Vol.16DX
「日本企業のDXと海外進出を共に支援」
ベトナムIT最大手FPTと独ソフト大手がタッグ
オフショア開発を強みにITアウトソーシング事業で成長を続けるベトナムIT最大手のFPTソフトウェア。日本企業からコスト競争力や技術力、人材動員力などが評価され、近年はデジタルトランスフォーメーション(DX)を手掛ける機会も増えている。
同社の日本法人であるFPTジャパンホールディングスは2023年1月、ソフトウエア大手の独Software AGとパートナーシップを締結した。BPM(ビジネスプロセス管理)などSoftware AGの各製品を販売する形で、日本企業のDXを両社で支援する。パートナーシップの狙いや今後の展開について、FPTソフトウェアでグローバルのDX責任者を務めるフランク・ビニョン氏と、Software AG日本法人の小原洋社長に聞いた。(聞き手は大和田 尚孝=日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ所長)
デジタルトランスフォーメーション(DX)部門
グローバルディレクター
フランク・ビニョン氏
――FPTとSoftware AGによるパートナーシップの概要と、両社が組んだ理由を教えてください。
フランク:Software AGの方と知り合ったのは、2年前に海外で開かれたテクノロジー系のイベントでした。その時にいろいろとお話しをして、Software AGにはIoT(インターネット・オブ・シングズ)で集めたデータを扱うためのデータ管理プラットフォームなど、多数の優れたソフトウエアがあることを知りました。この出会いをきっかけに、パートナーシップを築きましょうという流れになりました。
パートナーシップの内容は、Software AGのソフトウエアをFPTが販売することです。ただし、単にSoftware AGのソフトウエアを代理店として販売するのではなく、FPTのコンサルティングやシステム構築などと組み合わせて提供することにより、企業のDX推進を支援します。提携の対象エリアは全世界に及びますが、日本を最も注力するマーケットとしています。
日本市場に関しては、2022年末ごろから両社で話を進めてきました。グローバル展開を積極的に図る日本企業においては、DXで(組織や部門別に分かれている)業務プロセスを統合したいというニーズが多くあります。そのため、今回のパートナーシップによって顧客の期待に応えやすくなります。
小原:2023年に入ってすぐ、両社でパートナーとしての具体的な活動を始めました。我々としても、ちょうど日本における新しい販売パートナーを増やしたいと考えていたタイミングでした。
当社のコアとなる製品分野はBPM、IoT、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)インテグレーションの3つであり、これらが売り上げの8割を占めています。この3分野の製品を、日本のグローバル企業に提供していきたいと考えていたため、FPTは我々のパートナーとして最適でした。FPTはグローバルでサービス提供やシステム構築、コンサルティング、運用などを全方位的に提供できるリソースやスキルを持っており、同時に日本独自の慣習や高い要求水準に応えることもできるためです。
従来のパートナーシップは主に日本でビジネスを展開しているシステムインテグレーターが多く、その重要性は変わりませんが、今後のグローバルな展開を考えるとFPTとの新たな提携は大きな意味があります。
フランク:当社は従来、主にシステム開発や運用といったITアウトソーシングを中心に提供していましたが、ここ数年は顧客の課題解決やDXに一段とフォーカスした方向に進んできています。ご紹介いただいたようにコンサルから運用・保守、新規事業の創出支援まで多岐に渡るサービスを展開していることが特徴です。
日本はFPTにとって大きなマーケットであり、全世界の売上高の35%を占めています。日本法人で2500人の従業員が働いており、オフショアで活用可能な人材がグローバルで約3万人在籍しています。世界に71の拠点があるので、グローバルに進出している日本企業を様々な地域でサポートしています。開発センターも世界に44カ所あり、沖縄、福岡、栃木など日本のニアショア拠点からは日本企業にITサービスを提供しています。
Software AGの製品の力を、FPTが引き出す
日本法人社長
小原 洋氏
――Software AGの3つのコア製品について教えてください。まずBPMからお願いします。
小原:BPMは「ARIS」という製品を提供しています。2022年に発売から30周年を迎えたBPM分野のパイオニアと言える製品で、世界で1万社、1000万ユーザーが利用しています。
BPMには大きく2つの重要な機能があります。ビジネスプロセスの現状を示すプロセスマイニング機能と、目指すべきビジネスプロセスを示すプロセスモデリング機能です。この2つの機能を組み合わせることで、ビジネスプロセスの現状と目指すべき姿を重ねるオーバーレイ機能や潜在的なビジネスリスクを洗い出すリスクアンドコンプライアンス機能など、近年企業からのニーズが増している多数の機能を実現しています。
ARISはBPMのための豊富な機能を備えていますが、その一方でARISを導入しさえすればBPMやDXが進む、といったわけではありません。その有効性を高めるためには、ビジネスプロセスのデータを的確に分析するためのコンサルティングが重要になります。今回パートナーシップを結んだFPTは、ARISの能力を余すところなく引き出すコンサルティングのリソースを備えています。
――IoT、APIインテグレーションについてもそれぞれ特徴を教えてください。
小原:IoT分野では「Cumulocity IoT プラットフォーム」と呼ぶ製品があります。これはIoTデータを容易に接続・管理・分析できるプラットフォームです。
IoTにおいて、我々が特に注目しているマーケットが「スマート・イクイップメント・マニファクチャ」と呼ばれる分野です。スマート・イクイップメント・マニファクチャは、フォークリフトやエレベーター、風力発電装置などの産業機器をリモート接続し、AIの予測などを組み合わせることで、よりインテリジェントにコントロールすることを目指します。
国際競争力をもつ日本の製造業各社では、スマート・イクイップメント・マニファクチャを実現するためのIoTに対するニーズは高いと考えています。そのニーズに的確に応えるためには、IoTプロジェクト全体を上流から下流までトータルでサポートする能力が必要になります。
