを含めたグローバルに導入を拡大していこうとする計画を共有いただきます。我々も是非そのご支援ができたらと考えています。

 3つ目はDXによって、「データのエコシステム」と呼べるような世界を共創していくことです。今後多様なデータソースを組み合わせ、データの利活用による新たな付加価値創出の重要性が高まることを考えれば、データが1つの企業に閉じた状態では、ビジネスをスピーディーかつ効果的にスケールさせることは難しくなるはずです。例えば自動車メーカーが製造業からサービス業に転換してきているように、データを使って他の企業とつながり、新たなビジネスを創出することが重要になります。こうした動きはヘルスケアや小売業などにも広がるでしょう。コンサルに次ぐビジネスとして、ビジネスの共創支援を手掛けられたらと考えています。

樺島:FPTはベトナムを中心に小売りなどの実業も展開されていらっしゃいますので、クライアントの課題や、エコシステムを作る上で大切なことなどもよく理解されているのではないかと思います。エコシステムという観点で言えば、今回LTSに出資していただいたことも、「自社だけで顧客企業を支えるのではなく、エコシステムで支えるのだ」というお考えの表れだと思っています。FPTやLTS、クライアントが個社では実現できないことを、つながることによって実現できれば、と考えています。

左からチュオン・ザー・ビン氏、樺島 弘明氏
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