



エースピッチャーとして、巧打の遊撃手としてチームを支えた二人。和田氏は43歳、鳥谷氏は40歳まで現役を続けたが、競争が厳しいプロ野球の世界で、長く第一線で活躍できた理由はどこにあるのか。二人がまず語ったのは「準備」の重要性だ。
「投手は、99球を思い通りに投げられても、1球のミスで勝敗が決まることがあります。常にもっと自分を高めたい、アップデートしたいという思いで、やり残しがないよう準備していました」と和田氏は振り返る。一方、野手は3割打てば一流とされる世界だ。鳥谷氏は「7割の失敗を受け入れ、自分に何が足りないのかを考え続けることが準備だと思います」と述べた。
準備の前提になるのは、自分を正しく知ることである。例えば守備では「『自分のところに飛んでこい』という気持ちを持て」と言われるが、実際には「勝敗がかかった場面で『飛んでくるな』と感じる自分がいた」と鳥谷氏は明かす。そこで、その弱さを否定せずに受け入れ、普段の練習からあえて「飛んでくるな」と思いながら打球を処理するようにした。試合本番で平常心を保つためだ。こうした自己理解があって初めて、適切な準備が可能になるという。
準備の質と量も重要だ。最近は早い段階から量より質を重視する傾向があるが、必ずしもそれだけが正解ではないという。「量をこなしてこそ、質の重要性が見えてくる」と和田氏。鳥谷氏も「最適な質は人によって、年齢や環境によっても異なります。まずは量を積み重ね、その経験を基に質を高めていくのが理想ではないでしょうか」と賛同した。
さらに、チームの年長世代になると後輩への指導や助言も重要な役目になる。これについては二人とも、「求められたらアドバイスをする」というスタンスで一致した。全員がプロであるという考え方のもと、価値観を押し付けることはしない。まず自分の行動を見せて伝え、必要とされたときに言葉を届けるようにしてきたという。
「そのために、後輩たちの姿勢や変化を日ごろからよく観察して準備していました。そうすることで、求められたときにすぐ的確なアドバイスができます」と鳥谷氏は話す。和田氏は、「選手を観察する習慣は投手としての自分のプレーにも生きました」と語る。相手を見極めることが、慎重を期すべきか、大胆に攻めるべきかを判断する材料になったという。
最後に、野球選手として人として、成長するための勘所を聞かれた和田氏が挙げたのは、「自分の考えを持つ」ことの大切さだ。「人に合わせるのではなく、自分の軸を持ち続ければ道は開けると思います」。
鳥谷氏は、結果ではなく進歩に目を向けることの重要性を強調した。「結果ばかりを気にすると焦りが生まれますし、楽しくない。昨日より今日、自分が進歩している実感を持てれば、結果は自然とついてくるはずです」。
成果が厳しく求められる世界で、二人が大切にしていたのは、結果につながる「準備」と「成長」の積み重ねだった。自分自身を知り、変化に応じて準備を続ける。その姿勢こそが、長く、強く、輝き続けるための核心なのかもしれない。