FPTは、Cumulocity IoT プラットフォームを導入する際に必要となる様々なサポートを提供するスキルやリソースを持っています。同社はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイにおいて、高度な電子政府を実現するためのプロジェクト「デジタルドバイ」を、Software AGのIoTプラットフォームを用いて成功させた実績があり、経験も豊富です。
APIインテグレーション分野では「webMethods」という製品を提供しています。webMethodsは日本市場での長年に渡る提供実績があり、APIを介したシステムやアプリケーションの連携ハブとして使われています。近年はクラウドなどテクノロジーの発展にともなってさらに進化しています。
webMethodsの進化のポイントは大きく2つあります。1つ目はiPaaS(Integration Platform as a Service)への進化です。iPaaSとは、オンプレミスのシステムと複数のクラウドサービスを連携する際に、データを一元的に管理するプラットフォームを指します。webMethodsは、各企業が用いるクラウドとオンプレミスのシステムをシームレスにつなげるハイブリッド型iPaaSとして機能します。
2つ目は、レガシーマイグレーションへの適応です。「2025年の崖」という言葉によって、レガシーシステムを継続利用することのリスクが改めて注目されて以降、日本企業のレガシーマイグレーションに対するニーズは高まっています。webMethodsを介して周辺システムやデータ連携を図ることで、レガシーシステムから移行する際のトラブルを減らすことが可能です。
いずれのケースにおいても、webMethodsを導入する際は、既存のシステムやデータについて深く理解することや、外部のサービスとどのように接続するかといったことに対する高い知見が必要であるため、FPTのサポートに期待しています。
――FPTとしてはBPM、IoT、APIインテグレーションを展開する上で、どのような強みを発揮できるとお考えですか。
フランク:Software AGの3製品は、日本企業のDXのニーズに応えられる製品です。小原社長にお話いただいた通り、日本には構築から時間が経ってサイロ化したシステムが数多くあり、プロセスがドキュメント化されていないことも珍しくありません。
そういったシステムに対し、ARISでプロセスモデリングやプロセスマイニングを行えば、ボトルネックとなっているプロセスを特定することができますし、状況に合わせて適切に再定義することが可能です。さらに、サイロ化したシステムをAPIインテグレーションでつないだり、最新のIoTの産業機器を基幹システムにつないだりすることもできます。BPMによってDXを進めるだけでなく、そこにIoTやAPIインテグレーションを絡ませることで企業の大きな変革をサポートできます。
日系グローバル企業のサポートから始める
――システムのサイロ化が目立つ、というお話がありましたが、それ以外にもこのタイミングで日本でのパートナーシップを結んでビジネスを展開する理由がありますか。
小原:10年以上前に、内部統制を目的にしたBPMのブームがありました。現在は当時よりもっと多くの規制があるため、ARISを使うことによって得られる効果は更に高まっています。事業会社による不正が社会で問題になることがありますが、そういった際にはARISを使って業務プロセスの健全性を担保したいと考える企業からの引き合いが増えます。
加えて、APIインテグレーションの領域では、多彩なアプリケーションやデバイスの連携をwebMethodsで実現し、新しい発想のビジネスを創り上げるニーズが高まっています。webMethodsはノーコード・ローコードでアプリケーションを生成する機能を備えているので、経験豊かなエンジニアでなくても、高度で複雑なAPI連携を実現できます。エンジニア不足に悩む日本企業は多くありますが、そういった企業からの依頼も増えています。
このような多様なニーズに応えるために、FPTと提携することが必要だと考えました。
フランク:FPTは従来、技術にフォーカスした会社でしたが、数年前から顧客とのエンゲージメントをより高める方向に事業形態を変えてきました。こうした流れがある中で、DXのため優れたプロダクトを持つパートナーが必要になったことが、この時期に提携した主な理由です。
加えて、両者とも日本市場をまず第一に開拓したいという考えが一致していたことも、提携の大きな理由になります。Software AGはプロダクトの設計についても一緒に検討していく考えを示してくれたので、我々が協力することで日本企業に最適なソリューションを提供できます。
――協業による今後のビジネス拡大計画を教えてください。
小原:まずはグローバルビジネスを展開している日本企業に対するアプローチを共に進めます。その際には、日本国内でのサポートはもちろん、世界各国の拠点に対するサポートも重要になります。FPTが持つ世界各国のサポート拠点を通じたデリバリ・サポート体制によって、日本企業が求める高度なサービスが提供されることを期待しています。
日本国内におけるFPTの顧客に対して、ソリューション力を高める共同提案にも注力します。両社の強みを発揮できるターゲットをしっかりと定めて、一緒に営業活動をしていきます。新たな需要を作り出すために、ウェビナーやイベント開催などマーケティング活動にも一緒に取り組みます。
フランク:当社は現在、Software AGのソリューションを理解するために、60~80人規模の特に優秀なエンジニアを集めて専門知識を蓄積するCoE(センター・オブ・エクセレンス)の構築を進めています。日本市場専門のBPMチームも既に組織しており、ビジネスの規模拡大に伴って増員していく考えです。
日本企業は、特に製造業が沢山の課題に直面していると思いますので、製造業のサポートに積極的に取り組んでいきます。
当社とSoftware AGは共に、競争の激しい分野でグローバルにビジネスを展開している顧客企業が多いという特徴があります。そういった企業の多くがDXを通じてビジネスの効率性を高めることを目指しているので、我々のパートナーシップによって多くの企業のニーズにマッチしたイノベーションを起こせるはずです。しっかりと営業とマーケティングに取り組み、成功例を積み上げていきます。
DXアクセラレート2024、
デジタル活用の勘所

