




NECでは、AIを前提として経営や業務のあり方を変えるAX(AIトランスフォーメーション)を全社で推進している。目指すのは、AIを単なる業務効率化ツールとして活用することではなく、経営や企業活動の中核に組み込んだ「AIネイティブカンパニー」への進化だ。
「当社は現在、AIを徹底的に活用しながら、業務プロセスや人材育成、さらにはビジネスモデルに至るまで一体的に変革する取り組みを進めています」と、NECの中田 俊彦氏は説明する。
同社は2000年代に厳しい時代を経験し、企業変革を推進してきた。2021年にはCEO直下にトランスフォーメーションオフィスを設立し、DXを推進。2022年にはグループ内に分散していたITの企画・開発・運用機能を集約するとともに、データマネジメント体制を整備してきた。さらに2026年にはCAXO(Chief AI Transformation Officer)を新設し、ITや人事(バック・ミドル)、営業(フロント)に至る7つのAI変革領域を定め、各CxOと連携しながら全社横断でAXを推進する体制を構築した。そのうち2つを紹介する。
その1つが、経営マネジメントの変革である(AI経営マネジメント変革)。NECは各CxOの担当領域で約100種類のダッシュボードを整備し、経営層から現場までが同じデータを共有できる環境を構築してきた。さらに、それらの情報を集約する「経営コックピット」も整備した。
その狙いは単なるデータの見える化ではない。従来は部門ごとに異なる指標や資料を基に議論する場面も少なくなかったが、経営コックピットでは全社共通のデータを基盤として今のファクトを押さえ、具体的なアクションから価値へとつなげる。
経営層だけでなく各部門の責任者や現場も同じ情報を共有し、皆が同じ目線で語れるようになることで、組織全体の意思決定を迅速化するとともに、データに基づくマネジメントを浸透させてきた。
「経営コックピットの活用で、現状把握から課題発見、対策立案までをデータに基づいて迅速に進められるようになりました。その結果、粗利率はこの2年間で5.5%向上しています」と中田氏は語る。
現在は、この仕組みにAIも組み込み始めている。経営情報の分析やレポート作成、インサイト抽出などをAIが支援することで、マネジメントの質やスピードをさらに高める考えだ。NECはこうした取り組みを通じて、経験や勘だけに頼らないデータドリブン経営を進化させようとしている。
もう1つが、経営だけでなく、社内IT部門そのものの変革にも取り組んでいることだ(AI IT変革)。開発領域ではAIファクトリー化を軸に、設計からコーディング、テストまでの各工程へAIを組み込み、生産性と品質の向上を図る。米Anthropicとの協業を契機に、Claude Codeなどを活用し、グループのエンジニア3万人への展開を進めている。
「AIを開発プロセスに組み込むことで、生産性向上に加えて、若手を含むエンジニア全体のスキル向上にもつなげています」と中田氏は説明する。
その具体例の1つがSAPモダナイゼーションだ。NECでは、長年にわたり蓄積された約1600本のアドオンが存在していた。プロセスマイニングを活用した分析で658本の未使用プログラムを特定。残る約1000本もSAPのAIサービスなどを活用、クリーンコア化し、2027年中の完了を目指す。運用面では「Human No Ops」をコンセプトに、運用統合コックピットとAIエージェントにより障害・問い合わせ対応を自動化し、運用品質の向上と復旧時間の短縮を目指している。
こうした取り組みを、NECは「クライアントゼロ」と位置付ける。自社を最初の実践者として変革を進め、その過程で得られた成功と失敗の知見を顧客や社会へ還元する考え方だ。「私たちは、自社で得た知見をBluStellarに取り込み、お客様や社会の変革につなげていきます」と中田氏。今後もNECは自ら実践者となり、AXを顧客価値へ転換する取り組みを進めていく。